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絶版後に人気を獲得した「GSX-R」の50ccバージョン 【スズキ GAG(ギャグ)】本気半分・冗談半分⁉️ 原付レーサーレプリカの元祖(1986年)/カスタムアーカイブ

  • 2019/05/13
  • MotorFan編集部 北 秀昭
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写真は発売当時、もっとも人気の高かった、SUZUKIワークスのGSX-R風レプリカカラー。

1986年(昭和61年)、日本全国の峠やストリートでは、フルカウルで武装したレーサーレプリカを操る、革ツナギ姿の「街道レーサー」たちで賑わっていた。マシンの中心は、過激な2スト250ccや4スト400cc。そんな中、冗談半分・本気半分⁉️の、カワいい4スト50ccレプリカが誕生した。シャレの分かる4ストミニ、その名はGAG(ギャグ)!
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
PHOTO●ガッツ石塚/4ミニ.net https://4-mini.net

NSR50やYSR50の先輩マシン!GAGは50ccレーサーレプリカの先駆けとなったモデル

ホイールは前後10インチを採用。
GAGのサイドカバーに示された「SUZUKI ADVANCED COMICAL SYSTEM」は、スズキの油冷エンジンシステムであるSACS「SUZUKI Advancsd Cooling System」のパロディ。

 レーサーレプリカブーム真つ盛りの1986年(昭和61年)2月に登場した、スズキGAG(ギャグ)。当時はメーカーが2スト250ccが45ps、4スト400ccが59psという馬力自主規制を設け、各社は威信をかけた熾烈なパワーバトルを展開。その緊張感を、ほんの一瞬和らげるかのように登場したのが、50ccのGAGだった。

 発売当時のGAGのキャッチコピーは、「GSX-R風のフルフェアリングを標準装備した、レプリカのミニサイズレジャーバイク」。

 遊ひ心をそのままマシンに投影した、斬新なGAGの存在は、当時としては、まさに「ギャグ」そのもの。これまで見たことのない、小振りなレーサーレプリカを目の当たりにした、多くのミドル&ビッグバイクユーザーは、一瞬目が点になり、次に「何じゃぁ、こりゃあぁぁ(松田ユーサク風)」と両手を広げて驚愕。人によっては、「何、コレ???」と、思わす笑ってしまったというのは有名なお話。(※注1)

 と、少々大袈裟に書いてしまったが、レーサーレプリカ=2スト250ccや4スト400ccがメジャーだった当時、「4スト50ccで。しかもポケバイとGSX-Rを足して2で割ったような」、既存の常識をくつがえしたGAGの登場は、そのくらいセンセーショナルなものだった。

 GAGは発売から、ほほ1年で絶版となった短命車。GAG登場後は、パワフルな2スト7.0psエンジンを搭載した「ヤマ八 YSR50」、続いてミニバイクレースで一世を風靡し、今もなお現役で活躍する「ホンダ NSR50」などの2ストレフリカミニが登場。稀有な存在だった50ccレーサーレプリカは、すっかり定番となり、時代はミニバイクレース全盛期へと突入していった。

※注1:「GAG(ギャグ)」とは英語。日本語では冗談、ダジャレという意味。当時、巷では「小さなGSX-R」とは呼ばれず、「大きなポケバイ」と呼ばれることもあった。

 1983年、国内初のカウル付きモデル「RG250Γ(ガンマ)」が登場して大ヒット。1985年に発売された「GSX-R750(写真)」は、油冷式エンジンや超軽量な車体などで人気を獲得。そのフォルムはGAGに引き継がれた。

前後10インチの本格的な足周り!

 実用車の「バーディー」用をベースにした空冷4ストローク単気筒エンジンは、5.2ps/7000rpmを出力。ミッションは4速リターン式、電装系は6VのCDI方式を採用。シリンダーには、アルミ&スチール製スリーブを採用。バーディー用にはない、オイルフィルターが装備されているのがポイントだ。

 フレームはダブルバックボーン型。フロントフォークはインナー径φ26の正立型を採用。リヤにはシングルダンパーサスペンションを導入済みだ。ホイールは前後10インチに設定。ブレーキはフロントをシングルディスク式、リヤをドラム式としている。

 外装はGSX-Rのフォルムを踏襲したフルカウルに加え、シングル風シート、バックステップなどで武装。なお、ウインカーやテールランプは、当時のGSX-R750やRG250Γ(ガンマ)と同じものが流用されている。

クランクケースには、バーディー用にはないオイルフィルターを装備。
リヤはシングルダンパーサスペンションを採用。
スピードメーターとインジケーターを備えたメーター周り。
“レーサーならでは”のバックステップを装備。

【GAGの主要諸元】
全長×全幅×全高:1540mm×610mm×870mm
軸距:1080mm
乾燥重量:64kg
エンジン形式:4スト単気筒SOHC49cc
キャブレター:VM13φ
ボア×ストローク:39.0mm×41.8mm
最高出力:5.2ps/7000rpm
最大トルク:0.57kgm/6000rpm
燃料タンク容量:7.0L
タイヤサイズ(前後):3.50-10-2PR
発売価格(当時):18万3000円

