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文:高橋 剛 バイクから得たもの その1「僕たちは、安全のもろさを知っている」

  • 2017/10/16
  • ゲッカンタカハシゴー編集部
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ワタクシのRZにも当然ETCなんざ付いてまシェン(編集カトウ)

ETCが付いていないバイクで高速道路の料金所を使うのが好きだ。面倒といえば面倒である。完全停車させ、通行券とお金を渡し、レシートとお釣りを受け取り、ゴソゴソとポケットにしまわなければならない。でも、いざ出発という時に、たいてい「お気を付けて」と声をかけてもらえるのだ。

 これはETCを装着していないバイクの特権ではないかと思う。後ろにクルマが並んでいない時などは、「この先、雨降ってるみたいだよ」とか「これ何cc?」なんて聞かれることもあって、心にふわっと明かりが灯る。料金所のおじちゃん/おばちゃんにしてみれば、こちらがモゾモゾと仕度をしているうちのヒマつぶしというか、間を埋めるための他愛もない会話かもしれない。でも、ダイレクトに気遣いが感じられる言葉は、すっと気持ちに届く。

 それと同時に、自分が乗っているバイクという乗り物の特性を鋭く突かれているようで、ジャケットの襟を正したくなる。「気を付けなくちゃいけないんだな」と。そう、バイクは気を付けて走らせなくてはならない乗り物なのだ。

 仕事柄、ライディングテクニックの記事を書くことがある。たいていはいわゆる「ライテクの先生」の言葉をまとめていくのだが、とても気を使う。特に公道にまつわるライテク記事を書くのは難しい。それは、どんなに優れたテクニックも、絶対の安全を担保するものではないからだ。

 テクニックが向上すれば、自分が原因の事故を防げる可能性は高まるだろう。だが、100%ではない。ほんのささいな「予期せぬ事態」があっさりと転倒を招くことは、長くバイクに乗っている人なら実感としてうなづけると思う。なおかつ、いくら自分が気を付けていても、他車に巻き込まれる形の事故は防ぎようがない。予測能力という重要なテクニックがあれば防げる可能性が高まるのは確かだが、それもやはり100%ではないのだ。そして、巻き込まれた時に大きなダメージを負うのは、バイクに乗っているこちら側だ。

 タイヤがふたつというバイクの特性上、絶対の安全はない。……というより、正確に言えばあらゆる物事に関して絶対なんてないし、ましてや安全というカテゴリーともなれば、絶対など100%あり得ない(それこそ絶対にあり得ない)。

 という意識を、僕たちバイク乗りは実感として身に付けているはずだ。あらゆる事態は起こり得る。そして100%の安全なんてものはあり得ない。バイクに乗っていると、そのことを無意識のうちに意識している。そして、僕の場合はその「無意識の意識」を日常生活にも応用しているように思う。

「気を付けてね」という料金所のおじちゃん/おばちゃんの言葉の通り、ふだんから無意識のうちにいろいろなことに気を付けている。タンスは倒れるかもしれない。橋は落ちるかもしれない。食事でアタるかもしれない。交通教本に書かれている「かもしれない」の重要性は、日常にも十分に当てはまる。

 すべてに入念に備えているかどうかは別の話だが、少なくとも「ヤバイ要素」をパパッと見つけるクセがある。とかく不器用でさまざまな能力が低い僕がどうにか今まで生き延びてこられたのは、そのおかげだとしか思えない。

 別にバイク乗りではなくても得られる常識的な知恵のようなものだが、「絶対の安全はない」乗り物であるバイクに乗っていると、「絶対の安全はない」という意識が体のすみずみまで染み込んでいるように感じるのだ。そういえば高校時代、「オレは電車の先頭車両には絶対乗らない。衝突事故があったら先頭車両が1番ヤバイからね」と言って完全に変人扱いされていた友人は、バイク乗りだった。

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