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  • 2018/01/02
  • GENROQ編集部

【新春特別企画】レーシング ポルシェの世界 ①「911 RSR」初試乗!《動画あり》

レーシングドライバー田中哲也が”究極のナイン-イレブン”の実情を報告する

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PORSCHE 911 RSR
ポルシェほど市販車とレーシングカーの立ち位置が近いメーカーは他に類を見ない。新春特別企画、その前編として今回はWEC用に開発された911 RSRをレポートしよう。レーシングドライバー田中哲也がドイツのユーロスピードウエイ ラウジッツより報告する。

REPORT◎田中哲也(Tetsuya Tanaka) PHOTO◎PORSCHE AG

速い! だが同時に恐ろしく快適。これこそレーシングカーの本懐だ。

【オンボード映像】911 RSR ☓ 田中哲也

911 RSRのタイトなコクピットに収まる田中哲也氏。

現在のル・マン24時間レースにおけるLM-GTEクラスは非常にハイレベルである。フェラーリ、アストンマーティン、フォード、シボレーなどのメーカーが威信をかけてコンペティションを繰り広げているからだ。ポルシェはいつの時代もその中心的存在として数々の栄光を勝ち取ってきた。そのポルシェが2017年、新しい「911RSR」を投入した。しかも定番のリヤエンジンレイアウトを捨てて、ミッドシップとしたマシンである。今回ドイツのユーロスピードウェイ・ラウジッツで現役のワークスマシンである911RSRをテストする機会に恵まれたので、現役最高レベルのGTマシンがどのようなものかレポートしたい。

まずはWEC(世界耐久選手権)をRSRで戦っているワークスドライバーからコクピットドリルを受ける。メインやイグニション、そしてスタータースイッチの位置は、これまで何度も乗ってきたカップカーとほぼ同じ。こういう部分にポルシェのアイデンティティを感じる。しかし明らかに違うのがステアリングにあるスイッチの数だ。今回はほとんど使わなかったがまるでF1のように多い。

それ以外にもさすがポルシェと唸らされるものが沢山ある。たとえばフロントウインドウが曇らないように熱線が入っていたり、運転席前方のダッシュボードの上の左右2箇所にブレーキロックとトラクションコントロールの介入をドライバーに知らせるシステムがついていて、たとえば右フロントがロックしていたら右側の上のライトが紫に、リヤがロックしていたら黄色、トラコンが介入していれば青色に光る。インジケータの位置も自然で違和感がまったくない。ドライバーにとってはマシンの状況が分かりやすく、疲労を軽減して快適にドライビングに集中できるようになっている。

次にシート合わせを行う。最近多いシートが固定されて、ペダルが前後するタイプだ。安全面はもちろん重量バランスを重視しているのだろう。シートポジションは最新のカップカー、GT3Rと大きな違いはないが、より低いポジションで車体の中央寄りに座っているように感じた。そして素晴らしいと感心したのが後方視界で、バックモニターには速度が速いLMP1などとの接触防止を警告するシステムを搭載しているそうだ(残念ながら今回確認することはできなかったが)。

いよいよコースイン。まずは2ラップしてマシンとドライバーを慣らしていく。一旦ピットに戻って、ポジションを少しアジャストしてからいよいよ全開走行を開始した。

ラウジッツはオーバルとインフィールドをつなげたコースである。オーバル部分では高速コーナリングやストレートスピードを、そしてインフィールドでブレーキングや低速コーナリングを試すことができるサーキットレイアウトとなっている。クラッシュの危険性が少なく、最初から思い切り走ることができる。今回与えられた計測3ラップでもかなり攻められた。その中で様々なことを感じたので具体的に記していこう。

