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【難波 治のカーデザイナー的視点:連載コラム 3回目】私、デザイナーという職業をしております。

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設計者でありながらもデザイナーの領域も受け持った3人

 ところで、最近は企業内で異常なまでに分業・細分化を進め効率化を求めたり、PCの画面内だけで仕事をしていることもあって、全体像を俯瞰してバランス感覚を持って計画できる設計者やデザイナーが育成できずに減ってしまって、ひょっとするとデザイナーが明治時代に一部分しか伝わらなかった「意匠」「図案」の専門家という役回りに戻ってしまって特化してしまいかねないような傾向が散見するのは非常に危惧するところでもあります。

 前述の3名の設計者たちはその卓越した才能があるが故に設計者でありながらもデザイナーの領域も受け持つことができたのではないでしょうか。しかし僕は時々実はこれが車を開発する上では最高の形だと思う面があります。すべてを統一した考えで貫くことができますから。そして、彼ら3人の仕事はある意味で現代の車作りの土台を作り上げたと言えます。それぞれにそれぞれの設計意図があってそれを具現化したものですからそういう意味で3人の「定番」はとても強く個性を主張しています。採用した形式や大きさ、スタイルなどは違えども、設計者としての意図には共通するものが流れているように思うのですがいかがでしょうか。

 これら第2次世界大戦の前後に民意を獲得し庶民に絶大なる賛同を得た3つの車たちは、その後の現代にも3車ともに復活し、その名前とブランドとなるべき記号性を持った姿のエッセンスが残っていることも奇遇だと思いませんか。

 まあ僕は個人的には過去の名前だけを喰い物にして調子のいい商売をしてオリジナルが泣いているぞ!と思うのですが、こういう僕は相当な堅物なのかもしれませんね。それぞれの車をお持ちの方々にはそれこそデザイナーが力不足で欲しい車を出してくれていないじゃないか、とお叱りを受けてしまいそうですが(お持ちの方、スミマセン!)。

Fiat nuova 500(1957)

ダンテ・ジアコーサの設計によるRR車。2名乗車の超小型車として大ヒットを飛ばした「500」の後継車。1955年に登場していた「600」のメカニズムと同じく、RRとしたのはプロペラシャフトとセンタートンネルを廃して広いキャビンを得るため。コストの関係から空冷2気筒とし、振動騒音対策のためにキャンバストップ構造としている。

難波 治 (なんば・おさむ)
1956年生まれ。筑波大学芸術学群生産デザイン専攻卒業後、鈴木自動車(現スズキ自動車)入社。カロッツェリア ミケッロッティでランニングプロト車の研究、SEAT中央技術センターでVW世界戦略車としての小型車開発の手法研究プロジェクトにスズキ代表デザイナーとして参画。94年には個人事務所を設立して、国内外の自動車メーカーとのデザイン開発研究&コンサルタント業務を開始。08年に富士重工業のデザイン部長に就任。13年同CED(Chief Excutive Designer)就任。15年10月からは首都大学東京トランスポーテーションデザイン准教授。

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