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新型トヨタ・ハリアー・デザイン考1 日本発の誇りを再びカタチに

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初代からのデザインテイストが継承される新型ハリアー。アッパーグリルとメッキのガーニッシュ間に設けられたインテークも、ハリアーのアイデンティティのひとつ。

ハリアーといえば、世界で最初のクロスオーバーSUVともいわれる。新型のその誇りのもとに、よりハリアーらしくそしてジャパン・プライドを色濃く掲げて登場したように見える。そこに隠されたハリアーのDNAとは何なのか、デザイン&コンセプトの視点から追ってみたい。

初代ハリアーの誇りをカタチに

 1997年のハリアーの登場に続き、これまで実に多種多様なクロスオーバーSUVが登場してきた。ハリアーもこの新型が4代目となるが、そのデザインテイストにブレはない。SUVという下肢を持ちながら、洗練された上質なセダン&クーペの味わい。俊敏であり快適、そして繊細という、およそSUVからは想像できない、運動性能と上質さを併せ持つ。
 かつてトヨタは20世紀末に、その次の世紀の新たなプロダクトを模索していた。その1台がプリウスであり、実はもう1台がこのハリアーの企画だったという。そして初代プリウス、初代ハリアーともに1997年の発表と、21世紀に間に合う形での登場となった。

1997年登場の初代ハリアー。次世代を担う新たなプロダクトとして、プリウスとともに開発された。

 渾身のプロダクトにあって、初代ハリアーが纏うデザインも深く考えられたものだった。もっとも不思議に感じられるのが、ラジエーターグリルの下に設けられたインテーク。この要素は、以降のハリアーでも継承されるアイコン的存在ともなるが、その隣のヘッドライトと分割されたポジション&ウインカー・ランプと併せてハリアーの立ち位置を示す重要なデザインとなっている。やはりSUVのフロントフェイスは、一般的なセダンよりも縦方向に長さをもってしまう。そのなかにそのままラジエーターグリルとヘッドライトを取り込んでしまうと、冗長な顔つきとなりセダンライクの精悍な印象を得ることは難しい。どこかにトラック的な印象が出てしまうのだ。そのため、ヘッドライトとグリルを細くし、その下に別体のインテークとコンビランプを配置した。

初代ハリアーはグリル一体型のボンネットを採用。しかしその下にもインテークが……。これがハリアーデザインの成功の鍵でもあった。
ボディ下にはストーンガードの樹脂製クラッディングを採用。これは70年代末にメルセデス・ベンツSクラスが採用し、長らく続いていたトレンドでもあったが、レクサスLSやESも採用していた。

 一般的にはありえない造形なのだが、このアイデアこそがハリアーを成功に導いたともいえるだろう。また、ボディサイド下部には一面にクラッディングと呼ばれる樹脂製のストーンガードを装備した。これは当時のトレンドでもあったのだが、レクサスLSやESなども採用したレクサスらしさの象徴でもあった。またデザイン的にもサイドビューを細く長く見せることにも貢献している。
 同年の97年、ハリアーの前にいすゞからも個性的なSUVであるビークロスが登場していた。しかしビークロスは販売規模だけの話でなく、ある理由からクロスオーバーの主流となり得ず、また先駆としての認識も低いものとなった。

FFプラットフォームを用い異なる高級車を生む方程式を構築

 ハリアーのもうひとつの価値は、カムリのプラットフォームを利用したことだった。横置きFFレイアウトであることは、「本格4WD」のイメージとは合致しないが、むしろ乗用車ベースであったことがSUVとは思えない快適な乗り心地や運動性能を見出すこととなった。当然ながら、94年に発表され大好評を得たRAV4からのアイデアともいえるが、それをスペシャルティSUVに用いるという発想が見事に整合した。これが、ハイラックスサーフやランクルのラダーフレームを使ったものだったら、全く別物になったに違いない。
 今までとはまったく違うクルマ。その思いがデザインに宿った。ハリアーは新たなカテゴリーを生んだということ以上に、既存の乗用車用プラットフォームでまったく異なるモデルを構築することに成功したのである。それ以降、クロスオーバーSUVは世界的に大きな人気となっていくのだが、既存のプラットフォーム&モノコックボディで異なる高付加価値を与えるという“新たなビジネスモデルを作り上げた”という点において、多くの自動車メーカーが追随したがクロスオーバーの全盛に繋がったともいえる。
 余談ながら、初代ハリアーは開発初期段階では、アリストをベースとしていたが、さまざまな企業メリットも考えた上でカムリをベースとすることが決まったという。その生産数が多く、軽量&ローコストのFFプラットフォームが高級SUVを生み出せるという事実も、クロスオーバーモデルが拡大への大きなヒントとなったはずだ。
 
 またハリアーのプロダクトは、ほとんどハッジのみの変更でレクサスRXとして販売され、北米市場を中心に大好評を得ることになった。新しい価値を生み出すことで、レクサスの新たな懐の深さを見せつけたのである。

こちら初代ハリアーの数ヶ月前に発表されたいすゞビークロス。こちもクロスオーバー先駆と呼ばれるところだが、量産化されるに当たって決定的な違いがあった。
 対するビークロスについてだが、93年に発表されたコンセプトカー“ヴィークロス”が示すものは、ハリアーと同じ考え方だった。ベースとなっていたのは、なんとFFレイアウトのジェミニ。つまり、既存の乗用車プラットフォームを活かして高付加価値のモデルを誕生させるという発想は、すでにいすゞにもあった。しかし、自社モデルのジェミニの生産が中止となり、ビークロスはビッグホーンやミューなどのクロカン4WDのラダーフレームをベースに開発せざるを得なくなった。
 ビークロスはそれ自体、個性的なデザインを採用し注目されたが、パッケージ、メカニズムは旧来同様の着せ替えモデル的なものとなってしまった。
 また海外ではハリアー発表と同年の97年にメルセデス・ベンツよりMクラスが発表されている。こちらは軍用&超ヘビーデューティのGクラスしか持たないメルセデスにとって、北米対策ともいえるライトSUVを開発したもの。生産工場もメルセデス初の北米工場を新設した。
 実に快適な乗り味を示しながらもそのボディ下にはラダーフレームを持ち、旧来より北米で要求されるSUVとしての堅牢さへのニーズにも応えたものだった。北米の特に地方で求められるSUV(北米でいうトラック)は、キャンピングカーの牽引なども必須な上に、手荒く扱われてもまったく壊れないヘビーデューティさが必要というのが定説だった。
 この事実だけでは、トヨタとメルセデスは異なった道を選んだようにも見える。しかし、北米でのトヨタは以前よりハイラックスが大人気を博し、ランドクルーザーやタコマも高い人気を得ていた。その後、00年以降にビッグサイズのクロカン系SUVも投入する予定があったことから、北米のトラック市場ではメルセデスに比較して法外なほどの盤石な体制が整っていた。そのなかで、さらに異なる市場開拓に投入されたのが乗用車ベースのハリアーだったのだ。 
 このように、トヨタにとってプリウスとハリアーは21世紀のトレンドとなりうるモデルとして、確実に……というより驚異的なまでにその成果をあげたといえる。
 そして登場したのが4代目ハリアー。その造形には、こうした初代からのサクセスストーリーが、そこはかとなく香っているように思う。デザイン考2では、新型ハリアーのデザインについてじっくりと見ていこう。

ハリアーらしさとして、歴代モデルへの敬意と愛情が新型のデザインに表現されている。その詳細についてはデザイン考2でレポートして行きたい。

新型トヨタ・ハリアー・デザイン考2 挑戦するカタチもまたハリアーらしさ

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