まずはエンジン単体の性能からパワー、トルク、レスポンスすべてにおいて軽いというか透き通ったような印象を受ける。とにかくスムーズでストレスやフリクションがまったくなくスロットルワークに対してとても素直に反応してくれる。エンジンサウンドに関しては、2016年までの物凄い大音量の甲高いリヤエンジン式のRSRと較べ、音量はともかく、これまでのポルシェサウンドとはかなり違う。それでもレーシーな印象は変わらない。

マシンのグリップレベルは非常に高く、路面に吸いついたような印象を受ける。何よりフロントがダブルウイッシュボーンになったことで、フロントの接地感やグリップ、そしてダンピングが大きくレベルアップしてステアリングに伝わってくる。その際インフォメーションが素晴らしく、思い通りのラインをトレースすることが容易だ。フロントサスペンションが変わったことによる効果は絶大だと感じた。

では、フロントグリップが高く、アンダーステアが少なくなったことに対して、リヤはどうなったかというと、トラクションのレベルはRRモデルのレベルを十分に確保しながらリヤのスタビリティが高まり、マイルドに動くことでコントロールしやすくなった。つまり、曲がりやすく、グリップも高いのだ。リヤ寄りの重心がミッドに移ることで、前後バランスが見直され、リヤの慣性が小さくなったことで動きが軽快になっている。これこそミッドシップのRSRの真骨頂である。

それにしても、このマシンに乗ってもっとも感心したことは、跳ねが物凄く少ないことだ。後述するカップカーやGT3Rでは気になった路面の荒れているところが、RSRではスムーズにクリアできる。これはサスペンションのスムーズな動きはもちろん、それ以外にダウンフォースが増大した効果である。ミッドにエンジンを搭載したことで、リヤディフューザーを大きくできたためにダウンフォースは明らかに高まった。2016年までのリヤエンジン式RSRよりも路面に吸いついて走るような印象だ。特に高速コーナーでのパフォーマンスは恐ろしく高く、まるでフォーミュラマシンに乗っているような錯覚を覚えるほどだった。

そして、その影響はブレーキングにも表れている。ABSを装着していないにも関わらず、ブレーキングのストッピングパワーや安定感のレベルが高く、ABS装着のGT3Rと比較しても勝っていると感じた。ちなみにブレーキ踏力はGT3Rと比較すると小さく、軽い力で強力なブレーキが可能になっている。

今回、最新の911RSRに試乗して一番大きな印象は、このマシンは驚くほどドライバーに優しいマシンであるということ。よく曲がり、良く止まり、クーリングシステムも快適で、ステアリングやブレーキの操作時も体力を必要としない。しかも必要な様々なインフォメーションをわかりやすく提供してくれ、結果としてドライバーにとっては快適なマシンなのだ。私は今までにこれほど完成された、快適なマシンに乗ったことはない。今回リヤエンジンの911がミッドシップになることによるポテンシャル面のメリットを体感することができた。911RSRは未来につながる、大きな可能性を秘めた新時代の911なのかもしれない。

ステアリングに多数のスイッチが装備される。ステアリング上部にはレブカウンター代わりのランプがあり、その左右には4輪のタイヤロックなどを知らせるランプも備わる。
ドアミラーはDTMマシンにも採用されている空力に優れたL字型ステー。ル・マンでは他にも488GTEが採用していた。

リヤエンジンレイアウトではなくミッドシップとすることで、大型のリヤディフューザーを得た。空力面で大きな武器になるのは言うまでもない。
大型のリヤスポイラーの支持部はスワンネック型サポートとなった。前後位置、角度が調整可能だ。

【SPECIFICATIONS】
ポルシェ911 RSR
■ボディサイズ:全長4557×全幅2048mm ホイールベース:2516mm ■乾燥重量:1243kg ■エンジン:水平対向6気筒DOHC 総排気量:4000cc 最高出力:375kW(510ps) ■トランスミッション:6速シーケンシャルMT ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:F&Rダブルウイッシュボーン ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F300/68-18(12.5J)R310/71-18(13J)

PORSCHE 911 RSR

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