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著者の島下泰久氏と、編集担当の久保田氏に訊く、2018年版の想いと狙い。 【インタビュー】2018年版『間違いだらけのクルマ選び』の裏話

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『間違いだらけのクルマ選び』著者の島下泰久氏

百年に一度と言われる”大変革期”を迎えた自動車業界。その真っ只中に『間違いだらけのクルマ選び』を執筆したモータージャーナリストの島下泰久氏は、何を思い、何を伝えようとしているのか? 担当編集者の久保田 創氏とともに、2018年版に込められた、想いと狙いを訊いてみた。

PHOTO◎市 健治(Kenji ICHI)

誤った報道を正すことも念頭に置いた。

————2018年版『間違いだらけのクルマ選び』を執筆するにあたって、メインテーマは何を基準に決めているんでしょうか?

島下氏 今ちょっとしたブームになっている電動化・自動化は絶対に書きたいと思い決めました。新聞はもちろん、テレビのニュースにもなりますし、いわゆる経済誌やウェブなどでも取り上げられています。それこそ一冊まるごと電動化・自動化の特集を組む雑誌など、様々なことが書かれています。しかし、自動車を取材してきた身としては“ちょっと違うな……”と思うことが多々あって。特に2017年で印象的だったのは、あるメーカーが20XX年までに全モデル電動化を実現させるなど、大きな話題になりました。だけど、間違った情報が多い。だから、これは真実を書かないといけないと。

————何故そのような自体が起こったんだと思われますか?

島下氏 今まで自動車をメインに取材してきた人ではないからでしょう。いわゆるITライターやITジャーナリスト。彼らが言うのは「これからは、クルマはドライバーが運転するものではなく、コネクティビティがすることだ」とか、先走った話ばかり。極めつけは東京モーターショーの時。「自動運転もEVもない日本はもう駄目だ、テスラ万歳!」的なことまで言う始末。だから、「いやいや、そうじゃない!」と、これまで取材してきた正しい情報を出す必要があると思ったんです。もちろん、本書はバイヤーズガイドでもありますが、クルマ好きのための正しい知識は当然として、クルマがそれほど好きじゃなくても最近のムーブメントに対しニュースとして認識している人たちが興味をもってくれて、「そうなんだ、違うんだ……」のような、ニュースを見る視点を変えてほしいと思い書きました。2018年に向けた、クルマの正しい情報と知識、経済誌とは違う見方で、クルマと、それを取り巻く環境を伝えたいと。

————それを空冷ポルシェに乗りながら考える?(笑)

島下氏 そう。EVに乗ってもストレス解消になりませんから(笑)。でも重要なんです。なぜなら、ポルシェのように“本当に自分が欲しい”と思うEVってなんだろうか?と真剣に考えますから。これからEV車は増えてきます。メーカーも戦略としてもありますし。しかし、売るのはいいとしても、自分が所有することをまだ想像できないというか、まだ実感としては薄い。多くのクルマ好きも自分のリアルとして考えられないと思います。だからリアルになるにはどんな諸条件が必要なのか、クルマ自体の魅力もそうですし。

————まだまだ、プロダクトとして魅力に欠けるということですね。

島下:そうです。しかし、楽しい未来が待っているのも事実です。例えば、子供が3人いる家族の場合、ミニバンを迷わず選ぶことになります。しかし、お父さんは大のクルマ好き。ミニバンなんて買いたくなかったというのが本音だとします。そういった家族なら、カーシェアリングを利用すればいいんです。近い将来、カーシェアリングのほとんどはEVカーに置き換えられるでしょう。しかもカーシェアリングの需要はさらに広がります。そうなると、お父さんは、好きなクルマを所有することが可能になりますから。必要で乗るクルマはみんなでシェアするようになれば、クルマ好きにとってハッピーな時代になります。そういう視点がないとつまらないですよ。そう思って書きたかったんですが、入れる場所がもう残されていませんでしたけど(笑)。

書きたいことは山積み! ベスト3の選択と特集への思い。

————書きたいこと、書けることが山積みのようですね。

島下氏 巻頭の特集は、まさにそうです。車種ごとに書いていますが、1車種で1冊まるごとうまってしまいそうな勢いでした。基本的には“楽しく読んでほしい”ですから、溢れてくる情報を交通整理して、どう読みやすくするか、相当、頭を使いましたね(笑)。単なる勉強になってもしょうがないですし。分かりやすく、読みやすくしたかったですから。

————2018年版を書き終えた今、何か思うことはありますか?

