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  • 2017/09/15
  • ゲッカンタカハシゴー編集部

バイクは、すべてを「わざわざ」に変えるめんどくさい乗り物

文:高橋 剛

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バイクに乗りながら、「なんでバイクに乗るのかなあ」などと考えてしまう時点で、この乗り物は相当めんどくさい。冷蔵庫を開ける時「なんで冷蔵庫を使うのかなあ」なんて、誰も考えないでしょう? でも、このめんどくささ自体がバイクを魅力的な存在にしているのではないか、というめんどくさい話。

 釣り好きの彼は、山奥に別荘──と呼ぶのもはばかられるようなあばら屋──を持っている。そこまでの道は、岩が剥き出しの悪路で、木が覆い茂り、鋭い枝がグギギと自動車の車体をこする。それでも彼は、道を整備しようとはこれっぽっちも思っていない。「すぐ行けるような場所にしたら、わざわざ行く意味がなくなるだろう?」。それが、彼の言い分なのだ。

 ……といった話を、本で読んだ。なるほどなぁ、と僕は思う。例えば観光地。誰もが行きやすく整備されればされるほど、そこは大衆化し、恐らくは潤う一方で、ひとつの見えざる価値を失っていく。「行きづらい場所に、わざわざ行く」という、ちょっとひねくれた価値だ。

 誰もが行く場所。誰もが行きやすい場所。だからこそ行きたくなる、という動機も確実に存在する。行列を見るとつい並びたくなるのと同じ心理だ。しかし世の中、そんなに素直な人たちばかりではない。あまのじゃくな僕などは、間違いなく逆だ。誰も来ない場所、おいそれとは行きづらい場所にこそ、行きたくなる。行列ができている店になど近付いたこともない。

 そんなことを考えながらバイクについて思いを馳せると、自分がなぜこの乗り物に惹かれ続けているのか、ぼんやりと見えてくる。

 バイクは何かと面倒で、危険で、ややこしい乗り物だ。ヘルメットをかぶってプロテクターだらけの鎧みたいなウエアを着込み、ボタンひとつで快適に空調されるクルマと違って天候に思いっ切り翻弄され、自分の腕前に左右されながらわずかな路面の乱れにさえ慌てふためき、常にバランスを取るという緊張感を携えながら前に進む。そうしてどうにか目的地に辿り着き、ヘルメットを脱いだ時、そこは本来以上の「素晴らしき場所」になっている。

 バイクで出かける限り、どんな場所でも「行きづらい場所」になり、「わざわざ行く」という心構えになるのだ。何度も行った土地、何度も見た風景でさえも、飽きることなくまたバイクで出向き、眺めたくなるのは、その場所の見えざる価値をバイクが高めてくれるからだ。

「わざわざ」。広辞苑を引いてみると、「その事だけのために、特に行うさま。特別に。とりたてて」とあった。なるほどなぁ、と再び僕は思う。バイクは、乗ること自体も「わざわざ」だし、行き先も「わざわざ」にしてくれる。「ついで」などはあり得ない、とりたてて特別な存在なのだ。

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