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  • 2017/10/17
  • MotorFan編集部

【初試乗】新たなる”プレミアム”グランツーリズモ「VWアルテオン」

フォルクスワーゲンが新境地を開拓する、5ドアクーペに初試乗!

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Volkswagen Arteon
コンパクトカーからミディアムサルーンまで幅広いラインアップを見せるフォルクスワーゲンが次なる一手としてリリースするのは、パサートよりもさらに上に位置づけされるプレミアム・グランツーリズモの「アルテオン」。2017年春の発表時から期待されていたこの5ドアクーペに、ジャーナリストの大谷達也が試乗した。

REPORT◎大谷達也(Tatsuya OTANI)

アルテオンのベースは”パサート”。

今年のジュネーブショーで発表されたアルテオンはフォルクスワーゲンの新たなフラッグシップモデルだ。5ドアクーペのスタイリングは緻密で、一分の隙もないプロポーションを描き出している。

そのベースとなったのが4ドアセダンのパサートであることはご想像のとおり。ただし、デザインを細かく見ていくと、細部に至るまで大胆にモディファイされていることに気づく。たとえばフロントグリルは、水平に伸びる2本の直線で挟まれた部分だけにすっきりとまとめられたパサートに対し、アルテオンには明快な境界線がなく、チンスポイラーに続く低い部分までグリルが伸びている。ボンネットにしてもフェンダーとの境目が上面に現れているパサートと異なり、アルテオンではいわゆるクラムシェル風にフェンダーとの境界線がボディ側面に回り込んでいる。ボンネット自体の高さがアルテオンのほうが低く見えるのは、アクシデント時に歩行者を保護するアクティブボンネットを採用していることと関係があるのかもしれない。

芸術的で流れるようなウインドウ・グラフィックス。

ボディサイドを見比べれば、その差はさらに際立つ。独立したトランクルームが与えられて伝統的な3ボックススタイルを映し出すパサートに対して、アルテオンには芸術的で流れるようなウインドウ・グラフィックスが与えられており、その消失点をボディサイドに流れるショルダーラインの終端と完璧に調和させることで、自然で無駄のないリヤエンドを生み出している。一般的にいって5ドアクーペのリヤエンドは造形がひどく難しく、三面図的な位置関係から眺めれば美しく見えても、少し立ち位置をずらすとたちまちデザインが破綻するモデルが少なくないが、アルテオンはどの角度から見ても立体的なバランスが崩れない。デザイン上の完成度でこれに匹敵するのは、ドイツ・プレミアムブランドではアウディA5スポーツバックとA7スポーツバックくらいのものだろう。

ハードウェア面でもアルテオンとパサートは極めて近い関係にあり、どちらもMQBを採用。ということは、すなわちエンジンは横置きで、ここがサイズ的にもキャラクター的にもよく似たアウディA5スポーツバックとの決定的な違いとなっている(MLBエボを採用するA5のエンジンは縦置き)。日本仕様のエンジンは最高出力280psの2.0TSI一本で、ギアボックスは7速DSG、駆動系はフルタイム4WDの4モーションとなる。グレードはもっともスポーティなRラインのみ。本国ではより幅広いエンジンバリエーションが揃うほか、FWDモデルも用意されるが、パサートとの差別化を図るという意味でこれは適切な判断かもしれない。

200km/hオーバーの巡航も余裕でこなす!

今回はポロの国際試乗会が開催されたドイツ・ハンブルグを起点として、まずはeゴルフの生産工場があるドレスデンを訪問。ここからさらにフランクフルトを目指す1000kmほどをアウトバーン中心に走行した。

その印象は、こちらも皆さんが想像されるとおり、いい意味でパサートとよく似たものだった。ハンドリングは強いスタビリティ感に支えられたもので、どれほど速度を上げても不安を覚えることなく、矢のように突き進んでいく。アウトバーンの速度無制限区間では200km/hオーバーも体験したし、日本のゲリラ豪雨を思わせるような強い雨にも遭遇した。それでも不安定な動きを見せたり、「少しアクセルを緩めようか?」とドライバーに思わせるようなことは皆無。4モーションの威力もあって、グランドツーリスモと呼ぶのにまさに相応しい直進安定性を示してくれた。

