謎の床下空間、そこ新世代コンパクトカーの戦略があった! <ルノー・トゥインゴ長期レポートVol.12>
- 2020/11/22
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CAR STYLING編集部 松永 大演
このトゥインゴ、乗り込むときにあれ? っと思う。それはフロアの高さだ。外見からイメージするフロアよりもかなり高い。と思って、ボディ下を見てみるとサイドシルより低いくらいの位置にアンダーカバー、そこからおよそ20cm程度の謎の空間があって、室内の床の高さになる。
フロアが高いの、気がついてましたよね?
運転席に座れば、一般的なセダンほっではないものの割と足を投げ出すスタイルでドラポジを取ることになり、一般のトールモデルとはちょっと違うなと感じさせる。
サイドシルとフロアはほぼ同じ高さ。しかし「掃除もしやすい!」 と感動している場合ではない。実はここにルノーAセグメント・コンパクトカーの大きな戦略が隠されていた。
発表は2014年のジュネーブショー。当時、やはり床下の高さがおかしいと思い、現地で担当者に聞いたのだが、はぐらかされてしまった。
しかし、その答えは今年2020年の2月発表のTWINGO Z.E.で明かされた。Z.E.とは駆動系を電動ユニットとしたモデルで、このトゥインゴZ.E.はルノーとしては商用車も含めて7車種目のEVモデルとなる。リヤに搭載される電動モーターは最高出力60kW (81ps) / 3950-11450rpm、最大トルク160Nm / 500-3590rpmを発揮。リチウムイオン式バッテリーはLG化学製で、8つのモジュールで構成され、容量は21.3kW、重量は165kgとなる。
それをまさに前席床下に搭載して登場したのだ! つまり2014年に発表された時点で、すでにEVを前提としたマルチパワーユニット化に対応したモデルとして、しっかりとバッテリーの位置が予定されていたのだ。それが目の前にある3代目トゥインゴの真の姿だった、ということだ。
すべてEVも前提としたプロダクトだったのだ
そうして見ると、できるだけ開けたくないボンネットの理由も見えてくる。ボンネットは樹脂製で超軽量。さらに、はめ込む構造でヒンジを介して開けるような構造になっていない。これを開け閉め可能なヒンジをつけたスチール製にすると、どれだけ重くなるだろうか? 目的は徹底した軽量化にあるようだ。
ガソリンエンジンだけを見ていれば、前45/後55の重量配分なので、そこまで徹底して軽くしなくてもいいんじゃないの? と思うところだが、これがEVとなれば話が見えてくる。
エンジンと燃料タンクを電気モーターユニットに変えれば、ややリヤ側荷重は軽くなり、フロント側では乗員に加えて165kgの巨漢(=バッテリー)が床下に潜むことになる。ガソリンエンジンとは異なるが、ベストな重量バランスになるはずだ。(公表されたいないのが残念)
もちろんリヤ駆動なので、トラクションを考えると後輪側へ少し重量バランスを増やしておきたい思いはあるだろうが、フロントヘビーは困る。その中で生まれた、フロント床下のバッテリー配置だったようだ。
つまりはEV、内燃機関の双方でバランスを取ろうと考えたのが、この3代目トゥインゴの新しいRRパッケージだった。
3代目発表当初には、なぜリヤエンジン? と思ったものだが、このEVまでをも前提とした合理的レイアウトがこの形となった。おそらく内燃機関と電動モーター双方を搭載する計画がなければ、このパッケージはなかっただろう。
また今回はこのレポートを書くにあたって、様々なシーンを走ってみたのだが、その軽快さには恐れ入ってしまう。
エンジンを分離したことで生まれた、ステアリングの繊細さはワインディングや高速道路で顕著となる。また、街中ではドタバタとあまりいいところを見せないパワートレーンだが、速度レンジをあげていくことでその安定感、信頼感は大きく高まっていく。むしろロングランに向くパッケージであることに気がついたのも大きな収穫だった。
この辺りさすがにバカンスの国、フランスの遊びに長けた車の面目躍如と行ったところ。どこかに出かけたくなる衝動に狩られる。
これが、EVになったらどんな感じなのだろう。エンジンのノイズは完全になくなり、ちょっとバランスがフロントに来てフロントのグリップはさらに高まる上、フロア下に重量物が来ることで安定感は高まるはず。新世代のドライビングフィールが味わえる予感だ。
加えて、この季節ならばキャンバストップは常にオープンがベスト。この爽快さは絶品だった。雨の日以外はね!
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