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航空自衛隊:国産初のジェット輸送機「C-1」丸みの強い外観はユーモラスだが、飛行する姿は俊敏

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航空自衛隊C-1輸送機。水平尾翼は垂直尾翼の上部に取り付けられ、高い迎角でも舵の効き方を確保するT字配置の尾翼が外観上の特徴。写真/航空自衛隊

日本独自開発のジェット輸送機C-1。運用を始めてすでに約50年に近づいている。後継のC-2輸送機への入れ替えが進むC-1。その姿を引退までに目に焼き付けておきたい。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

一般的な荷物はパレット積載方式で機内に積み込み、その貨物を後部ランプドアを開けて空中投下することも可能。写真/航空自衛隊

C-1輸送機は戦後の日本が独自に開発した戦術輸送機だ。C-1には「初の国産ジェット輸送機」というキャッチフレーズが当初から添えられてきた印象が強い。開発は、国産レシプロエンジン輸送機として初となるYS-11を生み出した日本航空機製造が主力となって1966年に始まった。日本航空機製造はC-1の設計と試作を担当し、機体の製作は日本国内の航空機メーカー複数社が関わり、川崎重工が主契約社となった。開発は順調に進んだようで、1970年には第1号機が初飛行に成功した。

当時、高度経済成長期の日本で『戦後初の国産〜』云々という言葉で表される製造物や社会状況は独特の熱を持っていたように筆者は記憶している。
新幹線ひかり号
東京タワー
首都高速
東京オリンピック
といった物事だ。あの頃の日本は強力で、航空業界もまた「戦後初の国産ジェット輸送機」を作り出そうとする熱さがあったと思う。

そういう時代にC-1は飛び始めた。

C-1は機体後部に大型扉を備えている。この大きなスロープ状のランプドアを降ろせば車両や自走式野砲などをそのまま積み込むことができる。一般的な荷物はパレット積載方式で機内に積み込み、その貨物の空中投下も可能だ。こうした設計や機能は開発当時の輸送機の世界的な手法であり、これを採り入れたC-1は貨物の搭載・荷役作業を効率的にした。また、カーゴスペースは傷病者空輸や災害派遣への対応力もあり、担架を取り付けるセッティングを施すと患者36人を空輸可能。人員輸送力は通常で60人、完全武装の空挺隊員の場合は45人を収容可能だ。

フラップ(高揚力装置)には4段式の「ファウラーフラップ」という高性能な装備を採用、エンジンにはスラストリバーサー(逆噴射装置)を装着し、短距離離着陸(STOL)性能を持っている。写真/航空自衛隊

短距離離着陸(STOL)性能を持たせるため、フラップ(高揚力装置)は4段式の「ファウラーフラップ」という高性能な装備を採用。エンジンにはスラストリバーサー(逆噴射装置)が付いている。STOL性を持たせることで日本国内のほぼすべての航空基地や空港で使えるようになったという。

降着性能も幅広い状況が想定され、主脚の車輪は左右合わせて8輪にもなる。これはたとえば滑走路や誘導路などの舗装が傷んでいる場合や、そもそも舗装の薄い施設の場合でも運用できるよう、タイヤの接地圧を下げる(分散させる)ことを想定したものだという。この主脚と車輪を収めるスペースは胴体内に納めるのではなく、胴体外部の左右に張り出したバルジを設け、ここに収納する方式とした。これで機体内部の貨物室は容積をフルに使えることになり、積載量の増大や荷役作業の効率化がさらに図られている。

機体後部の左右には飛行中でも開閉可能なドアが設置されている。陸上自衛隊第1空挺団はこのドアを使ってパラシュートによる空挺降下を行なう。多くの隊員を一度に空挺降下させることができるわけだ。

C-1からパラシュート降下する陸上自衛隊第1空挺団。胴体中央部、右のドアから飛び出している。降下は左右のドアから同時に行なうこともできる。

ちなみに陸自第1空挺団はその本拠地の千葉県習志野駐屯地と隣接する演習場で、C-1などの航空機の支援による空挺降下訓練を日常的に行なっている。近隣にお住いなどの方にはおなじみの光景だと思う。また、C-1と空挺団による空挺降下の代表的なものは、毎年正月の恒例行事ともなっている「初降下」「降下訓練始め」などと呼ばれる一般公開される訓練が有名だ。毎年たくさんの人々が見学に訪れる。

しかし、来年2021年正月の初降下実施の知らせはまだ聞こえてこない。例年、12月に入ってから発表されるものなのでまだ早いのだが、実施は新型コロナ感染状況の推移次第ということも関係するだろう。一方で、空挺団の公式サイトで発表されている毎月の訓練スケジュールを見ると、この11月と12月の降下訓練頻度は増えていて、ほぼ毎日、降下訓練が実施予定にある。来年正月の初降下実施に向けて現場は準備し、通常通り訓練を重ねておく予定なのだろう。できることなら、冬晴れの正月の空を飛ぶC-1からの空挺降下を見たいと思う。

習志野演習場へ降下する空挺団。写真右下の2名は「降下誘導員」。降下本隊に先行して降着地域へ進入し、本隊を誘導支援する。

話を戻すと、C-1には弱点があって、航続距離の短さを当初より指摘されていた。空自サイトのスペックでは、2.6トンの貨物を搭載した状態での航続距離は約1700kmだという。これは、北海道を飛び立って九州には到達できるが、九州を飛び越して沖縄までは直行できないことになる。増加燃料タンクの装着や、途中の給油が必要だ。他の輸送機をみると、エンジンの種類が違うがC-1と同じようにベテランのC-130輸送機の航続距離は約4000kmもある。C-1は飛行性能などが優れたものであるだけに「足が短い」点は少し残念だ。

C-1は、1970年の初飛行以降、73年から部隊配備が始まり、長らく現場第一線で活動を続けている。しかし運用を続けて約50年を迎えようという今日では旧態化も著しい。航続距離性能を始めとする開発当時には必要充分と考えられた性能も、現代の輸送機としては不足したものとなった。そして輸送能力増大を狙った後継機のC-2輸送機が開発され、部隊配備が進んでいる。つまりC-1は随時引退している最中にある。岐阜基地や入間基地に配備された機体が10機前後、残っているだけといわれる。丸みの強い外観はユーモラスに映るが、俊敏な飛行を目の当たりにするとそのギャップに驚くのがC-1だ。引退までにできるだけ見ておきたいと思う。

地面へ降りた空挺隊員は落下傘を切り離し陣容を整え前線へ向かう。敵前では写真のように匍匐前進し、携行した銃器や後方から輸送された火砲などで戦闘する。

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