Motor-Fan[モーターファン]|自動車最新ニュース・速報、試乗記など、クルマとカーライフを楽しむサイト

  • Motor-Fan[モーターファン]
  • モーターファンテック
  1. TOP
  2. バイク
  3. ニュース・トピック

【電動バイク】「各社EV用バッテリーの規格統一」で何が変わる?|国内バッテリーコンソーシアムの将来展望

このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年3月26日に開催された記者会見。「国内バッテリーコンソーシアムの進展に関する概要説明会」が開催された事は既報の通り。そのパートIでは「交換式バッテリーの相互利用を可能とする標準化への合意」について、そこに至る経緯が公表された。今回はパートIIとしてその続報である。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO ●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●本田技研工業株式会社
    ●川崎重工業株式会社
    ●スズキ株式会社
    ●ヤマハ発動機株式会社

目次開く

既報の前回レポートをおさらい

各社間競争よりも、業界一致団結して市場を育てる。

既報の前回レポートをおさらい

 パートⅠのレポートをお復習いしておくとホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハの4メーカーが、EV(バイク)用バッテリーを相互利用できる環境整備について、業界全体で取り組むことに合意。その背景には持続可能な社会の実現に向けて、電動二輪車の普及を目指すという物であった。
 わかりやすく解説すると、電動二輪車の普及にバッテリーの規格統一化が重要であると業界全体が認識。今後は4社の協調領域としてその開発を検討推進して行こうと言う共通の考えを表明したのである。
 ちなみに各社の商品開発については、従来通り競争領域とし、協調と競争の両面でそれぞれに努力して行くと言う決意表明が成された。

各社間競争よりも、業界一致団結して市場を育てる。

記者会見では4メーカーの担当首脳が顔を揃えた。左からホンダ・三原大樹、カワサキ・古橋賢一、スズキ・田中強、ヤマハ・有西達哉(敬称略)
 具体的な取り決めとしては原付一種と二種のEV製品向けのバッテリー及びバッテリーステーションについての合意であり、それらの開発について一丸となって取り組む事が決定している。
 ユーザーにとって嬉しいのは、どのブランドの製品を購入しても、共通のバッテリーを使えると言う点。コンビニ等、専用バッテリーの供給環境(充電済みバッテリーとの交換システムや急速充電)が整えば、まだまだ航続距離の不足がネックとなるEVの利便性が俄然クローズアップされる事だろう。
 自宅に充電設備を整える必要性も薄れる。まだまだ重くて大きいバッテリーをマンションの駐輪場から自室まで持ち込む手間も不要になるからだ。
 
 仮に各社がそれぞれに独自の新製品を開発すれば、バッテリーにも一長一短があり、コスト削減も限定されてしまうだけに、普及促進の足かせになりかねない。
 今や世界的にあらゆる製品で活用される単3、単4乾電池の様に、便利で誰にでも分かりやすい規格統一製品が普及すれば、そのバッテリーを活用するEV以外の製品開発にも弾みが付き、バッテリー生産量の増加でますますのコストダウンにも貢献できるのである。
 つまりEV用バッテリーという限定される用途だけではなく、バッテリーその物が一人歩きできる(社会に浸透し貢献する)商品に一躍大成長できる可能性も見逃せない。
 今、災害時の備えとしても注目され、アウトドアで活用されモバイル電源が人気を集めているが、そんなニーズを賄うことも期待できそう。
 将来、規格化されたEV二輪車用バッテリーが家庭でも多用途に活用されるモバイル電源となれば、多彩な製品で活用される利便性は計り知れないものとなり、お客のニーズを捉えた普及促進が叶えば、やがてマーケットはグローバルな規模へと広がる事も夢ではない。

 かつてビデオテープでVHS対ベータの争いがあったが、ユーザーベネフィットの上でも競争より協調を選択した方が益は大きく、業界として賢明な判断だと言えるのである。

 ユーザーサイドの心境として少しだけ残念なのは、バッテリーが同じ物になれば、新製品の企画開発における第一歩が、そのバッテリーありきでデザインがスタートするため、生み出される製品も画一化されかねない。
 バッテリーの搭載位置や脱着方法もそう多くのバリエーションは望めない。つまりそこに創意工夫を凝らした個性(魅力)的製品の登場はあまり期待できなくなるかもしれない。
 ましてやOEM商品が普及すれば、各社が掲げるブレンド名こそ違えど、中身はどれも一緒になることも想像に難くない。

 ただ救いはある。今回の合意は前述の通り原付一種と二種製品に関する事に限られている。つまりそれ以外のEV製品には各社それぞれオリジナリティに溢れる魅力あるデザインの製品開発が期待できるという事。
 あるいはそんな中、市場で評価される製品に次代の規格化に相応しいバッテリーのあり様が見つかっていくのかもしれない。何しろバッテリーの進化は日進月歩、現在も勢いを止めていないのである。 

規格統一で汎用性を持たせれば、ユーザーにとって利便性が向上、コスト負担も軽減される。
脱着できるカセット式のバッテリーならバイク以外への活用法も多岐に及ぶ。別ジャンルの新製品誕生を促すこともあり得る。
早期普及を実現し社会に浸透すれば、やがてそれは世界市場へ拡散する可能性も見逃せない。
台湾で先行普及に成功して話題のgogoro。カセット式バッテリーと供給ステーションの模擬展示。
ホンダ・ジャイロeやベンリィeに使用されているバッテリー及び専用充電器。今後規格化されるバッテリーは別物だが、これらに近い形になると予想される。

バイク|令和元年(2019年)のトピックおさらい!

バイク|令和元年(2019年)のトピックおさらい! 一覧へ

解決します! 交通ルールの素朴なギモン

解決します! 交通ルールの素朴なギモン 一覧へ

3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説

3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説 一覧へ