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  • 2019/07/15
  • GENROQ編集部

ポルシェ911の両極に位置するグレード、それがGT3 RSとターボだ! 同門の頂上決戦

911GT3 RS × 911Turbo S比較試乗

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911GT3 RS(左)と併走する 911Turbo S
911モデルの頂点を決めるのは難しい。だが、豊富なバリエーションを代表する2モデルを選ぶとしたら、ターボSとGT3 RSであるという意見は多いだろう。NAと過給機の最高峰モデルを検証し、991というモデルを振り返ってみよう。

REPORT◉吉田拓生(YOSHIDA Takuo)
PHOTO◉小林邦寿(KOBAYASHI Kunihisa)

※本記事は『GENROQ』2019年7月号の記事を再編集・再構成したものです。

 リヤエンドに水平対向6気筒エンジンを据えた2ドア、4シーターのスポーツカー。1964年にはじまるポルシェ911というシリーズは数多くの代替わりを経ているが、ざっくりと分けるならば4つの時代に分類することができる。

 原初から930までのトーションバーの時代と、964から993までのコイルスプリング+4駆を許容し始めた時代。そして水冷第一期といえる996と997、そして現行991と日本デビューが直前に迫った992という括りである。つまり今回の992への変化は、アルミニウムの使用量が70%にも達したボディ構造や一部でささやかれるモノコックのモジュラー化といったトピックこそあれ、思想的には991の延長線上にあるのだと解釈できる。

 2011年にデビューし、今まさに最終期を迎えつつあるタイプ991とはどのようなポルシェ911だったのか? いきなり結論めいたことを言ってしまうと、それは多様性を含んだ911ということになる。

 多様性の鍵はボディサイズにある。997と比べて全長で65㎜ほど伸びている991だが、重要なのは100㎜延長されたホイールベースである。ポルシェ911の歴史上でホイールベースが100㎜も伸びたためしはないのである。

 ホイールベースが延長されたことでスペース的な余裕が生まれ、スタビリティが高まり、一方積極的に曲げたいモデルは後輪操舵で回頭性を補い、コンバーチブルモデルの場合は幌を収納する余裕が増している。

カーボン製のフルバケットシートはリクライニングできないが、上下は電動調整が可能だ。ヘッドレストにはヴァイザッハパッケージのロゴが入る。

 古くからポルシェ911は多くのバリエーションを生み出すことで、フラット6やRRプラットフォームという他に転用しにくいコストリーなコンポーネントを償却してきた歴史がある。バリエーションが増えれば販売台数も増加し、当然のようにラグジュアリーなモデルはもっと安楽に、スピードモデルはレーシングカー寸前まで鋭くといった顧客の要望が両極端に偏るのは当然である。

 振り返ればナローの時代は911Sでも73カレラっぽいエンジンの鋭さは味わえたし、964の時代はカブリオレでスピードスターやカレラ2のおおよその雰囲気は感じることができたのである。言い換えれば、それほどしっかりと造り分けがされていなかったとも言えるのだ。

 多様性を含んだプラットフォームの恩恵によってはっきりとした造り分けがなされ、顧客の要望に応えた991。中でも走りの感性においてその両極に位置するモデルが今回用意したGT3 RSとターボSである。991最終期に敢えて熟成なった決定版を選ぶとしたら、果たしてそれはどちらなのか。純粋なドライバビリティのみに着目して、ともに1880㎜という車幅を与えられた両者の完成度を推し量ってみよう。

 991の後期モデルからついに素のカレラでもターボチャージャーが装着されたポルシェ911だが、それでもやはりターボと名の付くモデルは特別なオーラを纏っている。

 中でもターボSはその最高峰であり、3.8ℓのフラット6ターボは580㎰を発生する。4駆や可変のエアロといったハイテクは、その高出力を包囲するためのものだ。

20インチのホイールはセンターロック式。撮影車両はオプションのPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)を装備。

