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あのトヨタ2000GTが発売2年前にお披露目! / 1965年 第12回・東京モーターショー 【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】

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1965年の東京モーターショーに登場したトヨタ2000GTプロトタイプ。ディテールは市販車とは異なり、大きくラウンドするフロントウインドウのワイパーは3本式となっている。

東京モーターショーには常にハイライトが存在する。東京オリンピックの翌年の1965年。そこにも大きなハイライトがあった。そこで登場したのがトヨタ2000GTのプロトタイプだ。そして正式発売の前年の66年には第3回日本グランプリに参戦し3位を獲得、さらにスピードトライアルにも挑戦し3つの世界記録を樹立。そして67年5月に発売。その1ヶ月後に映画「007は二度死ぬ」で、ワンオフのオープン仕様2000GTがスクリーンを席巻することになる。こうした劇的なプロモーションも話題となったのだ。

解説:荒川 健(カーデザイナー)

日本車の王者は何といってもトヨタ2000GT

ニッポンのカーデザイン史上、燦然と輝くKING of KINGSは、やはりTOYOTA 2000GTだ。

登場したのは東京オリンピックが終わったばかり、新幹線が東京、新大阪間を走り高速道路が都心を一周、生活が急に豊かになりだした。
正式にTOKYO MOTOR SHOWの名称になって2年目の1965年デビュー、当初からジャガーEタイプに似ているなどと言われたが、サイドビューのシルエットがロングノーズというだけの大雑把な評論で、当時高校1年生の私は無責任な記事だと憤慨した記憶がある。

特にフロントのバンパーを巧みにカモフラージュしたデザイン処理は、当時世界で最も斬新なアイデアだった。さらにリヤエンドもEタイプのように薄くなっていない。ちゃんと空気力学的に考えられたコーダ・トロンカ(バッサリ切り落とした形状)風のデザインで、力強かった。

GTとしての徹底したスタイリングが魅力。その美しさは、今も失われない。

目いっぱい豊かに張り出させたサイドの断面は、それまでの国産車の常識を大きく超えた美しさを誇っていた。但し、後年自分が多くの量産車を手掛け、世界の名車を見る機会が増えると、カーデザイン・テクニック上唯一の欠点が見えてしまった。それはプランビュー(上から見下ろした形状)と正面から見たサイドの断面形状が、どちらも目いっぱい頑張ってしまったため、ホイールアーチ(タイヤの切り欠き)の形状が歪んで見えてしまっているのだ。
真横から見ると実に綺麗なアーチを描いているのだが、斜め前や、斜め後方から見ると、あちこち異なる方向を向いているように見える。
しかし、そうした点が返ってデザインに迫力を持たせる結果につながっていることも事実で、暴れたデザインを抑え込むと、どんどん普通になる。だから今でも新鮮に感じられるのかもしれない。

カーデザイン用語で、Day light opening(DLO)という窓のラインを指すワードがあるが、このクルマはこれが極めて美しいデザインの代表格でもある。特にフロントウインドウからサイド側のドアガラスに流れこむラインの絶妙な折り方(面が異なるから1本の線で繋ぐのは不可能)は、この車に独特の緊張感と品格、強さを与えている。それにしても、デザイン優先の結果? Aピラー(フロントピラー:カーデザイン用語で、ルーフを支える柱を前から順にA,B,Cと呼ぶ)の細さに驚かされる。これも繊細な美の構築に大きく貢献しているのではないだろうか。

形だけでなくメカニズムも秀逸な仕上がり

前後サスペンション&エンジン、そして駆動系を支える独立したベースフレームを持つ。

技術面に少し触れると、量産スポーツカーの中でも驚異的な車高の低さを誇っているが、前後とも足回りはレーシングカーと同じWウイッシュボーンならではの特徴が生かされているからだ。しかもエクステリアデザインは妥協することなくクォーターウインドウ(ドアの後ろの小窓)からはリヤのコイルサスペンションタワーの出っ張りが丸見えという大胆な設計であった。こうしたあたりも品の良いスタイルながらも、プロトタイプレーサー的な割り切った処理がマニアを熱狂させたのである。

ジャガーEタイプにもひけを取らない、充実のインテリア。

インテリアについても、述べたいことが沢山ある。まずは当時のマセラティをも凌ぐ豪華で上品なインパネ回りのデザインが凄い。ステアリングもしかり、ヤマハのピアノやギターなど楽器で培ってきた木工技術がフルに生かされ、工芸品のレベルを実現している。メーターベゼルの太さや断面形状、配置のバランスの良さも秀逸で、とても当時の日本人がデザインしたとは思えない、細部まで行き届いたセンスの良さが光っている。シートデザインも、当時のスポーツタイプ車にありがちな演出過剰なところが微塵も無い潔いデザインで大人っぽい印象が好ましい。

インテリアで最後に付け加えたいのは、サイドブレーキがこれまたかっこよすぎなのだ! シートが低くドライブシャフトトンネルが相対的に高いため、ドライバーがレバーを上に引っ張り上げる動作が困難なため、仕方なくラチェットギアを介し水平に手前に引き寄せるタイプを選択するしかなかった。当時、フロントシートがベンチタイプのコラムシフト車や商用車で普及していたが操作性が良くなかった。しかしこれを美しいクロームメッキのバフ磨きで仕上げた通称ステッキレバーといわれる独特の高級感あふれるデザインにしたため、かえってプレミアム感が増し、男の趣味性を刺激することとなった。実に渋い。

Illustrated by Takashi JUFUKU




もっと書きたいところだが文字数が増えすぎてしまった。とりあえずTOYOTA 2000GTはここまでとしたい。とにかく最高の関係者がめぐり逢い最高の一台が完成した。そうした方々に心から敬意を表し、パソコンを閉めたい。


おまけのまめ知識 by Ken

ところでカーデザイナーになってから気になっていたのが、このクルマはAピラーとルーフを支える骨格の強度は大丈夫? といった点でした。
現在の日本では国土交通省が厳格な保安基準を設けています。しかし1965年頃は各国が定めた、おおまかなガイドライン(例えば自動車の車体は堅牢な構造でなければならない等々)はありましたが、ほとんど自主判断の設計に任されていたといっても過言ではありませんでした。それまで1951年からの道路運送車両法が大きく改訂されたのが1967年、ここで安全性に対する意識が高まりました。そんな時代直前に登場したのがTOYOTA 2000GT。同時代までの車には窓が大きくピラーが細いものが少なくありませんが、現代では絶対不可能なカタチ、奇跡といっても過言ではありませんね!

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