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  • 2018/08/07
  • MotorFan編集部 鈴木慎一

スズキ・ジムニーのマスコット「サイ」(RHINO=リノ)をデザインしたのは、じつは若き日のあの人

世界的にもジムニーのマスコットは「サイ」。そのサイのマークをデザインしたのは、スバルの前デザイン部長難波治氏だ

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フルモデルチェンジで大人気を博している新型ジムニー。原点回帰を掲げて登場したジムニーは、多くの技術的特徴を代々継承している。そのジムニーのマスコットといえば、リヤのスペアタイヤカバーにプリントされた「サイ」である。これも30年以上ジムニーのマスコットとして世界中で愛されてきたのだ。このサイのマスコットをデザインしたのは、当時のスズキの若い社内デザイナーだとだけ言われてきたが、ここまで長期にわたって愛されるデザインをした「若い社内デザイナー」とは誰なのか……、追っていくとスバルの前デザイン部長の難波治教授だということがわかった! 難波教授に、ジムニーのサイが生まれた背景を訊いた。

難波 治氏 筑波大学芸術学群生産デザイン専攻卒業後、スズキ自動車に入社。カロッツェリア・ミケッロッティでランニングプロトの研究、SEAT中央技術センターでVW世界戦略車としての小型の開発の手法研究プロジェクトにスズキ代表デザイナーとして参加。独立後、国内外の自動車メーカーのデザイン開発研究&コンサルタント業務を開始。2008年に富士重工業のデザイン部長に就任。13年にCED(Chief Executive Designer)就任。現在は、首都大学東京トランスポーテーションデザイン教授。

 ジムニーのマスコットであるサイのマークが生まれたのは、二代目(SJ30型)がデビューした81年頃のこと。スズキ(当時は鈴木自動車工業)のデザイン部が、発売間近のジムニーの用品のデザインをしていたそうだ。傾斜計や高度計などのメーター類とタイヤカバー、ボディサイドのステッカー、荷台のソフトトップの形状などをデザインしていた。そこに在籍していたのが、若き日の難波治氏だったのだ。

 サイのマスコットをプリントしたタイヤカバーは大ヒット。特に海外で人気になり、当時ヨーロッパのどこかの国(たぶん、イギリスだった、とのこと)のジムニー・クラブが、その「サイ」のマークをクラブのマークにしたり、クラブ誌の表紙にしたりと、世界でひとり歩きを始めたのだ。現在では、世界中で、ジムニーのファンクラブが「リノ(RHINO)クラブ」と呼ばれるなど、ジムニーのマスコットとして愛されるようになったのだ。

 難波治氏は、スズキの社内デザインを経て独立。独立後は、国内外の自動車メーカーのデザイン開発研究&コンサルタント業務を行ってきた。2008年に富士重工業(現・スバル)のデザイン部長に就任。13年にCED(Chief Executive Designer)就任。現在は、首都大学東京トランスポーテーションデザイン教授を務めている。

リヤのスペアタイヤカバーのリノ(サイ)マークは、ジムニーのシンボルとなっている。

Q:このマークをデザインしたのは、いつ頃だったのですか?
難波氏:私がスズキに入社した翌年か翌翌年のことですから、1980年か1981年ですね。私がまだまだ駆け出しのデザイナーだった頃にジムニーの用品デザインをしていましたが、タイヤカバーはその仕事のなかのひとつでした。

Q:どうして「サイ」だったんですか?
難波氏:「ジムニーのマスコットとして動物を用いるとしたらどんなイメージ?」と自宅で妻に聞いたところ「サイは?」という極めて適当な答えが返ってきて「なんで小さなジムニーのイメージがサイなわけ?」と聞き返したことを憶えていますが、でも小さなジムニーだからこそ似つかわしくない「サイ」は洒落が効いていて面白いかもしれないな、と思ったように記憶しています。

Q:どんなふうにデザインしたか憶えていらっしゃいますか?
難波氏:私の中ではサイは体全体が鎧を着ているようなイメージでしたし、どこか恐竜のような硬いパーツ感もあったのでそれを模式化したのです。ジムニーのマスコット的な存在にしなければと思いましたし、可愛げのあるキャラクターでありながら、あまりに漫画っぽくはしないようにしたように思いますがそれ以上は憶えていません。ただ、身体の向こう側の足がないとペラペラのマークのように見えてしまうので向こう側の足をどう表現しようか、足の踏み出し方などいくつも検討したことは憶えています。

Q:どうして、これだけ長くジムニーのマスコットになったんでしょう?
難波氏:なぜでしょうね。これは本当に予想外のことでした。先ほど答えたように、『小さなジムニーにサイかよ!』という洒落をわかってくれたのではないでしょうか。私自身がウケ狙いを意識せずにデザインしたことが良かったかもしれないなと思います。しかし一方で、多分ジムニーの真面目な車づくり、車体は小さいけれど四輪駆動車としての本物感、その気になると、どの四駆にも負けない実力を発揮するところと、いつもは静かではあるけれど一旦怒ると凄まじいパワーを本気で出すサイのイメージがどこかで結びついたのかもしれませんね。デザインの視点からみると、必要以上にリアルにしないことと、必要以上に可愛さを押し出さない。でも誰が見てもサイだよね、と一目でわかるところが良かったのかもしれません。犬や猫だったらこうはなっていないと思いますし、象でもないでしょう?ライオンも違う。バッファローは行き過ぎ。そうやって考えるとサイってちょうどいいと思いませんか?

2017年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー、e-Survivorにもサイのマスコットが。

Q:昨年の東京モーターショーに展示してあった「e-Survivor」にもサイのマークがありましたね?
難波氏:素直にとても嬉しかったですね。スズキの若いデザイナーは純粋にジムニーとサイのイメージの結びつきの強さを活用したのですが、じつはオリジナルのサイではなく、ちゃんとモダナイズして進化させているところにとても感銘を受けました。たいへん素晴らしい使い方だと思いましたね。スズキのデザイナーもわかっているな、やるじゃないか!と頼もしくも思いました。


難波治著『スバルをデザインするということ』
難波さんが、スバルデザイン部長時代に、どうデザインを考えたか。デザインとブランドをどう構築していったかをまとめた著書。

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