 一方のGT3 RSというクルマの個性もやはり、エンジン抜きに語ることはできない。自然吸気フラット6のまさに究極といえる4ℓユニットは実に9000rpmというレブリミットを許容することで520㎰を獲得している。パワーの損出を最小限に抑えるため、無駄な装備の一切を省いた軽量ボディと、少々のCd値悪化よりもダウンフォース増大を狙った前後のスポイラーが存在を大きく主張している。

 最初にターボSを駆って高速ワインディングを駆けあがった。一気にブーストを高め、580㎰を全開放するような出力特性はデビューから3年経った今でも新鮮だった。だがそれ以上に驚かされたのは、並のシャシーだったら前輪がウィリーしてしまいそうなほどの大パワーをしっかりと推進力に変えるシャシーの方だった。加減速に関わらずリニアに対応し続けるハンドリング特性と、軟らかいゴムによって路面にピタッと張り付くような極上のスタビリティに心を奪われた。ターボSの0→100㎞/h加速は3秒以下で、これはごく限られたスーパースポーツしか達成できない数字だが、それでもなおシャシーが勝っているのだ。

20インチのスポーツクラシックホイールにピレリPゼロを組み合わせる。ブレーキはPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)だ。

 非常にナチュラルなドライブフィールの裏で、前後のスポイラーや可変ダンピング、そしてリヤステアといったハイテクがこれでもかというくらいに仕事をしているはずだが、その一切を乗り手に覚らせない。

 急加速やコーナーの立ち上がりではフロントタイヤの駆動が微かに入ることで狙ったラインに吸い込まれていく。ポルシェ911というクルマの55年にもなる歴史は「ハイスピードとリヤヘビーにどう折り合いをつけるのか?」という禅問答のようなものだから、現時点においてはターボSを究極の911であると断じても異論はあるまい。

 ターボS目当てでポルシェ・ディーラーに行った人でも「GT3 RSにも乗ってみませんか?」と言われたら断る理由などないだろう。後々、仲間とクチプロレスに興じる時に役立つはずだ。何しろタイプ991の最終期を飾るスピードスターを除けば、今最もホットな911がGT3 RSだからである。

リヤスポイラーは速度が上がると自動的に上昇する。撮影車両はオプションのエアロキットを装着している。

 上質なボルドーレッドの革内装とガラスサンルーフのオプションがターボSの性格を代弁しているとすれば、カーボン筐体に最低限のクッションを貼り付けたバケットシートと、やはりカーボン置換されたルーフがGT3 RSというクルマを物語っている。このクルマは走ること以外にはまったく興味がないのだ。

 GT3 RSの車両価格は2692万円で、ターボSの2630万円に近い。だが例えツルシの状態でもほぼほぼ「ターボSらしさ」を味わえるのと違い、「GT3 RSをそれらしく」ということであればオプションの追加が欠かせない。中でもカーボン製のトリムパーツやマグネシウムホイールで軽量化に寄与するヴァイザッハ・パッケージ(約266万円)やPCCB(セラミック・コンポジット・ブレーキ。約167万円)は必須といえる。つまGT3 RSの正しい価格は3100万円ほどということになる。

 エンジンをかけた瞬間、少しオイルが枯渇気味なバルブトレインからガシャガシャというノイズが鳴り響き、超高回転ユニットが目を覚ます。フロントの接地荷重が明らかに足りない感じなのだが、ステアリングを切るとグイッと躊躇なくハナ先が切れ込んでいく。何しろGT3 RSのアシはフルピロなので、フィーリングは恐ろしいほどリニアなのである。けれどフルピロであるにもかかわらず、入力の類は硬質ブッシュくらいには洗練されている。

リヤにはロールケージが張り巡らされ、サーキット走行にも不満のないボディ剛性を実現する。リヤシートは装備されない。

 しばらく走るとすっかりGT3 RSの特異な周波数に慣れてきて、ペースも上がりはじめる。シャシーのキャパシティは相当なもので、少しくらいラフに扱っても大丈夫そうだ。大丈夫そうなのだが、実際にはそうでないことを僕は知っている。というのも、まさにこの個体でスピンを喫したことがあるからだ。