島下氏 毎年、定点観測しながら積み重ねて書き続けていって、時に過去の本書を読み返すことがあります。そうすると、予想が外れていたりもします。でも、まぁ、それもいいじゃないかと(笑)。けっして1年1回のバイヤーズガイドだけを書いているわけではありませんから。“あの時こうだったから、今はこうなんだ……”って何年後かに読んで頂いた時に気づいてくれたりするとありがたいですね。

————ところで、2018年版のベスト3は、すぐに決められましたか?

島下氏 悩みましたね。それこそ毎日、変わるくらい。でも、実は1位のホンダ・シビックに関しては、乗った時から“これだな!”と思いました。その代わり、2位と3位は難しかった。だから、本当はベスト5、いやベスト10まであったらいいなと思うことも。他にも入れてあげたくなるクルマはありますね。

————ベスト3に関しては、クラスとかカテゴリーとか関係なく決めているんですか?

島下氏 はい。基準は、とにかくそのクルマでしか味わえない何かがあるクルマを、なんであれ選びます。もちろん自分の評価基準としても。存在として、面白い、楽しい、興味深いなど、様々。他にないなと思ったら候補として並んできます。

————シビックを1位にした理由をもう少し。

島下氏 自分でも意外だったんです(笑)。正直言って、まったく期待していなかった。でも乗ってみたら、もっとも変化の幅が大きかった。出た時は、シビックらしくないと思いましたが、乗ってみたら「そうか、今の人のマインドには合っているのかなぁ」と気づいたんです。ちょっとギラギラしているところはありますが、昔のクラスレス的な感じは受け継いでいるようで、隣に高級車が並んでも、ぜんぜん気にならない。そういう点では昔のシビックと同じだと思いました。それにアメリカで見た時、素直に“かっこいいな”とも。それで乗ってみたら好印象、自分で買って乗ってもいいかと思えたくらいです。

————輸入車で2位のシトロエンC3は?

島下氏 これもシビックと同じですね。最初は“なんじゃこれ!”って思いました。フルモデルチェンジしたのに、街中で乗っていると、なんだかさえない。安っぽいし、6速ATもちょっとギクシャクして。しかし、これが速度を上げていくと印象が変わってきて、素直に“いいなぁ”と。オールマイティに良いとは言えませんが、ちょっとゴー&ストップが苦手というか。最近、街でよく見かけますね。たぶん、乗らないで買っているオーナーがほとんどのような気がしますが、「正解です!」と言ってあげたくなります。

————続いて、第三特集の「レクサスLSは、世界と戦えるか」というのは、どのような視点で書こうと思いましたか?

島下氏 これは乗る前から特集にしようと決めていました。LSは、先に安全装備だけ試せたこともあって。メルセデスやアウディと比較しようと。その後、LSを乗ってみて確信しました。“いい線いってる”と。特に自動運転に関しては、これなら世界と戦えるレベルにあると思いました。それを正しく伝えたいと。新型アウディA8は、レベル3を実現しているとはいえ、日本に導入されるのはまだ先ですし、レベル3だからって偉いわけじゃない。レクサスは、日本の尖兵だから、それがどのくらいのレベルにあるのか、アウディとメルセデスを引き合いに出して比べて、その実力を伝えたかったんです。今のレクサスは、ハードウェア的にも高いレベルにありますし、逆に足りない部分もあります。それも継続してレポートしていきたいですね。

悪いものは悪い。しかし、良くなったら ”褒める”という姿勢。

『間違いだらけのクルマ選び』の編集を努めた久保田 創氏(草思社)
————第2特集の「国産コンパクトvs.ライバル」は?

