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  • 2017/11/28
  • 遠藤正賢

小糸製作所、東京工業大学、名古屋大学が開発した「ナノコンポジット蛍光体」は新たな発光材料実用化の可能性を拓くか

ハロゲン化物やカルコゲン化物を用いた蛍光体の実用化に道筋

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<図1>ナノコンポジット蛍光体断面SEM像(左)と電子線発光像(右)
小糸製作所は11月22日、東京工業大学の細野秀雄教授研究グループ、名古屋大学の澤博教授研究グループとの共同研究の結果、空気中ですぐに潮解してしまうヨウ化カルシウムを用い、優れた耐久性と高い発光性能を持つ「ナノコンポジット蛍光体」の開発に成功したことを発表した。

従来の蛍光体は、希土類イオンを微量添加(ドープ)した酸化物、または窒化物化合物の単一組成の無機粉末で構成されているが、今回開発されたナノコンポジット蛍光体は、1つの粒子の中に異なる2つの成分(ヨウ化カルシウムとクリストバライト)が存在する、新しいタイプの蛍光体。主な特徴は下記の通り。

【構造】耐久性の高いクリストバライト粒子内に、直径約50nmのヨウ化カルシウムのナノ単結晶を埋め込んだ構造。ナノ単結晶は希土類ユーロピウムイオン(蛍光体の発光元素)のドープにより、ナノサイズの発光部を形成する。

【耐久性】発光部のヨウ化カルシウムナノ単結晶は、クリストバライトにより外気から保護されているため、優れた耐久性を示す。

【発光性能】従来の蛍光体に比べ、ユーロピウム含有量が1/6と少ないにもかかわらず、発光強度は2.7倍の、高い青色発光強度を示す。

【製法】自己組織化により簡便な固相法(異なる原料粉末を混ぜ合わせ加熱。高温での粉末間のイオン拡散により反応させる方法)で合成できる。

小糸製作所は、「今回成功したヨウ化カルシウムを用いたナノコンポジット蛍光体は、耐久性不足で機能材料への適用検討の対象から外れていたハロゲン化物、カルコゲン化物に対し実用化の道筋を示した。この手法は蛍光体だけに留まらず、様々な機能材料探索へも応用が期待できる」と、その発展性の広さを強調している。

なお、同研究では、名古屋大学が大型放射光施設SPring-8の高輝度放射光(世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設)を用いて、ナノコンポジット蛍光体の詳細な結晶構造解析を行い、東京工業大学がナノコンポジット蛍光体の生成メカニズムの解明を行っている。同研究の概要は下記の通り。

【研究の背景】
ハロゲン化物、カルコゲン化物に発光元素をして希土類を微量含有(ドープ)させると、その緩やかな原子結合(結合の熱振動が小さい)から、内部損失の少ない蛍光体が作製できる。しかし、これらの化合物は耐湿性が低く、実際に使用できるケースは稀だった。

同研究では、最も耐湿性が低い化合物のひとつであるヨウ化カルシウムに希土類のユーロピウムイオンをドープした蛍光体に対し、実用耐久の付与を目的にナノコンポジット化を試みた。

【研究の内容と成果】
ユーロピウムをドープした直径約50nmのヨウ化カルシウムのナノ単結晶を結晶性シリカ(クリストバライト)内に埋め込んだ、ナノコンポジット蛍光体の合成に成功した。

<図1>は、合成した直径50μmほどのナノコンポジット蛍光体粒子断面の電子線照射による発光を示している。クリストバライトに埋め込まれたナノ単結晶(<図1>左白色部)のみが発光している様子がわかる。

得られたナノコンポジット蛍光体を85℃85%の高温高湿下に2000時間曝した後の発光強度の低下は、わずか2%だった。ナノコンポジット蛍光体の400nm励起での内部量子効率は98%に達し、最高レベルの効率を示している。その結果、青色発光の代表的な蛍光体であるBaMgAl10O17:Eu2+と比較し、2.7倍の強い青色発光が得られる。

なお、ナノコンポジット蛍光体の合成には、固相反応中でヨウ化カルシウムがフラックス(固相反応やセラミックの焼結反応を促進させるため添加される薬剤)としてガラス質のシリカ粒子を結晶化させたとき、結晶化したシリカ(クリストバライト)中に取り込まれたフラックスが固化・結晶化する自己組織化を活用している。

【今後の展開】
ハロゲン化物およびカルコゲン化物は本来優れた発光性能を示すが、耐久性の懸念から、これまで機能材料としては検討されていなかった。しかし、今回の研究成果を踏まえ、本技術を用いた新たな発光材料の開発を展開していく。

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