連載コラム「酷道を奔り、険道を往く」Vol.5 トンネルだと5分、旧道だと最大10時間! 【安房峠を越えて(酷道険道:長野県/岐阜県)】マツダ・ロードスター
- 2018/02/10
- MotorFan編集部
長野県と岐阜県の県境にまたがる安房峠。
安曇野と飛騨高山を結ぶ交通の要衝であり、
今でこそトンネルの完成によってものの5分で抜けられるようになったが、
かつては狭隘かつ急峻な山岳路しかなく峠越えには大変な労苦を伴い、
行楽シーズンには10時間近くかかることもあったという。
マツダ・ロードスターで孟冬の飛騨山脈を駆け抜ける。
TEXT:小泉建治(KOIZUMI Kenji)PHOTO:平野陽(HIRANO Akio)
絵に描いたような旧道
まぁ、たいてい旧ナントカって道は途切れ途切れになっていたりして、うまくつなげて走ることが難しかったりするし、途中から登山道みたいになって車両走行不可になったりするけれど、それもまた楽し。
ある地点からある地点に移動することが目的であれば新道を走るに越したことはないけれど、走ることそのものが目的であるならば、とりあえず旧道を覗いてみるのがクネクネ道オタクの常套手段だ。
そんな読者諸兄にオススメしたい「ザ・旧道」のひとつが長野県と岐阜県の県境にまたがる安房峠である。まぁ有名と言えば有名だから本誌読者のなかにも走ったことがある方が多いかも知れないが、そういう達人のみなさんには黙ってお付き合いいただけますようお願い申し上げます。
で、なぜにオススメかというと、以前はこのタイトでツイスティな峠道しかなくて屈指の難所として知られていたのが、とんでもなく立派なトンネルができたおかげで一気に往来が楽になり、峠道のほうは交通量が激減し、一転して物寂しい雰囲気に……という、絵に描いたようなバックボーンを持つからだ。
もちろん、険しい北アルプスという立地にあることも大前提だ。上高地、乗鞍、飛騨高山、白川郷などなど、今でこそ東海北陸自動車道や長野自動車道の開通によってアクセス良好な観光地になったが、かつては地元在住でもなければ、そう簡単に行ける場所ではなかった。それだけにたどり着いたときの感慨もひとしおで、これらの地名を耳にするだけで旅情をかき立てられてしまうのである。
いきなり濃度マックス!
長野自動車道の松本インターチェンジを降り、国道158号線を西へと向かう。松本電鉄上高地線と並行に走っているうちはいわゆる市街地に過ぎず、沿道も賑わっているが、終点の新島々駅を過ぎ、梓湖にさしかかる辺りから景色は山深くなり、にわかに秘境感が増してくる。
とはいえ平日でも交通量は多く、酷道険道らしい物寂しさはまだ感じられない。国道158号線は松本市と高山市を結ぶ交通の要であり、乗用車はもちろん大型バスや大型トラックも頻繁に行き来している。上高地や乗鞍といった名だたる観光地を擁し、しかもそれらにマイカー規制が敷かれていることも大型バスが多い理由だろう。
余談だが、この梓湖のあたりの国道158号線は、天気を問わず来るたびにいつも路面が濡れているような気がする。もしかしたら自分が通る直前に雨が降っていたのかもしれないが、それが毎回繰り返されていたとも思えない。
トンネルから湧き水や雨水が沁み出しているのか。とにかく、自車と前走車が跳ね上げたしぶきでウィンドウやボディの下半分くらいが汚れまくる。出発前にはウォッシャー液の残量にもご注意を。
のっけから9つものヘアピンが連続し、急峻な斜面を一気に駆け上がる。ステアリング操作は忙しくなり、運転席の真横すれすれにまで岩肌が迫り来る。いきなり酷道険道濃度マックスである。
そんなこの安房峠旧道を、かつてトンネルができる前は大型ダンプや観光バスが連なって走っていたというのだから呆れるしかない。俊敏なロードスターでさえステアリングをグルングルン回さなければ曲がれないのに、ダンプやバスでどうやって曲がれというのだろう。
事実、当時は一発で曲がり切れずに何度も切り返している姿があちこちで見られ、すれ違いが困難なことも相まって大渋滞を引き起こしていたという。なにしろトンネルの入り口から峠を越えて平湯温泉まで、安房トンネルを通ればものの5分、旧道でも現在のように交通量が少なければ40分ほどで行けるところを、かつては行楽シーズンだと5、6時間は当たり前で、ときには10時間近くかかることもあったらしい。もはや歩いた方が速いレベルである。
参考までにGoogle mapで計算してみたところ、徒歩で4時間20分と出た。でも休憩が必要だし、アップダウンの激しさによってペースが落ちるのを考慮すると、早くても7時間くらい?……うーん、やっぱりクルマが無難ですね。え? バイクが最強だって? でも梓湖の横を通るとエキパイやらスイングアームやらが汚れまくって洗うのが大変そうでイヤだな。
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雄大な北アルプスを一望
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