久保田氏(担当編集者) 2017年は、コンパクトカーのフルモデルチェンジやマイナーチェンジが続いたことがきっかけです。

島下氏 フィットやスイフト、それにヴィッツやVWポロなんか出て話題にもなりましたから。しかも、フィットに関しては、「こんなに良くなっているのか!」と。何箇所か補強など入れたりして、すごい変わっているわけではないのに、ものすごく良くなっていたから驚きましたね。あと、N-BOXも良い! 最近のホンダは、本当に良くなっています。以前は、ずっと“ダメ”って言い続けてきたから、良くなったら、ちゃんと褒めてあげたいなと(笑)。

————そういう意味でも巻末の「採点簿」に、厳しい評価も見えますね?

島下氏 1から10まであるのに、ヌルくしてはイカンなと。ダメなものはダメですから。公平性を保たないといけません。とはいえ、難しいんです、数値化するのは。あるメーカーからは「そんなに悪いですか?」と言われますけど(笑)。でも、気にしません。悪いものは悪い。それが数値化ですから。

久保田氏 2016年と2017年版の時、読者から電話が来まして「いくらなんでも採点簿で“1”はひどいんじゃないか」と指摘されたくらいです。島下さんに伝えてください、と言われました(笑)。

————そこまで公平性を保つと、逆に心配されるというのは面白いですね。

久保田氏 島下さんは著者であると同時に編集長です。私はそれを形にするために調整していく感じですね。ですから全体の構成などは最初と最後ではだいぶ変わっています。ギリギリまで情報を整理しています。
島下氏 例えば、エッセイは、東京モーターショーの後で、急遽、ニッサンの自動運転ネタに内容を変更しました。本来は入るはずの原稿は書き上がっていたんですが(笑)。あと、ルノー・メガーヌGTも超最後、ギリギリで載せましたね。

————久保田さんは担当編集者として、2018年版『間違いだらけのクルマ選び』でお薦めのポイントはありますか?

久保田氏 担当者の視点で言わせていただくと、いわゆる“拾い物グルマ”が楽しみです。先ほど話しにも出ましたが、期待はしてないのに、乗ってみたらすごい良いクルマとか、そういうのがあると嬉しくなりますね。本書の読者は“実は良いんだぞ!”と言いたい人が買う傾向も見られますから。今回のシビックやシトロエンのほかにも、マイナーチェンジしたハリヤーなどもいい例です。もちろん、フィットも。こういうのを皆さんに是非読んでほしいと思います。

————島下さんからのお薦めは?

島下氏 徳大寺先生が執筆されている頃は、今ほど自動車全般がいいわけじゃなかった。だけど、今の新型車は、乗って危険性が高いというほど出来の悪いクルマはありません。どれを買っても“それなり”には満足するでしょう。でも、その一方で、例えば10年に一度の買い物としてクルマを購入される方にとっては、難しい選択となりますから、クルマ選びは慎重になります。そういう方にとって、買い得感が高かったり、気づきもしなかったマイナーチェンジ版の良さを知ってもらいたいですね。もちろん、巻頭特集のような、今の自動車事情も読み解いてほしいです。クルマの未来は、環境の未来です。モビリティの未来は、大きく生活に絡んできますから、そういう視点でも読んで頂けたらと思います。

久保田氏 実は裏テーマがあるんです。“クルマが世界を変える”というテーマが。ちょうど今、大変革期です、本当にすごい時代を迎えました。実際に乗った話から進めるあたりも基本です。なにしろ“リーフよりeゴルフ”ですから(笑)。ぜひ、その理由も読んで頂きたいですね。

【2018年版の指摘】
・EVで「日本は遅れている」というのは事実誤認!
・EVで世界を変えるという夢を、語るべきだ
・自動運転もそれが社会を変えることを意識せよ
・トヨタGR、本気の作り込みに感心した。注目!
・VWのディーゼル日本導入。しっかり説明すべき
・実は日本はランボ天国! 成功と反骨のアイコンか

【クルマの今がわかる3大特集】
・第1特集 EVで世界を変えろ!
・第2特集 大進化 国産コンパクトvs.ライバル
・第3特集 新型レクサスLSは世界と戦えるのか?
★今期も選出、ベスト3台! 
   ――島下泰久のオススメ筆頭グルマたち

島下泰久 著  草思社
四六判/並製/256ページ/定価 1,512円(税込み)

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