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〈試乗記:プジョー508〉斬新かつ大胆な挑戦!

  • 2019/10/26
  • MotorFan編集部
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508GT HDi。サルーンながら4ドア+独立トランクではなく、5ドアハッチバック。それでいてサッシュレスドアを採用するこの流麗なスタイリング。

これまでの508とはまったく異なる新型508。低いルーフに象徴される、サルーンらしからぬ精悍なスタイリング……。果たしてその真意は、どこにあるのか。答えを探すべく、旅に出てみよう。BMW3シリーズ、メルセデス・ベンツCクラス、ボルボS60といった強力なライバルに対する、プジョー流の回答がここにあったのだ。

TEXT●高平高輝(TAKAHIRA Koki)
PHOTO●花村英典(HANAMURA Hidenori)/中野幸次(NAKANO Koji)

本記事は2019年9月発売の「プジョー508のすべて」に掲載されたものを転載したものです。

508GT HDi。タイヤは235/45ZR18という、大径の扁平タイヤを標準で装着。高いグリップ性能をもたらしながらも、その乗り心地は極めてソフトでもある。

思い切った変身

 個性的といわれるフランス車の中にあって、かつてのプジョーは派手ではないがエレガントなピニンファリーナ・デザインをまとった快適で実用的なモデルと評価されていた。昔のヒット作である205ハッチバックや405セダンなどを思い出しても、いたずらに強い自己主張をしないのがプジョーの美点と考えていたのだが、どうも世の中では最近のモデルはちょっと地味というか平凡に過ぎるとみなされていたらしい。

 その反省からか、新世代SUVの3008あたりからはピシリと鋭い筋を通してきたが、フラッグシップたる508も当たり前のセダンの姿ではアピールが足りないとして、2代目ではハッチゲートを持つファストバックスタイルに変身を遂げた。ライバルのルノーや同門のシトロエンは普通のセダンではないユニークなフラッグシップモデルを持っていたが、真っ当なセダンを得意としてきたプジョーにとっては大胆な挑戦だ。

 新型508はまずセダンがこの3月に発表され、ステーションワゴン版のSWが6月に追加された。日本仕様はそれぞれ3車種、1.6ℓ4気筒ガソリン直噴ターボを積むベーシックなアリュールと装備が充実したGTライン、そして2ℓ4気筒直噴ディーゼルターボを積むGTブルーHDiである。セダン・アリュールの車両価格は417万円、GTラインは459万円、GTは492万円、またSWの価格はセダンの25万円高のそれぞれ442/484/517万円だが、後述する装備の充実度を考えるとかなり魅力的な価格設定である。

 アリュールを除いて、ナッパレザーシートや赤外線カメラによるナイトビジョン、シフトも自動で行なうフルパークアシスト、360度ビジョン、パノラミックサンルーフで構成されるその名も「フルパッケージ」(65万円)というパッケージオプションが用意されているが、1.6ℓ4気筒ガソリン直噴ターボを積むアリュールとGTラインも含めてADAS(先進運転支援システム)系装備は全車にスタンダード、プジョーが「アクティブサスペンション」と呼ぶ電子制御可変ダンパーも全車標準装備である。

建築的なデザインのインテリア。メーターパネルをステアリングの上から見るプジョーのiコクピット(Peugeot i-Cockpit®)がさらに独特の世界観をもたらす。

斬新だが癖のあるコクピット

 普通のセダンやサルーンという概念を一新させるとプジョー自らが発言しているように、新型508は低く流れるようなルーフラインが特徴で、4ドアハードトップ・クーペと呼んだ方がふさわしいぐらいだ(ウィンドウもサッシュレス)。とはいえ全体的なプロポーションは奇をてらったものではなくバランスが取れている。508のボディの全長×全幅×全高は4750×1860×1420㎜でホイールベースは2800㎜という数字である。407と607を統合したために、プジョーのフラッグシップとして大柄なボディを持っていた従来型508に比べて全長は一気に80㎜も短くなり(ホイールベースは15㎜短縮)、全高も35㎜低くなったいっぽう、全幅は5㎜増えている。サイズとしては明らかにDセグメントであり、これまでの方針を大転換したことがうかがえる。308などと同じく新世代プラットフォームのEMP2を採用したボディは、コンパクトになったうえにアルミ素材などを多用し、従来型に比べておよそ70㎏のダイエットに成功している。

