トヨタ・ヤリスクロス | ヒットするには理由がある。開発コンセプト、サイズ、走り、パワートレーン……大ヒットBセグSUVの開発の舞台裏を訊く
- 2020/09/21
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MotorFan編集部 鈴木慎一
MF:Bセグのクロスオーバーの最初のモデルってなんですか?
「最初に出たのは、日産さんのジュークです。2010年だったと思います。ジュークの後、欧州でルノー・キャプチャー、プジョー2008が出ました。当時はVWはBセグSUVは持っていなくて、フォードはエコスポーツです。エコスポーツは欧州ではモデルチェンをしていていまはピューマというモデルになっています。エコスポーツって、どちらというとライズのような格好をしていましたが、ピューマはヤリスクロスのようなクロスオーバーな感じですね。ジュークを初めて見たときは、個人的には"そうか、そうきたか"という感じはしましたね。VWが去年T-Crossを出して、ずっと我々も欧州の競合勢がどんどん出てくるぞというのは知っていましたし、欧州のB-SUVの市場がどんどん大きくなっていることもわかっていました。ですから、この新しいGA-Bプラットフォームを開発する最初から、これでSUVを作るというのを企画に入れてプラットフォームを開発しました。18インチの大きなタイヤも履かせることもGA-Bプラットフォームを開発する際に決めていました。だいたい車重をこのくらいに収めて、だいたいの全長、全幅も決めて、コンポーネントはヤリスといかに共通化できるかを考えて開発をしていました。GA-BプラットフォームはSUVを作ることありきで開発しています」
MF:最初からSUVを作る気があるかどうかで、プラットフォームの開発は全然違うものですか?
「全然違います。あとから大きいタイヤ、高い車高にすると妥協しなくてはいけない部分がたくさん出てきてしまいます。強度が足りない鉄板貼って補強しようとか、非効率な補強の仕方にならざるを得ません。そうすると重量も重くなってしまいますし、当然コストもかかってきます。TNGAすべて言えることですが、まず一括企画する。このプラットフォームではこういうクルマを作る。そういった開発手法を採り入れています。エンジンの排気量やスペックを決めるときも、あらかじめこういうSUV作るので、このくらいの出力がないと走らないですよとか、急な坂道登れませんよ、とかそういったところも決めてそこからエンジンの開発にかかるというようなことです」
MF:パワートレーンで言えば、欧州のライバルはみんなターボエンジンですよね。1.2ℓ、1.0ℓのダインサイジング過給エンジン。ライバルのターボにあたるのが、ヤリスクロスの場合はハイブリッドということですね。
「我々のハイブリッドシステムはNAエンジンの方がよりメリットが出せるんです。なので、最初からNAでいこうと考えていました」
MF:欧州勢のBセグSUVはほぼFFです。AWDを設定しているメーカーは少ないですね。
「そうですね。キャプチャーも2008もT-クロスもAWDの設定はないです」
MF:でもトヨタはAWDをやる、と?
「そうですね。SUVなのでAWDは出したい、と」
MF:それはマーケットとしても喜んでくれる、と?
「特にハイブリッドのAWDがユニークポイントになります。欧州の普通のダウンサイジングターボより燃費がよくてAWDっていうところが武器になると思っています。欧州の販売はこれからなので、受け入れられ方はまだわからないですが。やはり欧州でも降雪地帯もありますし、滑りやすいところもあります。当然、安全は大事なファクターですので、アピール、ユニークセリングポイントになるのではないかと思っています。日本国内もAWDは必須です」
MF:SUVなので、ボンネットを伸ばしてドライバー席からノーズがちゃんと見えるようにってデザインしたのですか?
「いろんな国へいって『SUVってどんなイメージですかっていう調査をしました。そうすると『ボンネットが分厚くないとSUVに見えない』『ボンネットが分厚くて守られている感じがする』ということだったんです。
Q:ヤリスとの顔(フロントフェイス)を作り分けっているのはどう考えたのですか?
「見える部品でヤリスと共通の部品はアンテナとドアハンドルくらいしかありません。デザイナーも違いますし。デザインはまったく別のチームでやりました。少なくとも外板は。内装は、少なくともこの部分は共通で、ほかは分けようねっていうのは最初に決めて開発しました。たとえばインパネアッパーは揃えましょう、でもインパネロワーは分けましょう、とか。ドアトリムは基本的に一緒なのですが、ベルトラインの高さ違うので、そこだけ作り替えましょうとかは最初に決めています。
MF:名前はヤリスクロスじゃなくてはいけなかったんですか?
「名前は我々エンジニアが決めないので。『あ、そう決まったのね(笑)』という感じです。
MF:ルーフの形状が特徴的ですが? 機能的には?
「薄板にして強度を確保してかつ前面投影面積をミニマムにするには、ということです。ドライバーの頭部がくるところは膨らんで、そうでないところは凹ませてみたいな工夫をしています。補強がまっすぐでないのは、真っ直ぐにするとちょっとかっこ悪いので、こうしました」
MF:欧州では高速走行のシーンも多いですよね。アウトバーンもオートルートもあるし。高速性能はどの速度域まで見ているのですか?
「ハイブリッドの最高速度が170km/h、ガソリン仕様は180km/hですから、そこまではちゃんと見ています」
MF:じつは昨年RAV4が国内登場したときに、『アメリカでは大ヒットだけど、こんなに大きくてごついRAV4が日本でそんなに売れるはずがない』と思ってのですが、結果的に大ヒットしました。でも、今日、横浜の街をヤリスクロスで走ったら、『やっぱりこのサイズがちょうどいい』と感じました。
「じつは、初代RAV4(5ドアモデル 全長4115mm×全幅1760mmGタイプ)とヤリスクロスはボディサイズ(全長×全幅)がほぼ同じなんですよ。偶然ですが」
MF:RAVがあれだけ売れているんですから、ヤリスクロスも大ヒットしそうですね。そういう意味では4500台/月というのは控えめな販売目標なのではないですか?
「目標はモデルライフを通じての平均ですからね。9月頭で2万台の注文をいただいています」
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