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クルマそのものはヴェゼルツーリングモデューロXの圧勝だが80万円弱の価格差を許容できるかが鍵 「まだ上があったのかよ」と驚かせるトヨタC-HR S-T“GRスポーツ”のシャシー性能。だがホンダ・ヴェゼルツーリングモデューロXはその上を行く【ワークスチューン ワインディング試乗インプレ3本勝負】

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限界領域に近づいても絶大な安心感をもたらしてくれるホンダ・ヴェゼルツーリングモデューロX

 では、直接のライバルとなる、ヴェゼルツーリングモデューロXの走りはどうだったのか。まずシャシー性能に関しては、極めて高いレベルにあるC-HR S-T“GRスポーツ”よりも「まだ上があったのかよ」と感嘆させる、まさに驚愕の仕上がりだった。

 その差を決定的に感じさせるのはやはり、C-HR S-T“GRスポーツ”では不安定になりがちだった領域だろう。大きな凹凸を勢いよく乗り越えても車体の揺れがすぐに収束し、サスペンションはバタつく素振りすら見せない。また下り坂で強くブレーキングしても、リヤがふらつくことはなく、直進状態を保ってくれる。

 だから、ヴェゼルツーリングモデューロXなら、どんな状況にあっても全幅の信頼を置いて走りを楽しむことができる。しかも、コーナーのRやカントに沿ってクルマが自然に曲がっていくかのような特性が備わっており、C-HR S-T“GRスポーツ”以上のオンザレール感覚を味わえるのだ。

 ではその分、同乗者は不快な思いをするかと言えばさにあらず。前後席、また速度域を問わず、路面の凹凸に対し若干の突き上げと跳ねは出るものの角は丸められており、車体の動きも素早く収まるため、頭の動きや視線のブレは少ない。また粗粒路でもロードノイズやフロアの振動が少なく、後席でも快適に過ごすことができた。

リヤシートも表皮はフロントと共通のラックススエード&プライムスムース
形状・クッションともホールド性が強化された専用フロントセミバケットシート

 しかもヴェゼルツーリングモデューロXの場合、フロントには専用のセミバケットシートを装着。後席はベース車と同様にセンタータンクレイアウトの恩恵で前後・上下方向とも空間にゆとりがある。裏を返せば、C-HR S-T“GRスポーツ”はそうした点を明確に割り切っており視界も悪いため、窮屈さが常につきまとう。ドライバーにも同乗者にも優しいのは、明らかにヴェゼルツーリングモデューロXの方だ。

 では、そんなヴェゼルツーリングモデューロXのチューニングメニューとは何か。主な変更点のみ羅列すれば、専用形状の前後バンパーおよびアルミホイール、ディーラーオプションと共通の大型テールゲートスポイラー、専用セッティングのダンパー・スプリング、前述の専用フロントセミバケットシートと室内のラックススエード&プライムスムース表皮、ということになる。

 しかし、ヴェゼルに限らずモデューロX各車の場合、開発を担当するホンダアクセスが実走テストを幾度となく重ね、車両全体のトータルバランスを突き詰めた結果、市販化にGOサインを出されたものだけが、世に送り出されている。実際にヴェゼルモデューロXも、発売されたのは2019年11月。ヴェゼルのデビューから丸6年、2018年2月のマイナーチェンジから2年弱、ターボ仕様のL15B型1.5L直4エンジンを搭載する「ツーリング」の追加からも10ヵ月が経過してからのことだった。

下部に2本のフィンを追加しその間を盛り上げるなど専用形状が与えられたフロントロアガーニッシュ
リヤのロアガーニッシュもフィンを1本追加した専用形状。低速域でも制動時などに効果を発揮する

 その中でも要となっているのは、ホンダアクセスが“実効空力”と呼ぶ、主にボディ下部の空力処理だろう。

“実効空力”とは、中高速域で四輪への垂直荷重を空力によって増大させてグリップ限界を高め、コーナリングパワーも増大させることで、ステアリングレスポンスと外乱に対する収斂性を同時にアップ。またロールやピッチングを抑え、限界域での荷重の抜けを起こりにくくすることで、矢のようにまっすぐ走る直進安定性と、よりリニアなハンドリングを実現する…というのが基本的な考え方。