 お客さんを乗せて走るイベントで、軽く一発芸を見せようと思ったら、カウンターがまるで追いつかず、クルンッ。場所がサーキットなので全オフを試してみたのだが、今なお911の限界付近は険しいのである。

 いつもの癖で7000rpmくらいで勝手に右手がシフトアップさせてしまうのだが、このクルマの本懐はそこから9000rpmまでの間に宿っている。リミットが近づくと音も高く澄み、レヴの上りも速まるが、それ以上に感動的なのは回転落ちの鋭さだ。強烈なエンジンブレーキがダウンフォースと相まってコーナリングで前輪をねじ伏せるのに効く。

 ターボSは4輪のメカニカルグリップで曲がる印象だが、GT3 RSは空力とドライバーの腕で曲げる感覚が強い。そして今乗るならやっぱりGT3 RSだな、と確信した。

 ターボSは992の時代になれば、さらなるハイテクで武装してくるだろうが、GT3 RSからこれ以上引き算をすることは難しいはず。それにもし、次のGT3がターボになってしまったら? 猛烈な回転落ちによるドライバビリティだって消失してしまうに違いない。

 991はその多様性を武器にして、完全な造り分けを実現した。GT3 RSはその極みであり、ターボSもまた急速に進化する最中の到達点なのである。歴代ポルシェ911には、時間が経ってみると若干影の薄い時代も存在する。だが今回の2台の個性を確認した限り、991は記憶に残るジェネレーションになっていくと断言できるのである。

911GT3 RS

アルカンターラとレザーとカーボンで覆われたインテリアはスポーティな雰囲気。ヴァイザッハパッケージによりステアリングリムやシフトパドルはカーボン製となる。
チタン製のマフラーはセンター2本出し。やや乾いたエキゾーストノートで、音量はかなり大きめだ。
フロントボンネットはカーボン製。ふたつのNACAダクトが991後期GT3 RSの特徴だ。

911GT3 RS
■ボディスペック
全長(㎜):4557
全幅(㎜):1880
全高(㎜):1297
ホイールベース(㎜):2453
車両重量(㎏):1430
■パワートレイン
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHC
総排気量(㏄) :3996
最高出力:383kW(520㎰)/8250rpm
最大トルク:470Nm(47.9㎏m)/6000rpm
■トランスミッション
タイプ:7速DCT
■シャシー
駆動方式:RWD
サスペンション フロント:マクファーソンストラット
サスペンション リヤ:マルチリンク
■ブレーキ
フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク
■タイヤ&ホイール
フロント:265/35ZR20
リヤ:325/30ZR21
■性能
最高速度:312㎞/h
0→100㎞/h加速:3.2秒
■車両本体価格(万円):2692万円

911Turbo S

スポーティとラグジュアリーが同居するインテリア。2トーンレザーインテリアは標準装備となる。
ホールド性に優れたフルレザーのスポーツシート・プラスを装備。ポジションの調整はすべてパワーで行える。
フロントノーズ下には格納式のリップスポイラーを装備。スイッチで任意に動かすこともできる。カナード形状のスポイラーはオプション。

911ターボS
■ボディスペック
全長(㎜):4507
全幅(㎜):1880
全高(㎜):1297
ホイールベース(㎜):2450
車両重量(㎏):1600
■パワートレイン
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCターボ
総排気量(㏄) :3800
最高出力:427kW(580㎰)/6750rpm
最大トルク:750Nm(76.5㎏m)/2250〜4000rpm
■トランスミッション
タイプ:7速DCT
■シャシー
駆動方式:AWD
サスペンション フロント:マクファーソンストラット
サスペンション リヤ:マルチリンク
■ブレーキ
フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク
■タイヤ&ホイール
フロント:245/35ZR20
リヤ:305/30ZR20
■性能
最高速度:330㎞/h
0→100㎞/h加速:2.9秒
■車両本体価格(万円):2630万円

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