 ただし、当たり前だが低く流れ落ちるルーフラインのせいで、後席の天井は低く、大人にとってヘッドルームはギリギリ、ガラス面積も小さいので室内はルーミーではなく、黒一色のインテリアのせいもあって実際以上に窮屈な感じがする。またリヤドア上部の鴨居が低く、乗降時には頭をぶつけないように身体をかがめる必要がある。

 その点、セダンよりやや遅れて6月に発売されたステーションワゴン版のSWは508セダンに比べて全長のみ40㎜長い寸法ながら、ルーフラインが真っ直ぐ伸びているおかげで、リヤシートのヘッドルームはセダンよりも当然余裕があり(セダンに比べておよそ40㎜拡大しているという)、乗り降りの際も鴨居に頭をぶつける心配が小さくなっている。

 スリークでスタイリッシュなエクステリア以上に独特なのは運転席まわりだ。プジョーが「i-Cockpit」と称するコクピット配置は、楕円というよりは六角形に近い小径ステアリングホイール(実測で天地30㎝、左右32㎝ほど)の上縁越しにデジタルメーターを眺めるのが特徴である。

 ドライバーはレーシングカートのように小さなステアリングホイールを抱え込むような姿勢になるが、特にステアリングのギヤレシオはクイックなわけでもなく、ロック・トゥ・ロックは3回転ちょっと回る。これだけ小径でギヤ比も速ければ一気に切り込むような操作を助長してしまうからそれも当然とはいえるが、慣れないうちはちょっと奇妙な感覚だ。デジタル表示されるメーターのグラフィックも個性的というかユニークというか、とくかく癖が強い。メーターの表示スタイルは「最小」「ドライブ」「ダイヤル」などから選択できるが、一番常識的なものを選んでもあまり見やすいものではない。ちなみに回転計は反時計回りだ。いっそのこと主要表示はヘッドアップディスプレイにしてくれた方が見やすいような気もする。

 もっとも、ドライビングポジションそのものは進行方向にきちんと正対しており、ブレーキペダルは左右どちらの足でも踏める形状だ。ただし、ペダルの位置に対してステアリングホイールがいささか遠く、何だか昔のアルファ・ロメオなどイタリアンな雰囲気がある。チルトとテレスコピックの調整代が大きいのでステアリングホイールを手前に引き出せば問題ないが、ルーフが低く、分厚いレザーシートのせいもあって、かなり寝そべったドライビングポジションを取ることになり、ドライバーの体格によっては自然なポジションを取りにくいこともあるかもしれない。私はもうだいぶ慣れてしまったが、このユニークなインストルメントパネルに違和感を抱くかどうかで、508に対する印象はかなり異なるだろう。

 視界もまた同様にちょっと癖があり、角度が付いたAピラーとドアミラー周りの死角、さらには大きく寝かされたリヤウィンドウ越しの後方視界が限られていることも要注意点である(SWのほうが若干良好)。短所というほどではないが、この種の視界に神経質な方はまず実物を確かめてほしい。

 それ以外はよく吟味されたコクピットである。「GT」と名乗るせいか(アリュールも含め)、カーボン調のトリムなどをはじめ黒一色なのはちょっと芸がないけれど、運転席周りの小物入れスペースも豊富だし、センターコンソールの下側(裏側)にはワイヤレス充電のトレイやUSBポートも備わる。かつてはカップホルダーさえ備わらなかったプジョーの面影はまったくない。もうひとつ付け加えるとカーナビはパイオニア製だが、エンジンを再始動した時にそれまで表示していたナビ画面に戻らないなど、今時ちょっと洗練度というか扱いやすさに欠ける。分かっていれば何ということもないという人もいるだろうが、この辺も独特だ。

508SW GT Blue HDi。どのモデルも同じフィーリングを味わえるようにとの設定ながら、ファストバックよりさらにソフトな印象を受ける。

強力なディーゼルと軽快なガソリン

 2021年の平均CO2排出量95g/㎞という目標に向けて、ヨーロッパ勢も電動化に邁進している、といまだに一部メディアは喧しいが、バッテリーEVだけではとても間に合わないのが現実である。マイルドハイブリッドやPHEV、内燃エンジンのさらなる進化など、あらゆる手段を用いて対処しなければ目標に近づくこともできない。VWのディーゼルゲート事件を受けて、確かに一時ほどディーゼル一辺倒ではないが、電動化を進めるのと並行して最新型ディーゼルユニットを投入しているのが現状だ。508GTの2ℓターボディーゼルも当然最新仕様で、130kW(177㎰)/3750rpmと400Nm/2000rpmを生み出す。当然コモンレール式直噴ディーゼルで可変ジオメトリーターボを採用、また酸化触媒と尿素水溶液を噴射するSCR触媒、さらにDPFを排気マニフォールド直下に隣接して設置するなど、最新世代のディーゼルユニットの定石をすべて押さえている。

