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  • 2018/01/03
  • MotorFan編集部

フィアット・パンダで本格ダート林道を走ってみる【中津川林道へ(酷道険道:埼玉県)】フィアット・パンダ4×4

連載コラム「酷道を奔り、険道を往く」Vol.3

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ハチのような、ハエのような……

今回の行程では、メインステージとなるダート区間を中心として約40kmは飲食店がなく、さらに弁当を売っているような商店は約70kmに渡って存在しない。そのため、事前にコンビニ弁当を購入しておいた。本来は多少なりとも名物らしいものにしたかったのだが、本文にもあるとおり諸事情で叶わず......。

 切り通しのトンネル、欄干の低い石造りの橋、ごろごろと転がっている大小の岩々......、中津川林道の開通は1960年代と意外とその歴史は浅いが、どこか古道を思わせる雰囲気が漂う。

 撮影のためにパンダを停めて車外に出ると、ハチのようでハエのような、見たこともない大きな昆虫が群がってくる。聞こえてくるのは虫や鳥の鳴き声だけ。そしてなによりほかのクルマに出会わない。

 日本に酷道険道は数あれど、この独特の秘境感はやはり「未舗装であること」によるところが大きいのだろう。聞けばこの中津川林道についても舗装化や県道への昇格を望む声が挙がっているというが、なんとかこの手つかずの自然と未舗装路ならではの情緒を残して欲しい気もする。部外者の身勝手かもしれないが。

 そんな中津川林道だが、実際のところ未舗装路としては比較的フラットな路面が続くため、オフロード愛好家の中では初心者向けと位置付けされている。だからとくに4WDでなければ越えられないような難所はない。もちろん、ときおり路面が大きくえぐられていたりするから、4WDであることによって得られる安心感は小さくない。

 一方で大きなロードクリアランスはかなりのアドバンテージになる。パンダ4×4のFFモデルに対する65mmの全高のエクストラは、そのままロードクリアランスの引き上げに充てられており、当然ながらアプローチ&デパーチャーアングルも大きく採られている。本格的クロカン四駆でなくても、余裕のあるロードクリアランスがあるだけでこうした林道はずいぶんと走りやすくなるものだ。

 それにしても、三国峠までの18kmの長いこと長いこと。パンダ4×4の履いているタイヤはヘビーデューティなオフロード用ではなく、オンロード用のコンチエココンタクトである。前述のようにパンクが最大の懸案事項だから、15km/h以下の牛歩戦術が基本だ。

 さらにちょっと走っては停まって撮影、また走っては停まって撮影、さらにはUターンして撮影、を繰り返していたため、とにかく前に進まない。

 眺めのいい三国峠での昼食を考えていたのだが、Mカメラマンの「腹が減りすぎて耐えられないんですけれど」の声に予定を変更し、眺めもへったくれもない、ちょっと路肩が広がったくらいの場所にパンダを停めてコンビニ弁当をカッ込んだ。こういうサバイバルな状況下では、なんの変哲もないコンビニ弁当でも涙が出るほど旨い。

酷道険道のドライブとは、まるでタイムトラベルである

 そんなこんなで未舗装路に足を踏み入れてから約4時間、ようやく中津川林道の終点である三国峠に到着した。昼食をとった場所から10分くらいで着くと思っていたのだが、すでに1時間も経ってしまっている。食べられるときに食べる、は酷道険道ドライブの鉄則かもしれない。

 ここまで、すれ違った車両はスズキ・ジムニー、ヤマハ・セロー、日産マーチの3台だけで、撮影中に追い抜かれた三菱パジェロを加え、遭遇したのは4台だけである。マーチ以外はどれもタフなオフローダーである。

 埼玉県と長野県の県境に位置する三国峠は、群馬県を加えた三本の県境が交わる三国山にほど近く、一般的には三つの国にまたがる峠として認識されている。標高は1740mで、長野県側に大きく眺望が広がっている。峠を境に長野県側は舗装されていて、ここからは梓山林道と名前を変える。

