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  • 2017/10/12
  • Motor Fan illustrated編集部 萬澤 龍太

新型スイフトスポーツのK14C型エンジン

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スズキK14C型エンジン
K10C型直噴ターボに続いて、4気筒版であるK14C型直噴ターボエンジンが登場。SUVであるエスクードに搭載されたのに続いて、次弾はなんとスイフトスポーツ。リトルダイナマイトとかホットハッチだとか、そういう単語で形容されるクルマにふさわしいエンジンが載ってきた。さて、どんな特徴があるのだろうか。

ターボチャージャを至近から。ヘッド内蔵のエキマニ構造、ウェイストゲートのアクチュエータがよくわかる。

ノーマルクローズ制御というのがK14C@スイフトスポーツにおけるトピックです。普段は閉じておいて排気流は余さずタービンへ、インターセプトポイントを超えると破壊を免れるためにウェイストゲートを開いてタービン流入エネルギーを低減させるという、要するに「従来慣れ親しんだターボの使い方」です。

では一方の「ノーマルオープン制御」が最近のパワートレインで一般的なのはなぜかと言いますと、自動変速機と組み合わされていることがいちばんの理由です。一般走行中の軸出力を測ってみるとわかるのですが、クルマは低負荷域で走っていることが多く、その際の出力は数kW、よくて数十kWというところです。燃料消費を極力抑えたい昨今、出力が求められていないのにタービンに排気流を当ててまで排気抵抗を増やすのは得策ではありません。そこで普段はウェイストゲートを開いておいてそちらへ導流しておくわけです。急加速したいときには変速機が活躍。瞬時にローギヤレンジに変速することで軸トルクを稼ぎ、その間にエンジン回転が高まるからその頃には過給効果が得られるという寸法です。

K14Cの2種、そしてM16Aの出力曲線比較。性質がよくわかりますねえ。

しかしMTが主体であろうパワートレインにはこの手が通用しません。明らかなターボラグはドライバビリティにとってネガ要素ですから、常時タービンを回しておくノーマルクローズ制御に踏み切ったわけですね。ですからもっぱらの興味は、スイフトスポーツの6AT仕様。これらをひっくるめて考えると、一定速からガバッとアクセルを開けると、ノーマルオープン車の場合はダウンシフトして加速するところ、もしかするとギヤはそのままでエンジン回転を上げていき加速するのかな──などと期待。ぜひ実車で試してみたいです。

ターボついでに、K14Cはシングルスクロール型ターボチャージャーを用いている模様。4気筒ですと1番4番/2番3番のふたつの流路で排気干渉が起きてしまいターボラグを招いてしまう、だからふたつのポート/マニフォールドを完全分流し、それぞれの排気流が干渉することなくタービンに流入する──とは、海外勢のターボエンジンが搭載するツインスクロール型ターボチャージャーの効能としてよく目にしました。ただしこのツインスクロールターボ、猛烈に高いそうです。ポート側の設計と製造にもお金がかかるのは明白で、さらにヘッド内蔵エキマニなんてことになればさらなる高騰は必至です。

先日デビューしたシビック・タイプRが載せているK20C型エンジンも、シングルスクロールターボを用いています。その理由は、高回転域においてはふたつの流路が排気干渉になるから。なるほどの理由ですね。K14Cもスポーツエンジンを標榜するなら同じ目的かもしれません。低速域の排気干渉は、ホンダK20C型は吸排気ともに備わるVVTと排気側可変リフト機構で排気タイミングをコントロールし抑えているとのこと。

K14Cも、欲を言えば応答性に優れる電動VVTを使いたいところだけどこれも猛烈に高価、吸気側にのみ(おそらく油圧の)ミクニ製VVTが備わっていますが、排気ポート設計と合わせてどのようなカムフェーズ制御としているのかが気になります。ちなみにマツダはSKYACTIV-G 2.5Tで、ダイナミック・プレッシャー・ターボシステムというシングルスクロールターボの性能を余さず引き出すポート設計/デバイスを搭載しています。

筒内直噴のイメージ。最近のトレンドに則ってタンブルが強調されています。

K14Cは直噴です。燃料は、高圧で噴くことで霧化が促進されます。しかし、シリンダー壁面に燃料粒が付着するのは避けたいのです。一般的にレシプロエンジンのシリンダー壁にはクロスハッチが設けられ、その細かい溝で油膜を保持することを狙っています。燃料粒がそこに付着すると油が洗い流されてしまい、リング/ピストン壁とシリンダ壁が直接触れてしまう可能性が生じます。その燃料はオイルパンまで落ちて、潤滑油が燃料希釈されてしまいます。

そして何より問題なのが、壁面に付着した燃料は空気と混ざり合いにくく、つまり燃えきらずに煤の発生を招いてしまうことです。もともと直噴は空気と燃料が混ざり合う時間がポート噴射に比べて短いこともあり、煤が発生しやすい性質があります。第一世代の直噴システムである三菱GDIやトヨタD-4が苦しんだのはまさにここでしたね。近年のエンジンでもウォールウェットがプレイグニッションの原因のひとつとされ、回避策が模索されています。

混ざりにくいから燃料粒を細かくしたい、すると高圧噴射したい──だけどウォールウェットは避けたいので噴孔数や方向に工夫を凝らして──というのが直噴システムのたどってきた歩みといえるでしょう。K14Cでは、インジェクターの最大噴射圧は20MPaとされています。サプライヤーはボッシュ。だけど同じスズキのポート噴射エンジンであるK12Bのデュアルジェット仕様では最大38MPaと聞いていまして、「ずいぶんポート噴射なのに高圧なんですね」と驚いたら「いや、ウチはみんなこんなものですよ?」とエンジニア氏に返されてさらに驚き、ということがありました。これも一度、きちんと確かめてみたい案件です。

直噴インジェクタは側方配置です。

スズキK型エンジンにはいくつかバリエーションがあります。3気筒のK10C、4気筒のK12BとK12CとK14Cが主なラインアップです。いずれにも共通するのがボア73.0mm+4バルブ設計。フォルクスワーゲンのEA211型と同じく、ボア値は固定で燃焼室設計を同じく、バリエーションはストロークの多寡で生み出す思想ですね。

ご参考までに、K型の始祖はK6A型。ご存じ、軽自動車用のベテランユニットです。現在はジムニーに縦置きで搭載されるのがスズキ唯一、ユニークなところではケータハム社がスーパー7用に採用しています。そのK6Aをスクエア設計とし4気筒で仕立てたのがK10A。やはりK6A/K10Aも68mmボア値固定でした。

直噴化にあたってはK10CもK14Cもインジェクターを側方配置。かりに天頂配置にするとインジェクターの場所確保のためにシリンダヘッドの設計を大きく変えなきゃいけなくなります。大径ボアで直噴のみのエンジンラインアップならまだ場所も作れそうですが(ダイムラーやBMWのトップインジェクタの配置は見事ですね)、73mmのボア径ですとスペースもギリギリ。スズキお得意のM10ロングリーチプラグはK10C以上の排気量には用いられていないようですが(M12ロングリーチ型)、ポート噴射と直接噴射が混在するシリーズのスマートな手段ですね。

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