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  • 2017/09/24
  • Motor Fan illustrated編集部 鈴木慎一

EV、電動車両の性能向上の切り札!デンソーのSiCパワー半導体

実用化へデンソーが進めるSiC(シリコンカーバイド)ウエハの開発現場

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「自動車産業は100年に一度の大転換期を迎えている」とデンソーの加藤良文専務役員は報道陣を前に語った。だからこそ、デンソーは研究開発体制を変化・強化させていこうとしている。9月1日、デンソーは愛知県日進市にあるデンソー先端技術研究所を報道陣に公開した。そこで、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の開発の現場を見せてもらった。
左がSi(シリコン)パワー半導体のウエハ(トランジスタ)で右がSiCパワー半導体のウエハだ。サイズの小ささがわかる。この写真はトヨタが2014年に発表した当時のものである。

今回、報道陣には現在進めている研究の一部(ほんの一部なのだろう)が公開された。そのなかで興味深かったのは、SiCウエハの開発である。
SiC(シリコンカーバイド=炭化珪素)は、炭素(C)と珪素(Si)の1:1の化合物で、ハイブリッド車やEVの走行用モーターを制御するためのインバーターなどに必要なパワー半導体に用いる新しい材料だ。従来のSi(シリコン)に比べ、電力ロスが5分の1程度にまで低減できるのがSiCの強みで、SiC製パワーデバイスが実用化されれば、ハイブリッド車の燃費、EVの電費を大きく向上させられる可能性がある。

大きく電動化へ向けて進み始めた自動車産業にとっては、きわめて重要な技術である。デンソーは1980年代からSiCの基礎研究を始め、1992年から豊田中央研究所と共同で開発を進めてきた。

SiCの元になるアチソン結晶。研磨剤の副産物として得られるもので、この結晶は屋久島産。ここからデンソーのSiC研究が始まった。自然界にはダイヤモンドと違ってSiCの単結晶はほとんど存在しない。

2000年代に入ってトヨタも加わり開発が進展。2014年5月にトヨタは、デンソー、豊田中央研究所とともにSiCパワー半導体を開発、1年以内に走行実験を開始すると発表していた。その際にもSiCパワー半導体を使うことでハイブリッド車の燃費10%向上を目指す、としていた。

今回、SiCの結晶を作成する工程を見せてもらった。熾烈な開発競争の真っ只中にあるだけに、もちろん撮影はNG。デンソーの強みは、SiCウエハからパワー半導体、モジュール化、そしてインターバーシステム化まで一貫して自社で開発できる点にある。

下にうっすら見える部分が現在のSiパワー半導体を使ったインバーターのサイズ。SiCパワー半導体を使えば、体格も大幅に小さくなる。将来的はパワーコントロールユニットのサイズ5分の1を目指す。

デンソーが特許を持つRAF(Repeated a-face)法で製造されるSiCウエハは、その品質の高さで他の追随を許さない。結晶化が難しいSiCで結晶欠陥が他社の4分の1。ル・マン24時間を戦うトヨタのハイブリッド・レーシングカーにも使われていると噂されているSiCパワー半導体(担当者に質問したら、「そうですね。でも弊社製かどうかはわかりません」と言っていたが、他社製を使う理由はないだろう)。

現在のSiパワー半導体を使ったインバーターの電力効率が85~90%だとすると、SiCパワー半導体を使えばそれが95~97%になるというから、燃費・電費の改善に大きな力を発揮するのは間違いないのだ。

デンソーのRAF法とは? 

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