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ETAS INCA Add-on HIOKI イータスが電力計測の老舗をパートナーに迎え、電動パワートレーンの開発を加速 PR

  • 2020/07/16
  • Motor Fan illustrated編集部
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ETASのプロトタイピングモジュール(左側)で制御するインバーター/モーターユニット(中央)に、電力消費の状況を計測する日置電機のパワーアナライザPW6001(右側/日置電機製)を組み合わせたデモンストレーションの様子。右上のPCではETASの計測適合用ソフトウェアツール、INCA及び自動化支援ツール INCA FLOWが走っており、WLTCモードの運転状態を模擬するカタチで、インバーター制御ソフトの適合試験が自動実行されていた。

電動パワートレーンの開発には内燃エンジンのそれとは異なる計測技術が求められる。なかでも難しいのが、インバーターの高速スイッチングによる高周波成分を含む高電圧、大電流の電気計測だ。

TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI) PHOTO:山上博也(Hiroya YAMAGAMI) FIGURE:ETAS

見えない電気を可視化する

イータス株式会社 技術サポート部 部長 佐藤 義彦氏

 電子制御用のECUや、そこに内蔵されるソフトウェアを開発するためのシステムツールを手がけるETASが、新たな機能を採り入れた電動パワートレーン向けの開発システムを発表した。

 その中核は、ECUのキャリブレーション(適合)用ツール(PCベースのソフトウェア)であるINCA。自動車業界においてデファクトスタンダードとして知られるこのツールに、インバーターを介したモーターの制御と、その動作を自動計測できるのが、このシステムの特徴だ。

 一般的なxEVシステムでのインバーター/モーター制御ECU開発では、シミュレーション内の地形情報に基づく走行負荷をリターダーやブレーキなどで作り出しながら、インバーター/モーターの制御パラメーターを設定し、応答が狙い通りであるか否かをECU内部の値、電力や電流を計測し、判断する。応答が狙いから外れる場合は、制御パラメーターを変更し、再び計測する。

 こうした制御パラメーターの変更と計測確認のループからなる作業は、手入力で行なうこともできるが、INCAの強みはなんといっても、このような作業の自動化ツールINCA-FLOWがすでに提供されている点にある。最終的な仕上げの部分はエンジニアの手に頼るとしても、基本的なデータ計測作業が自動で済んでいれば、その手間と時間を最小限に抑えることができるのだ。

 また、このループ作業では、制御パラメーターだけではなく、制御ソフトウェアを変更・修正することもある。その場合、バイパス処理といわれる手法が用いられる。この手法では、外部のプロトタイピングモジュール上で動作するソフトウェアと、ECUが協調動作することで、ECUそのもののソフトウェアを変更することなく検証が可能になる。

 左ページ中央の開発システムは、これらの要素を組み合わせたものである。ETAS ASCETやMATLAB/Simulinkで作成したモーター/インバーター制御モデルが、プロトタイピングモジュールES910.3(左ページ中央写真左側の3段重ねのモジュール中段)上で動作する。ES910.3はECUを模擬し、指示速度に応じた目標回転を実現するようにモーターを制御する。INCA-FLOWからWLTP走行モード指示を出せば、モード走行を模擬することが可能となる。さらに、INCAとINCA-FLOWを連携させることにより、制御パラメーターセットの自動切り替え機能を実現している。つまり、複数の条件を切り替えて同一走行パターンを繰り返し実行することにより、連続試験の自動化および無人化が可能となる。このシステムで注目すべきは、電動パワートレーン向けとして、加わることとなったパワーアナライザPW6001(写真右側下)である。

 この測定器は、その名の通り電力の測定分析を主な目的としたもの。電力を知るためには電圧と電流の値を計測する必要があるのだが、じつは自動車の電動パワートレーンで用いられる電気の計測は簡単なことではない。バッテリーの直流から三相交流を作り出すインバーターでは、kHz単位でスイッチング(スイッチのオンオフ)が行なわれていることから、高速かつ微細な変動をともなううえ、大電流ゆえに正確な電流測定には高性能な電流センサーが必須となるためだ。

