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海上自衛隊:新鋭イージス艦「はぐろ」就役、1番艦「まや」に続く最新の『盾』を佐世保で遠望する

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新造イージス艦「はぐろ」(DDG-180、「180」は艦番号)。「まや」型2番艦だ。写真/海上自衛隊

2021年3月19日、海上自衛隊の新鋭イージス艦「はぐろ」が就役した。造船所のジャパンマリンユナイテッド(JMU)株式会社横浜事業所磯子工場で海自に引き渡され、同時に自衛艦旗授与式も行なわれた。「はぐろ」は先に就役したイージス艦「まや」型の2番艦となる。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)

海上自衛隊の新造艦就役が続いている。2020年10月14日にはリチウムイオン蓄電池を備え能力を上げた潜水艦「たいげい」が、同年11月19日には機雷戦をはじめとする多目的性を持つ護衛艦「くまの」が就役。そして今年2021年3月4日には音響測定艦「あき」、同16日には掃海艦「えたじま」が就役している。各々の艦種で世代を更新する計画艦が着々と具体化されている。

新鋭イージス艦「はぐろ」は、2020年3月に就役した「まや」型と同じタイプだ。「まや」が1番艦、「はぐろ」が2番艦となる。これで海上自衛隊はイージス艦を8隻、保有・運用することになる。8隻すべてが同時に稼働するわけではないが、弾道ミサイルへの対処を含めた洋上の防衛態勢は、より強固なものになるはずだ。

艦尾に自衛艦機を掲げた「はぐろ」。掲揚した瞬間から自衛艦として扱われる。 写真/海上自衛隊
「はぐろ」の後部、飛行甲板に整列し、自衛艦機の掲揚に臨む「はぐろ」乗員。「まや」型の乗員は約300名。写真/海上自衛隊

海自の現有イージス艦は、「こんごう」型が4隻(DDG-173「こんごう」/DDG-174「きりしま」/DDG-175「みょうこう」/DDG-176「ちょうかい」)、そして「あたご」型が2隻(DDG-177「あたご」、DDG-178「あしがら」)、さらに「まや」型が2隻(DDG-179「まや」、DDG-180「はぐろ」)となる。  

新鋭イージス艦「はぐろ」は、1番艦「まや」と同様な装備と能力を持っている。搭載する主要な武器体系の名称を「AWS(AEGIS Weapon System:イージス武器システム)」という。これは対空戦闘重視の艦載武器システム全体を指しており、ともに行動する艦隊全体をカバーする防空能力を持つものだ。そもそもイージスとは米海軍とロッキード・マーチン社が開発した防衛システムのこと。名称の由来は、ギリシア神話で女神アテナが用いる防具(盾)「アイギス」の英語読みだという。

ヘリコプター1機を収容できる格納庫を艦後部に備えている。艦尾には艦名が書かれているが、低視認塗装により目立たない。低視認塗装は艦首舷側の艦番号も同様だ。写真/海上自衛隊

イージスシステムは、レーダーとセンサー、制御装置、武器(ミサイル)の3大要素で構成されている。

まず「SPY-1多機能レーダー」。これは飛来するミサイルなどを探知する中核装置だ。艦橋構造物などに設置された多角形の巨大なレーダーで長距離・広範囲を探る。そして制御装置は高性能コンピュータ群のことで、攻撃相手の脅威度を自動判定し、射撃(迎撃、反撃)を自動制御で短時間に実行する。武器は「スタンダード対空ミサイル(SM-2、SM-3)」などだ。システムには弾道ミサイル防衛能力(BMD)も加えられている。

母港・佐世保の桟橋に舫う「はぐろ(中央、DDG-180)」。写真右は護衛艦「いせ(DDH-182)」、左側がイージス艦「こんごう(DDG-173)」。低視認塗装で「はぐろ」の艦番号は読み取りにくい。メインマストの造作や主砲など、初代イージス艦「こんごう」との違いは多い。
佐世保港、2021年4月14日の午後6時56分ごろ。この日の課業(業務)を終えて艦尾の自衛艦旗を降ろした「こんごう」(右)と「はぐろ」(左)。「こんごう」艦尾の艦名は白く浮かび上がるが、「はぐろ」の艦名は夕闇に溶け込んで読めない。

イージス艦「はぐろ」の特筆点は、1番艦「まや」と同様に共同交戦能力(CEC:Cooperative Engagement Capability)を備えていること。戦闘情報を共有するシステムは、ネットワーク戦闘能力のことを指す。これは、探知の情報共有を進めること。自身と僚艦が共通して捕捉し精度を高める。あるいは僚艦が捉えた相手の位置情報等を利用し、自身の射撃情報とすることなどを指す。攻撃に対して「まや」「はぐろ」各々が属する艦隊全体(の各艦艇)が、ごく短い時間で応戦できるようにすることを意味する。

これは、略称「ニフカ」と呼ばれるシステムと能力をさらに積むことで増強される。「ニフカ(NIFC-CA:Naval Integrated Fire Control-Counter Air)」は、「海軍統合射撃管制-対空能力」というものだ。広く監視し、素早い迎撃態勢を全体で完備しコントロールする。結果的に全体の防空力を高め、リアクションを高速にするものだ。

「まや」型1番艦、イージス護衛艦「まや」。写真/海上自衛隊

広域探知には、艦隊の上方や前方の空にいる早期警戒管制機(AWACS)や早期警戒機E-2D、そして偵察能力を持つステルス戦闘機F-35をイージス艦の遠隔センサーとする。艦艇では捉えきれない水平線の向こうの脅威情報を獲得するものだ。探知と情報のネットワークで現場を覆い、すべての動きを捉え判別し管理する仕組みである。

また、CECとニフカを積んだ上で発展させ、ミサイル防衛能力を向上させる狙い「統合防空ミサイル防衛(IAMD:Integrated Air and Missile Defense)」も標榜している。イージス艦「まや」と「はぐろ」はその尖兵だと理解できる。ネットワークで日本列島を覆い、固い防空態勢を作るのだ。

艦名の「はぐろ」について、海自のリリースには次のような解説がある。

『護衛艦の名称は「天象、気象、山岳、河川、地方の名」を付与することが標準とされています。本艦は、8200トン型護衛艦(DDG)の2番艦であり、「山岳」の名から選出することとされ、海上自衛隊の部隊等から募集し、防衛大臣が決定しました。「はぐろ」は「羽黒」と書き、山形県鶴岡市に位置する標高414mの「羽黒山」に由来します』。

「はぐろ」は3月19日の自衛艦旗授与式を終え現役艦として就役、第4護衛隊群第8護衛隊に編入され、佐世保基地(長崎県)に配備された。4月中旬、佐世保の町の背後にある弓張岳展望所から港を遠望すると、護衛艦「いせ」とイージス艦「こんごう」に挟まれて繋留する「はぐろ」の姿を見ることができた。海自初のイージス艦「こんごう」と並ぶことで、新世代艦「はぐろ」の艦影が際立つ印象で興味深かった。

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