エンジンパワーも申し分がない。前述のとおり、200km/hオーバーの巡航も余裕でこなすし、そこに至るまでの加速感も迫力満点で、「これで本当に2.0ℓ?」と何度も不思議に思ったほど。しかも「フルスロットルだったら速い」とか「高回転域はパワフル」といった具合に特定の領域が得意なだけでなく、どこから踏んでもレスポンスよく、そしてフレキシブルにパワーを生み出す点は圧巻というしかなかった。

2日間、1000kmを共にして思ったこと。

乗り心地はフラット感の強い、これまたいかにもフォルクスワーゲンらしいもの。おかげで長距離ドライブに伴う疲労感はごくわずかだったが、試乗車がRラインだったこともあり、ロードノイズは大きめで、タイヤがややばたつく傾向がなきにしもあらず。静粛性や快適性だけに的を絞るなら、もう少しタイヤ・サイズを落としたほうが有利なはずだ。

室内スペースも十分以上に広い。とりわけ後席では膝まわりに拳3つ分、頭上には拳半分ほどのスペースが残されていたが、これはいずれもパサートと同等か、それをやや凌ぐもの(身長172cmの筆者が前後に腰掛けた場合)。全高はパサートよりもいくぶん低いが、パサートより後席のシートバックを微妙に寝かせたシートレイアウトによって実現されたものだろう。

2日間、1000kmをともに過ごして、やや物足りないと思ったのは前述の乗り心地/静粛性と、真面目一辺倒なインテリアに遊び心が感じられなかったことくらい。もっとも、私にはいずれも決定的な欠点とは映らなかった。

日本市場で成功するには……。

では、アルテオンは日本でも人気を博すだろうか? 私は、この点に軽い不安を覚えなくもない。そもそもDセグメントの5ドアクーペというマーケット自体が日本ではあまり大きくない。そこにアウディA5スポーツバック、BMW3シリーズGT、BMW4シリーズ・グランクーペといったライバルたちがすでに覇を競いあっている。デザインの完成度、そして実用性と価格のバランス(日本仕様のアルテオンは550万円程度の見通し)を考えればアルテオンにも勝機はあるが、それでも心配なのがフォルクスワーゲンというブランド性だ。コンパクトな実用車では圧倒的なブランド力を誇る同社だが、ラグジュアリーなスポーツクーペとなると話は違ってくる。まして相手がアウディやBMWとなれば、フォルクスワーゲンが優位に立つのは容易ではないだろう。

それでは、どうすればいいのか? やや奇策ながら、このセグメントにおけるフォルクスワーゲンの匿名性を逆手に使ってはどうか? ひと目見ただけではどのブランドかわからないかもしれないが、デザインは美しく、使い勝手はバツグンに優れていて、パフォーマンスにも文句はない。そんな、普通であれば目利きにしかわからないクルマの価値をうまくアピールできれば、アルテオンが日本市場で一定の評価を得ることも十分に可能だと思う。

パサートと同様のコクピット。センターの9.2インチモニターは、手の動きで反応するジェスチャーコントロールを採用。もちろん、ACCやレーンキープアシスト、渋滞時追従支援システムなど先進の予防安全技術も装備する。
フルデジタル・インストルメントシステムを採用。オプションでヘッドアップディスプレイも用意する。
昨今のフォルクワーゲン車同様、ナビゲーション画面を選択することも可能だ。

あらゆる体型にフィットするフロントシート。日本仕様はオールレザーが標準。シートトリムにはナパレザーを採用する。
クーペスタイルながらもヘッドクリアランスとレッグスペースに余裕があるリヤシート周り。

通常時は563ℓ、リヤシートを可倒させれば1557ℓを誇るラゲッジスペース。
日本に導入されるのは、280psを発揮する直列4気筒ターボエンジンのみ。これに7速DSGを組み合わせ4WDで駆動する。

【SPECIFICATIONS】
フォルクスワーゲン・アルテオン R-Line 4MOTION〈R-Line 4MOTION Advante〉
■ボディサイズ:全長4865×全幅1875×全高1435㎜ ホイールベース:2835㎜ ■車両重量:1700㎏ ■エンジン:直列4気筒DOHCターボ 総排気量:1984cc 最高出力:206kW(280ps)/5600-6500rpm 最大トルク:350Nm/1700〜5600rpm ■トランスミッション:7速DCT ■駆動方式:AWD ■サスペンション形式:Fマクファーソンストラット R4リンク ■タイヤサイズ:F&R245/40R1〈245/35R20〉 ■環境性能(JC08) CO2排出量:159g/km ■車両本体価格:549万9000円〈599万円〉

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