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【鉱物油・部分合成油・100%化学合成油】バイク用エンジンオイルの粘度や温度上昇率を実際に温めて比べてみた

  • 2019/08/12
  • MotorFan編集部 北 秀昭
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写真左から鉱物油、部分合成油、100%化学合成油。

4ストロークのバイク用「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」の各エンジンオイルを用意し、温度上昇率や温度下降率、粘度などの違いや特性をテスト。用意したのは、某有名メーカーの3種類。果たしてそれぞれの違いを、あぶり出せるか!?

PHOTO/REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)
※この記事は月刊モト・チャンプ(2012年8月号)に掲載分を再編集したものです。

「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」の違いとは?

 前回は、バイクの4ストローク用エンジンオイルの選び方の基本をレポート。

■【エンジンオイルを正しく選ぶ】「●×W-30」の数字とか、「鉱物油」「部分合成油」ってどんな意味?

 今回は、「鉱物油」「部分合成油」「100%化学合成油」の違いを、実験を交えて説明しましょう。

ーーー実験データーーー
・オイルの粘度:すべて10W-30
・実験室内の温度:22℃
・実験したオイルのメーカー:某有名メーカー

街乗りに適したリーズナブルな「鉱物油」

≪鉱物油の一般的な特徴≫
 原油を精製し、添加剤を配合したエンジンオイル。低コストなため、販売価格を抑えられるのが大きなメリット。
 合成油に比べ、高温(高回転)を持続すると、油膜が切れやすいという特性がある。そのため、街乗り用やツーリング用として用いるのがベスト。

【見た目&匂いは?】
 実験に使用した鉱物油の色は、同じ茶色系の「部分合成油」や「100%化学合成油」に比べ、よーく見てみると、やや濃い目。匂いは刺激臭が強く、3種類の中で、一番きつい。

街乗りからスポーツ走行まで幅広く使える「部分化学合成油」

≪部分化学合成油の一般的な特徴≫
 「鉱物油」と「100%化学合成油」をブレンドし、添加剤を配合したエンジンオイル。価格は「100%化学合成油」よりも安く、「鉱物油」よりも高め。
 「鉱物油」と「100%化学合成油」の中間レベルの性能を持っているため、街乗りからスポーツ走行まで幅広く用いられている。

【見た目&匂いは?】
 写真の「部分化学合成油」の色は、「鉱物油」よりもやや薄めの茶色。ただし、「100%化学合成油」とほぼ同色で、肉眼では見分けがつかない。

 匂いは「100%化学合成油」以上、「鉱物油」以下の刺激臭あり。

高回転を多用するレースや峠の走行にもおススメの「100%化学合成油」

≪100%化学合成油の一般的な特徴≫
 原油から精製したオイルを化学分解・化学合成し、添加剤を配合したエンジンオイル。
 「エンジンにとって理想的なオイル」を目指して作られているため、3種類の中でも性能はピカイチ。超高性能タイプの“レーシングオイル”もある。
 製造コストが高いため、「鉱物油」や「部分合成油」よりも販売価格は高め。

【見た目&匂いは?】
 写真の「100%化学合成油」は、見た目は「部分合成油」とほぼ同じで、肉眼ではまったく見分けがつかない。

 刺激臭は若干あるものの、他の2種類に比べてかなり低め。

各エンジンオイルを「100℃」まで熱し、粘度をチェック

▲市販のバイク用油温計を使い、エンジンオイルの温度を計測。
▲「鉱物油」の粘度をテスト中。

 まずは、オイルに熱を加えない状態で、容器に入った3つのオイルをスプーンですくい、垂らしてみる。また、容器に入った3つのオイルを、指先で触れてみる。

 結果は、3種類とも変わりなし。

 次に、安全性を考慮して、マグカップにエンジンオイルを注ぎ、湯せんにて過熱。各エンジンオイルを100℃まで加熱し、粘度をチェック。
 ヤケドしないよう2秒程度、指先で粘度の違いを感じてみる。