 また1.6ℓターボは133kW(180㎰)/ 5500rpmと250Nm(25.5kgm)/1650rpmを発生。トランスミッションは、どちらもEAT8と称するアイシン・エィ・ダブリュ製の8速ATである。私自身も長く406やルノー・ラグーナと付き合った経験があるが、かつての仏民族系AT、プジョーでいえばAL4型4速AT(共同開発したルノーではDP0)に何らかの苦い思い出を持っている人には、にわかには信じられないような出来事ではないだろうか。AL4型はごく最近まで(2007年の初代308のデビュー当時は4速AT)使われていたが、きめ細かさとはほど遠い、ちぐはぐなシフト制御で有名(?)な4速ATだった。それが今や弟分の308にも8速ATが標準装備されているのだから、雲泥の差というか隔世の感ありなのである。

 400Nmのトルクと最新のトルコン8速ATを備えていれば、どんな場面でも余裕たっぷりに走れるのはいうまでもない。とりわけクルージングはGTの一番の得意科目で、そこからの加速も縦横無尽に逞しいレスポンスで応えてくれる( トップ100㎞/h巡航のエンジン回転数は1400rpm)。508のディーゼルターボエンジンは停止中のノイズこそ小さくないものの、走行中は静かといっていいほどで、ライバルのディーゼルに比べても滑らかで洗練された印象だ。一方1.6ℓターボはそこまでのトルクの力強さはないが、その代わりにシャープにストレスなくトップエンドまで吹け上がる軽やかさが特長、しかもベーシックなアリュールはセダン/SWともに、フルパッケージ・オプションを備えたGTよりも車重が160㎏も軽く(前軸荷重だけで100㎏あまり少ない)、その分明らかに動き出しもハンドリングも軽快だ。大トルクによるイージーなクルージングと良好な燃費を別にすれば1.6ℓターボモデルも大いに魅力的なのである。

508SW GT HDi。ステーション・ワゴンを意味するSW。絶対的な荷室容量もさることながら、生活感のなさも大きな魅力だ。

遠くまで行きたくなる

 低く構えたスリークなスタイルや小さなステアリングホイールからは、いかにもピッピッとノーズが鋭く向きを変えるスポーティなハンドリングを想像してしまうが、実は穏やかにリニアに反応するのがプジョーの美点。フロントタイヤの接地感を意識しながら走ると、正確にスムーズに狙ったラインを辿ることができる。スポーティなハンドリングとは、何も鋭いステアリングレスポンスのことを意味するのではない。リニアにドライバーの意図に忠実に向きを変え、切る、戻すといった操作に過不足ない正確な反応を返すというプジョーの伝統は忠実に受け継がれている。

 乗り心地もまったく不満なし。どのモードを選んでもとげとげしいダイレクトなショックは巧妙に抑えられており、フラット感と滑らかさに加えて静かなおかげでリラックスして走ることができる。これはSWでも変わらず、乗り心地といい、過不足ないステアリングレスポンスといい、真っ直ぐ走ることにかけては、ということは疲れ知らずに距離をこなすことにかけてはやはりプジョーには一日の長がある。ちなみにプジョーはダンパーを内製していたことで知られていたが、今では自製しておらず、508の可変ダンパーも以前から取引のあったKYB(旧カヤバ)製だという。

 高速道路であれば航続距離は1000㎞に届くほどの足の長さと、力強いレスポンスと扱いやすさを備えるディーゼルモデルは特に長距離を走る機会が多いドライバーには打って付けと思われるが、さりげなくサラリと気持ち良く走るガソリンモデルの軽やかさ、清々しさもまた魅力的で甲乙つけがたい。どちらを選んでも、どこまでも走って行きたくなるグランドツアラーとしての優れた資質を備えているのは間違いない。ちょっと狭い後席と奇妙なコクピットを差し引いたとしても、快適で実用的というプジョーの真髄にはいささかもブレていないのである。

リヤビューを観察して見ると、ファストバックもSWも、同様の横一文字のリヤコンビとガーニッシュの造形が用いられている。写真はベースモデルのSWアリュール。
*パノラミックサンルーフ装着車

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