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トヨタは、電動化に向けた意欲を表に出すようになった。12月12日には、水素ステーションの本格整備を目的とした新会社を2018年春に設立することを11社と合意したことを発表。翌13日には、パナソニックと車載角形電池事業の協業について検討を開始すると発表したばかりだ。
「日本の自動車メーカーは電動化で世界に後れをとっている」というような論調の報道に対して、トヨタとして、きちんと主張していこうという意志も見える。
今日、行われた発表会でも、2020〜2030年までの電動化に向けたチャレンジを数字を挙げながら具体的に説明した。
以下は、トヨタのプレスリリース。
寺師茂樹副社長は説明会の冒頭、「12月13日の記者会見(パナソニックと車載用角形電池事業の協業検討開始で合意)で、社長の豊田(章男氏)から、2030年に向けて電動車を550万台販売するという目標が発信されたかと思います。本当ならばこの場で、ZEV(ゼロエミッションビークル。EVやFCVを指す)が100万台、HV・PHVが450万台、と私が言う予定になっていたのですが、豊田が13日のQ&Aで言ってしまいましたので、今日はその目標に向けたチャレンジについて説明させていただきたいと思います」と切り出して報道陣の笑いを誘い、場を和ませたのち、「トヨタの電動車普及に向けたチャレンジ」と題したプレゼンテーションを開始した。
「トヨタの電動車普及に向けたチャレンジ」と題したプレゼンテーションを行うトヨタ自動車の寺師茂樹副社長
そして寺師副社長は、「先日の豊田の話の中に、ZEV規制(販売台数の一定比率をZEVとする規制)の話とCAFE(企業別平均燃費規制)の話が出てきたと思います」と述べ、今回のチャレンジが両規制に端を発していることを示唆。
「このうちZEVの新車販売台数は年間100万台に満たず、それに対し内燃機関を持つクルマは約9千万台。こちらにはCAFEが存在する。我々はこの両方に対処していく」としながら、「ZEVがCAFEをカバーできるようになるにはもう少し時間がかかる」という見解を示し、「HVはZEVから除外されたもののCAFEには有効」と、HV・PHVの普及拡大にも注力する背景を説明している。
また、CO2排出量を削減し両規制をクリアするには電動化が必須であるものの、「それが何かを決めるのはお客様と市場であり、メーカーではない。電動車の選択肢は一つではない」と述べ、FCVまたはEVのみに固執しないというスタンスを強調した。
その後、電動化が進んでいる国として、ノルウェーと日本を例示。ノルウェーは豊かな水力発電インフラを背景に、EVが圧倒的に有利な税制や交通インフラを敷くことで、年間新車販売台数の47%を電動車が、かつ全体の20%をEVが占めているという。
日本は電動車が30%を占める、ノルウェーに次ぐ電動車大国だが、これはノルウェーとは対照的にエネルギー自給率が6%と極めて低く、「多様なエネルギー源が必要」(寺師副社長)なことが背景にあるとし、「HVに加えて今後はFCVなどの普及も推進していきたい」と、ミライ発売の意義を再確認している。
そのうえで、「我々が量産車メーカーとして今後も持続的にお客様のニーズに即した商品を提供するために、電動車の品揃えを充実させることは必要十分条件」であり、「電動車の普及にはそれらを支える技術や社会基盤を含めた全方位の取り組みが必要」という方針を決定。2020年にEVを本格展開、2025年にエンジン車のみの車種を廃止、2030年に新車販売の50%以上を電動車・10%以上をZEVとするなど、車両電動化に向けたマイルストーン(中間目標)を設定している。
これに伴い、小型車・短距離はEV、大型車・長距離はFCV、その中間はHV・PHVとした従来の棲み分けが変化し、いずれの電動車も多様化が進むことを示唆。特にFCVについては、「レクサスやSUV、商用車にも設定していく」方針を明らかにしている。
また、初代プリウスの発売以降20年で電動車を90以上の国・地域で1100万台以上販売し、約4500人の開発人員を割き、年間約150万台を販売するに至った実績が、膨大なノウハウを蓄積し、品質・耐久性・信頼性を高めてきたことの証明であり、「多様な電動車を世界中に供給する基盤になる」と強調した。
しかしながら、現時点で150万台の年間電動車販売台数を、12年で550万台まで伸ばすには、大容量のバッテリーを安定して供給できる体制の構築が必須となる。
その例として、現行プリウスのバッテリー容量が0.75kWh、新型日産リーフが40kWhと50倍もの開きがあることを説明。単純に販売台数が約4倍になるのに加え、ZEVの比率拡大に伴い1台あたりに必要となるバッテリー容量も飛躍的に増大し、さらにプリウスと同等の航続距離をEVで確保しようとすれば現状のさらに約3倍のバッテリー容量が必要となることから、トヨタ単独ではなくパナソニックとの協業によるバッテリーの開発・生産に踏み切ったという。
なお、それに伴い、バッテリーのリユース・リサイクルも規模や用途を拡大し、電気と水素を活用したエネルギー社会の構築に向けた取り組みを強化する方針も示している。
これらのチャレンジに向けてトヨタは、1.5兆円規模の投資を行うとともに、全固体電池を2020年代に実用化。「2016年には世界で323万台の電動車が販売されたが、トヨタはそのうち140万台を販売し、シェアは43%、約2台に1台が、世界に先駆けて電動車を販売したトヨタのクルマとなっている。私たちは常にチャレンジャー。お客様と世界の市場にマッチした電動車を提供し続ける、電動車のマーケットリーダーでありたい」と、今後の意気込みを述べている。
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