 結果は、3種類とも、大きな違いは見受けられない。

「150℃」まで熱すると、各エンジンオイルの“粘度”に違いが発生

▲150℃まで熱した「鉱物油」。見た目も手触りもサラサラ。この状態では、エンジンオイルの重要な役割である「金属の潤滑」という役割を担うには、かなり厳しいことが伺える。
▲150℃まで熱した状態の「100%化学合成油」。ヤケドに注意しながら、2秒程度指で触れてみると、「鉱物油」よりも高い粘度が感じられた。

 100℃から、さらに過熱してみる。油音は完全にオーバーヒートゾーンである、「150℃」まで到達。
 ヤケドしないよう、2秒程度、指先で粘度をチェック。すると、3つのエンジンオイルに、明らかな違いを感じた。詳細は下記の通り。

・「鉱物油」は、サラサラ・シャバシャバの状態。常温や100℃の時に感じたヌメリ感は、ほぼ失われている。
・「部分合成油」は、常温や100℃の時に感じたヌメリ感が、若干失われているが、「鉱物油」ほどのサラサラ・シャバシャバ感はない。
・「100%化学合成油」は、「部分合成油」のヌメリを、ややしつこくしたような、さらに上をゆく粘り気が感じられた。

「100%化学合成油」は温度が上がりにくい!?各エンジンオイルの「温度上昇率」を検証!

 どのタイプも、急激な温度上昇はない。

 ただし、エンジンオイルの温まり始めから、適温である50℃から100℃において、「100%化学合成油」は、他のエンジンオイルよりも、温度の上昇率が低い。
 つまり、「温度が上がりにくくなっている」のが確認できる。

「100%化学合成油」は放熱性が良い!?各エンジンオイルの「温度下降率」を比較

 「鉱物油」と「部分化学合成油」の温度下降率は、ほぼ同じ。
 一方、「100%化学合成油」は、110℃あたりから、他のエンジンオイルよりも、短時間で温度が下降。

 このデータを見る限り、「100%化学合成油」は、放熱性に優れたエンジンオイルであるといえる。
 別の言い方をすれば、「高温になったエンジンの熱を、吸収しやすいエンジンオイルである」ことが分かる。

今回のテスト結果&独自の評価

バイクをどんな風に使うのか?よーく考えてからエンジンオイルを選ぼう!

▲150℃まで熱した「鉱物油」には、わずかながら、正体不明の“カス”が発生。
 上記のテスト結果を見て、「やっぱりエンジンオイルは、高性能な100%化学合成油しかない!」と思った人もいるはず。
 しかし、仮に街乗りユースが中心ならば、高額な「100%化学合成油」を使わなくても、「部分合成油」や「鉱物油」で十分性能を発揮してくれるはず。

 ただ、レースや峠走行など、高回転を長時間多用するのであれば、高性能なレーシングスペックの「100%化学合成油」を使用したい。
 なぜなら、「鉱物油」や「部分合成油」では、高温になったエンジンオイルの油膜が保てず、エンジンの焼き付き等のトラブルを招く可能性があるからだ。

総括

 上記のテストは、かなり強引な条件を作り出して実施したテストであり、あくまでも机上の理論。参考程度に捉えていただきたい。
 エンジンオイルの特性は、各オイルメーカーや種類によって、微妙に異なるからだ。
 自分に合ったエンジンオイルを見つける近道は、バイクの用途に合致するエンジンオイルを、実際に乗ってみて、試してみること。

 いろんな種類のエンジンオイルを試しているうちに、それぞれのオイルの特徴、長所、短所などが分かってくる。
 これもエンジンオイル選びの醍醐味といえよう。

■まめ知識/エンジンオイルの交換時期■
オイルメーカーの「WAKOS(和光ケミカル)」によると、バイクのエンジンオイルの交換は、走行距離2000km~3000kmが妥当としている。ただし長期間放置したバイクは、エンジンオイルが酸化してしまうため、たとえ交換後の走行距離が短くても要交換となる。
エンジンオイルをマメに交換するすことで、「エンジンが持つ性能をフルに引き出せる」「エンジンの寿命が延びる」等のメリットが生まれる。

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