 今回、ETASでは日置電機と協業。日置電機のパワーアナライザをシステムに加えることで、高電圧大電流の電気を高精度で捉え、インバーターやモーターの電力変換効率や損失を正確に測定する機能を新たに追加している。ちなみに同社は電気測定用テスターの老舗として知られる測定器メーカーで、前述の理由から困難とされるインバーター関連の電気測定においては、世界有数ともいえる豊富なノウハウと技術を持つ、知る人ぞ知る存在だ。

 電力および電圧電流値といった、電気に関するパラメーターが正確に得られるということは、実験の精度が大きく向上することを意味する。つまり、これまで以上に効率的な開発が可能になることはもちろん、キャリブレーションの品質(適合品質)向上にも繋がるはずである。電動パワートレーンにおける電気の振る舞いは、内燃エンジンの燃焼状態に相当すると思って間違いない。それが可視化されるのだから、もはやこれはブレークスルーと呼んでも良いはずだ。

モーター制御で主役となるのは中段のプロトタイピングモジュール(ES910.3)。下段はI/Oモジュール(ES930.1)、上段には各モジュールへの電源供給とリアルタイムのイーサネット通信を担うネットワークモジュール(E S600.2)が組み合わされる。
電流を測定するクランプセンサー。電流の流れる電線の周囲に発生する磁束を捉え、非接触で電流波形が計測できるセンサーで、その名の通りセンサー部を計測対象となる配線に挟み込むように通すだけで計測が可能だ。手前の3つがモーターの三相交流用で、一番奥は直流用となっている。
PW6001のタッチパネル式ディスプレイ。電流、電圧、そして電力の変化を捉え、波形表示するというアナライザーとしての一般的な機能に加え、モーター/インバーター解析用の機能を多数搭載。

電気の挙動を捉えることで開発効率が大きく向上

電動パワートレーンの開発用システムの構成図。新たに加わったパワーアナライザにより、モーター/インバーター内部の電気的な挙動を高周波成分まで正確に捉えながら分析。インバーターの変換効率やノイズの原因となる高調波がリアルタイムで計測できるようになったことで、電費や静粛性といった適合品質の向上はもちろん、これまで以上に効率的な開発が可能となる。

制御ロジックから電気信号まで制御のすべてを可視化する

ディスプレイ表示はETASのEHANDBOOK(電子仕様書)によるグラフィック化された制御ロジックと(左側ウィンドウ)、PW6001で計測された電気信号の波形(右側ウインドウ)。両者は完全に同期されており、それぞれの制御動作に対する入出力波形を観察することができる。右はデモンストレーションで用いられていた、実証実演用のインバーター/モーターユニット。バッテリーに相当する直流電源装置とインバーター、モーター、そして負荷発生装置を一体としたものだ。
イータス株式会社 技術サポート部 フィールド・アプリケーション・エンジニア 赤塚 輝彦氏
イータス株式会社 技術サポート部 フィールド・アプリケーション・エンジニア 江橋 達也氏
日置電機株式会社 取締役 執行役員 イノベーションセンター長 久保田 訓久氏
日置電機株式会社 イノベーションセンター フィールドデザイン課 エネルギープロダクトマネージャー 小林 宏企氏

INTRODUCTION:電動車はどのくらい売れるのか?

BASICS1 :電動車の仕組み Q&A
BASICS2 :電動車のスペックの見方
CATALOG:最新電動車図鑑
      1) マイクロ&マイルドハイブリッド
      2) ストロングハイブリッド
      3) バッテリー電気自動車&燃料電池自動車

COLUMN:①BEVの価格競争力は上昇したが……     
②48Vシステムの仕組みと狙いを理解する
EPILOGUE:プラグインアウトという考え方

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アルミニウムのテクノロジー6