火曜カーデザイン特集:新型ランドローバー・ディフェンダー オリジナルの造形を継承しながら新たな塊感を表現 新型ランドローバー・ディフェンダー
- 2021/01/05
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CAR STYLING編集部 松永 大演
ランドローバーの長らくある歴史の中で、最もトラディショナルなモデルと言えるのがこのディフェンダーだろう。そのモデルが30年ぶりのフルモデルチェンジを行った。ここでは大きく進化したディフェンダーのデザインを見ていこう。
堅牢だけでない、機能性を熟知したランドローバー
ディフェンダーという名前がついたのは、30年前の1990年。企業としては紆余曲折があり、その始祖がモデルを生産したのが1948年と言われ、2018年には創業70周年を祝った企業だ。ディフェンダーと呼ばれる以前のモデルはその同年より、単にランドローバー名と数字で呼ばれていた。極めて用途の特化したモデルで、ある意味大幅なフルモデルチェンジの必要がなかったと言えるかもしれない。


特にランドローバーを一般市場の表舞台に出したのは、1970年発表の初代レンジローバーだ。伝統の高いオフロード性能に加えて、上質な内装で仕立てた乗用オフローダーだが、この仕立てによって狩のための車、シューティングブレークとも位置付けられていた。
初代レンジローバーが大きく注目されたのは、単にオフローダーを高級にしただけでない。これまでのランドローバーの経験が如実にデザインとして形に現れていた、という点が非常に大きかった。

四隅までわかりやすいボディワークとして、ピラーが細く大きなウインドウの採用によって死角を減らし、ボンネットは左右の先端が判断しやすい造形を採用した。さらにサイドミラーを敢えてフェンダーミラーとしてボンネット先端に配置し、前端だけでなく左右の車両感覚も実に把握しやすくしていた。
これらは林野を走る際に、樹木や岩にボディを当てない、あるいは車幅の判断をしやすくするための配慮でもある。さらに給油口はボディよりも奥まって設置され、周囲からの給油口を保護する役割を果たしている。
また2ドアモデルは、ドアハンドルを大きく縦長に設置。車と人の位置関係がどんな状態でも開けやすく、それこそこれならば、手が塞がっていても足で開けることができそうだ。
このようにランドローバーは、オフロードカーに必要となる堅牢さだけでなく、オフロードという特化したフィールドでの運転のしやすさやアイデアなども特徴とする車でもあるのだ。
新型ディフェンダーは伝統の価値観を新解釈
そしておよそ30年の歳月を経て、新型ディフェンダーが登場。チーフデザインオフィサーのジェリー・マクガバン氏はこのモデルのデザイン開発について
「新型ディフェンダーは過去を尊重しているが、過去に支配されるものではない」と語っている。
様々な世界観の変化してきた現代においての新世代ディフェンダーとして、その果たすべき役割を新たに定義してきたという。
これまで多くのランドローバーのモデルは、そのスタイルやデザインが、果たすべき機能と直結してきた。しかし、初代イヴォークが登場したことを起点にするように、ランドローバーにとってデザインの果たす役割はさらに幅広いものとなってきた。
とりわけディフェンダーにとっては、機能のための形とでもいうべき朴訥さがある意味では大きな魅力でもあったのだが、新型ではその機能の意味するところが形として問われてきた。


2011年に発表されたディフェンダー・コンセプトモデルDC100は、形の方向性を検討したモデルだった。実はこのモデルはマーケットリサーチが主な目的で、ディフェンダーを何処まで振れるかのテストパターンだった。つまり、賛同を得るためのモデルではなく、ここまで特化したモデルを市場がどうみるかを確認するためのものだった。
ここで示されたのは、ディフェンダーの培ってきた鉄壁な堅牢性、走破性の行き着く先をスポーツ性と位置付け、そこに派生する多くのキーワードによって構築された形と見えることができる。このコンセプトで見ることができるのが、俊敏さ、力強さ、コンパクトさなど。これまでのディフェンダーの印象である、広さ、堅牢さやトラディショナルといったキーワードはあまり感じられない。しかし、ここでのリサーチからキーワードが取捨選択され、新たな価値観が生まれてくるのだ。

そして、新型ディフェンダーのスケッチや新型モデルからすると、大きく変わってきたのが一つにはスポーツ性の方向性の違いと、あたかもインゴット(塊)から削り出したような重厚感だ。面構成は自体はDC100と似ているものの、コンセプトには塊感は希薄だった。そしてそれは、オリジナルのディフェンダーの鉄板をつなぎ合わせた面質とは大きく異なるも、しかし堅牢さの先にありディフェンダーが求めるべきものだったのだと気がつく。
インゴット感を出すための手法としては、キャラクターライン上のショルダー部分を折り目ではなく削り出しているように見せることと自然とボンネットに回し込んでくる手法。またコンセプトではせっかくボンネットのオープン部分が小さいのだから、フードを独立した形状としている。これがパネル感を強めてしまっているのだが、生産型ではその差を極力見せないようにしている。
そして極め付けとなるのが、スパッと切り落としたように見えるリヤエンドだ。敢えてコーナーを鋭角に切り落とすことによって、塊感を演出できている。この形はオリジナルのディフェンダーでも採用されているのだが、そちらは塊としての表現の意図はなかったようなだけに伝統を継承しながら新たな表現として活かされた点が注目に値すると思う。
これまでは、伝統的なクラシカルなスタイルがディフェンダーの魅力と感じていたものだ。しかし、こうして全く新しい造形を持ちながら、ディフェンダーとしての今の時代なりの価値観が継承されているのが新型のデザインだ。


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