 この梓山林道もなかなかタイトでツイスティで、けっこうな酷道険道なのだが、中津川林道と比べたらまるで古代と現代である。

 Vol.1でも同じようなことを書いたが、酷道険道のドライブとは、まるでタイムトラベルのようなものだ。人里が見えてきたり、幹線道路で久々に対向車とすれ違ったときの安堵感は、タイムマシンで古代から現代に戻れたときの感覚に近い。タイムマシンに乗ったことはないが......。

埼玉県、長野県、そして群馬県の県境に位置する三国峠(実際には群馬県との県境は僅かに北にある)。ここから埼玉県側は未舗装路、長野県側は少々荒れてはいるが舗装路となっている。峠からは長野県側に眺望が開けている。

 梓山林道をしばらく西に向かうと、やがて川上村に辿り着く。感覚的には、ここが酷道険道ドライブのゴールである。

 川上村から廻り目平キャンプ場に向けて南下すると、さらに山梨県に通じる未舗装路があるのだが、こちらは中津川林道よりも路面が荒れていて難易度は少々高い。とりあえず今回は遠慮することにして、八ヶ岳方面にまわって中央道の長坂ICを目指した。

 都市部に住む人間にとっては不安を伴う未舗装路ドライブだが、しっかり運転に向き合い、無理をしなければこんなに楽しいアドベンチャーもない。

 そしてパンダ4×4が、こんなにも頼もしい存在だったことを知ったのは収穫だ。悪路を4時間もゆっさゆっさと揺られ続けたのに、首も背中も腰もまったく痛くない。Mカメラマンの「なんだかシートがルノーっぽいですね」は褒め言葉だろう。腰痛持ちで、シートが気に食わないという理由だけで某国産の新車からプジョーの中古車に乗り換えてしまった彼の言葉には説得力がある。

 ボディの見切りの良さやドライバビリティの高さも、こうした過酷な状況下では安心感に大きく寄与する。さらにアイドリングストップのオン・オフやエコモードの設定がエンジンを切っても維持されたり、光軸調整のスイッチが操作しやすいダッシュボード中央にあったり、Aセグメントには珍しく前席シートベルトに高さ調整機構が付いていたりと、どこを見てもいちいちパンダは真面目だ。

 国道141号に出れば、酷道険道ムードもすっかり陰を潜め、もはや夏休みの楽しいドライブだ。野辺山の牧場で観光客に混じってソフトクリームを頬張り、ようやく名物にありつけた満足感を得る。

 とはいえ、帰りの中央道までもが夏休みのドライブらしさに溢れ、渋滞が超弩級だったのには閉口するばかりであった。

<奥秩父山塊を貫く屈指のダートコース > 東京都、山梨県、埼玉県、長野県、群馬県の一都四県にまたがる奥秩父山塊の真ん中を貫く林道とあって、中津川林道はオフロード愛好家の間ではかなり知られた存在だ。今回は関越道の花園ICから秩父に向かい、埼玉県側からアプローチした。三国峠を越えて梓山林道に入り、八ヶ岳方面をまわって中央道の長坂ICから東京に戻った。(※当記事の取材は2016年8月下旬に行ったが、直後の8月22日の大雨の影響により土砂崩れが発生し、現在まで通行止めが続いている)
「非スポーツモデル」として稀少な存在となる6速MT。ゲート感が明確で、シフトフィールはなかなか好ましい。4輪をロックさせることで悪路走破性を高める「ELD」の作動スイッチをシフトレバー前方に配する。
延々と悪路を走り続けても疲労や痛みを覚えなかったのは、このすばらしいシートのおかげに尽きるだろう。Aセグメントでは出色のクオリティと言っていい。前席シートベルトに高さ調整機構が備わっている点にも注目。

【フィアット・パンダ 4×4】
▶全長×全幅×全高:3685×1670×1615mm
▶ホイールベース:2300mm ▶車両重量:1130kg
▶エンジン形式:直列2気筒DOHCターボチャージャー
▶総排気量:875cc ▶ボア×ストローク:80.5×86.0mm
▶圧縮比:10.0 ▶最高出力:63kW(85ps)/5500rpm
▶最大トルク:145Nm/1900rpm ▶トランスミッション:6速MT
▶サスペンション形式:(F)マクファーソンストラット(R)トーションビーム
▶ブレーキ:(F)ベンチレーテッドディスク(R)ディスク タイヤサイズ:175/65R15

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