ノーマルカラーは個性派揃い!GAGの各色をチェック

■ピンクスカラーの通称「ウサギGAG」

ピンクスカラーの通称「ウサギGAG」。リヤカウルとアンダーカウルには、サングラス姿のウサギのステッカーを配置。当時はあえて、このステッカーを剥がすユーザーが多かった記憶もある。

■スパルタンなバトルプレーンカラー

発売当時、オプションで発売されていたFフォークのアウターカバー。

アメリカ空軍の戦闘機をイメージさせる、スパルタンなバトルプレーンカラー。なお、当時のGAGカタログには、各カラーについて「ボディカラーと言わず、あくえて4タイプのキャラクターと呼ばせていただきます」と明記。写真のフロントフォーク用アウターカバーは、当時オプションで発売されていた、今では超お宝級の貴重なアイテム。

■現在では希少価値の高いポップアートカラー

ノーマル4種類の中では、もっとも不人気だったといわれるカラー。それゆえに、GAGの人気が高まった現在は、「GAGの中では一番貴重なモデル」として認知されている。

◆当時の人気&定番パーツを投入したGAGカスタム

ジンプライズ製マフラーを装着し、SP武川製で89ccにボアアップ

GAGカスタムのエキスパートとしても知られた「ジンプライズ」のマフラーを装着したGAGカスタム。エンジンはSP武川製レギュラーヘッド、52φシリンダー&ピストンで89ccにボアアップ。オートボーイ製ハイカムシャフト、SP武川製強化バルブスプリングで強化されているのもポイントだ。
OWNER■金坂さん(4MINIちゃんぷ6・2004年発売より)
PHOTO■ガッツ石塚

ヨシムラ製パーツでエンジンを徹底チューン

ロードレースや鈴鹿8耐などでもおなじみの、ヨシムラ製パーツをふんだんに盛り込んだGAGカスタム。当時発売されていた、48φピストン&シリンダー(76cc)、ST-1カムシャフト、強化バルブスプリングなど、ヨシムラ製フルキットでパワーアップ。キャブレターは、ヨシムラケイヒンPC20φをチョイス。マフラーはエキパイの途中にチャンバーを設けた、ダウンアップタイプのヨシムラ製サイクロンが装着されている。
OWNER■金坂さん(4MINIちゃんぷ6・2004年発売より)
PHOTO■ガッツ石塚

◆2ストマシンと大バトル!ミニバイクレースで活躍したGAG改たち

15馬力を発揮したSP武川のGAG改「TS91R」と「TS51S」 ※1989年

写真右はレース用のTS91R。写真左はストリート仕様のTS51S。
写真上はレース用のTS91R。写真下はストリート仕様のTS51S。

 モンキー用パーツの大御所「SP武川」が手掛けたワークスGAG「TS91R」。このマシンは、日本ミニバイクチャンピオンカップの4ストクラスで、2年連続日本一に輝いたマシン。

 当時、SP武川は、これとまったく同じマシン(89cc)を、69万8000円でコンプリート販売。同車は、レッドソーンが1万2000~1万3000rpmで15psを発揮するモンスター。

 なお、ストリート仕様の「TS51S」は、排気量50ccのままだが、6速ミッションなどが組み込まれ、価格は26万8000円だった。

■モト・チャンプ 1989年1月号より

2ストのYSR50とバトルを展開した「オートボーイ」のGAG改 ※1987年

 「まるちゼロハン耐久」というミニバイクレース全盛期のビッグレースで、4ストクラスを連覇し続けていた、パーツメーカー「オートボーイ」のGAG改。このGAG改は、当時大人気だったヤマハの2ストマシン・YSR50と、対等に渡り合うほどの実力を備えていた。この後、NSR50が登場するまで、空冷2ストのYSR50 vs 4ストのGAGという対決の図式は、激化していった。

■モト・チャンプ臨増 1987年より

ワンオフのアルミフレームを導入した「レガ・スピード」のGAG改 ※1987年

 ミニバイクレース発祥の地、関西で4ストクラスの上位を常に争っていた、パーツメーカー「レガ・スピード」。1989年当時に完成させた、GAG用オリジナルのアルミ・デルタボックスフレームがもたらしたインパクトは強烈だった。高強度と軽量化はもちろん、美しいルックスも、当時の大きな話題となった。

■モト・チャンプ 1989年1月号より

負圧式キャブを採用した「ジンプライズ」のGAG改 ※1989年

 4ストミニでは、後にも先にも例なし!という、負圧式キャブレター(4ストミニのキャブは、排気量=負圧の関係から、強制開閉式が一般的)を装着していた、「ジンプライズ」のGAG。キャブレターの口径は、24φと26φの2種類があり、同社製ウインザークロスマフラーと絶妙のマッチングだった。

 このキャブレターと鏡面加工済シリンダーヘッドがキットになったボアアップキットは、「120km/hコンプリートKIT」として、当時8万4500円で販売されていた。

■モト・チャンプ 1989年1月号より

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