 ヴェゼルツーリングモデューロXの場合、具体的にはベース車両に装着されているフロントバンパー下部左右の大型整流板を除去する一方、ロアガーニッシュ下部中央に段差を設け、さらに2本のフィンを追加。リヤバンパーも底面形状を変更しつつ、ロアガーニッシュ中央にフィンを1本追加している。

 またサスペンションは、四輪のタイヤ全てが路面を捉え続け、そのポテンシャルを最大限発揮するセッティングを追求。そのためベース車に装着されている、ボディのたわみや微振動を抑える「パフォーマンスダンパー」は敢えて外されている。

軽さと剛性のバランスを追求した専用アルミホイール。タイヤはベース車にも採用されている225/50R18 95Vのミシュラン・プライマシー3
 アルミホイールはドレスアップ効果や絶対的な軽さ・剛性のみならず、それらのバランスを重視したものとなっている。新開発のフロントセミバケットシートもまた、実走テストを通じてベストな形状とクッションの硬度を導き出したものだ。

L15B型1.5L直4ターボエンジン
 最後にC-HRと同様、ベース車の「ツーリング」と共通のパワートレインについても触れておきたい。ターボ仕様のL15B型1.5L直4エンジンはいわゆるダウンサイジングユニットで、低中回転域のトルクも充分ながら、ホンダのエンジンらしく高回転域でのパワーの伸びと甲高いサウンドも兼ね備えている。

ヴェゼルツーリングモデューロXのインテリア。Aピラーの傾斜は強めながら視界は広く空間にも余裕がある

 これに組み合わされるトランスミッションは残念ながらCVTのみとなるが、パドルシフトを駆使してMTモードで走行すれば、ワインディングでも意のままに加減速をコントロールできるため、C-HR S-T“GRスポーツ”の8NR-FTS+6速MTよりもむしろ楽しく好感触だった。

 以上のようにこの勝負、クルマそのものはヴェゼルツーリングモデューロXの圧勝となるのだが、唯一C-HR S-T“GRスポーツ”に完敗しているポイントがある。それは、価格だ。

 ヴェゼルツーリングモデューロXは352万8800円、C-HR S-T“GRスポーツ”は273万2000円。実に80万円弱もの開きがある。

 もっともベース車自体、ヴェゼルツーリングは295万6800円、C-HR S-Tは236万7000円と、60万円弱の差があるのだが、いずれにせよ容易には無視できない価格差であることに変わりはない。

 しかしながら、改めてクルマそのものの仕上がりを振り返ると、C-HR S-Tにはベース車の時点で我慢を強いられる点が余りに多く、絶対的な性能と“GRスポーツ”専用チューニングによる走りの伸びしろも、ヴェゼルツーリングモデューロXほどは大きくない。こうした違いは、長く所有し乗るほどに、オーナーの心身へストレスあるいは満足感として蓄積されていくことだろう。

 筆者ならば、80万円弱の価格差を受け入れてでも、ヴェゼルツーリングモデューロXを選ぶ。それが、最終的な結論だ。

ホンダ・ヴェゼルツーリングモデューロX(左)、トヨタC-HR S-T“GRスポーツ”(右)

■ホンダ・ヴェゼルツーリングモデューロXホンダセンシング
全長×全幅×全高:4335×1790×1605mm
ホイールベース:2610mm
車両重量:1360kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー
総排気量:1496cc
最高出力:127kW(172ps)/5500rpm
最大トルク:220Nm/1700-5500rpm
トランスミッション:CVT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:225/50R18
乗車定員:5名
WLTCモード燃費:───km/L
市街地モード燃費:───km/L
郊外モード燃費:───km/L
高速道路モード燃費:───km/L
車両価格:352万8800円

■トヨタC-HR S-T“GRスポーツ”
全長×全幅×全高:4390×1795×1550mm
ホイールベース:2640mm
車両重量:1400kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー
総排気量:1196cc
最高出力:85kW(116ps)/5200-5600rpm
最大トルク:185Nm/1500-4000rpm
トランスミッション:6速MT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:225/45R19
乗車定員:5名
WLTCモード燃費:15.4km/L
市街地モード燃費:12.2km/L
郊外モード燃費:15.6km/L
高速道路モード燃費:17.2km/L
車両価格:273万2000円

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