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世界初、同一画素内でのフレーム単位の撮像波長域切り替えを実現 (2017年2月9日、パナソニック調べ) パナソニック:積層型有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサーによる 近赤外線域撮像を可能とする電子制御技術を開発

  • 2018/02/14
  • Motor Fan illustrated編集部
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パナソニックは、イメージセンサーの同一画素内で、近赤外線域の感度を電気的に変えることが可能な電子制御技術を開発した。この技術は独自の積層型構造を有する有機薄膜(以下、積層型有機薄膜)を用い、この積層型有機薄膜へ加える電圧を変えることにより、イメージセンサーの感度波長域を全画素同時に電子制御できるもの(波長800nmでの電子制御による切り替え時の感度減衰比 -28dB)。これにより、可視光/近赤外線域での撮像をフレーム単位で切り替えることができるようになる。

1. 光電変換機能を有する積層型有機薄膜と、光電変換信号を読み出す回路部を完全に独立させる「CMOSイメージセンサー設計技術」

パナソニックの有機CMOSイメージセンサーは、光を電気信号に変換する機能を有機薄膜で、信号電荷の蓄積と読み出しを行う機能を下層の回路部で、それぞれ完全独立に行う構成。こうした独自構造により、高感度、ワイドダイナミックレンジ、グローバルシャッター機能といった特長を有している。今回、このような有機CMOSイメージセンサーの特長を維持したまま、撮像波長を可視光域から近赤外線域まで拡げるとともに、近赤外線域の感度を電気的に制御する機能を新たに付加する技術を開発した。

*ワイドダイナミックレンジ:明るいシーンの撮像とともに、撮像できる明るさの範囲(最も明るい部分と最も暗い部分の比)が広いこと。
*グローバルシャッター:全画素同時タイミングで行うシャッター動作。従来CMOSイメージセンサーは1行ごとにシャッター動作を行うローリングシャッター動作となっている。

2. 積層型有機薄膜へ加える電圧により、感度波長域をフレーム単位で全画素同時に変えることができる「撮像波長制御技術」

■ 撮像波長の電気的切り換えを可能にする有機薄膜の直接積層構造
可視光域に感度を有する有機薄膜と、近赤外線域に感度を有する有機薄膜を積層させることで、可視光域から近赤外線域までの光を捉えられるイメージセンサーを実現することができる。しかし、単純にふたつの感度波長の異なる有機薄膜を積層した場合、各々の有機薄膜へ電圧を加えるための電極と信号を読み出すための回路がそれぞれ一組ずつ必要。そのため、素子構造が複雑になり、画素サイズを小さくすることが難しいという課題があった。
この課題に対し、可視光域と近赤外線域に感度を有するそれぞれの有機薄膜に抵抗比を設けて直接積層した。そして、この積層型有機薄膜に電圧を加えることで、波長感度の異なる各々の有機薄膜に加わる電圧を、抵抗比に応じて変化させる独自構造とした。この構造により積層型有機薄膜に加えた電圧は、積層した各々の有機薄膜に、抵抗比に応じて分配されることになる。特定の閾値以上の電圧を加えないと感度が発現しないという有機薄膜の特性に着目して、各々の有機薄膜に加えられる電圧が抵抗比に応じて所望の値になるように有機薄膜を設計した。このような独自設計に基づく構造により、可視光域のみに感度を有する状態(図1の左図)と、可視光域から近赤外線域に感度を有する状態(図1の右図)とを一組の電極で電気的に切り替えることができるようになる。

図1 積層型有機薄膜を用いたCMOSイメージセンサーの画素構成と、 加える電圧により撮像波長域を切り替えた時の信号電荷をイメージした図

■ 人の目では見えない暗闇でも近赤外線域撮像で鮮明に
人の目では暗くて見えないようなシーンでも、近赤外線域での撮像によって鮮明に画像を取得することが可能。このため、例えば監視カメラでは夜間の視認性が向上する。一方、明るい環境ではイメージセンサーの近赤外線域感度をなくして可視光域のみでの撮像をすることで色情報を取得することも可能。同一画素内でセンサーの近赤外線域感度を制御できるという特徴により、赤外線カットフィルターを用いることなく撮像波長域を切り替えることができる。なお、今回評価した試作素子にはカラーフィルターが搭載されていないため、モノクロ画像での比較。

図2 暗い場所と明るい場所があるシーンを撮像した事例 可視光域のみで撮像した画面(左)、可視光域と近赤外線域で撮像した画面(右)

■ 画素欠落のない高精細な近赤外線域の撮像が可能
赤外カットフィルターを用いない可視光/近赤外線域撮像が可能なイメージセンサーには、一般に用いられるベイヤー配列のカラーフィルターの一画素を近赤外線域用の画素として割り当てる特殊なカラーフィルター配列を用いた方式がある。これに対して、本技術は近赤外線域の感度を全画素で同時に制御することで、近赤外線域の撮像時には4倍の画素数を実現できるため、画素欠落のない近赤外線域の撮像が可能。物質を透過する近赤外線の特徴を利用することで、例えば、肉眼では見えない物質内部の情報を非破壊で高精細に取得することができる。

*ベイヤー配列:イメージセンサー内の色フィルターの並び方のひとつ。2×2の4つの画素の色配列をRGGBとするもの。

図3 可視光域のみで撮像した画面(左)、可視光域と近赤外線域で撮像した画面(右) 近赤外線域撮像では水槽の醤油が透けて、奥にある瓶のラベルが認識できる

■ フレーム単位で感度波長域を切り換えた撮像が可能
イメージセンサーの近赤外線域感度を高速に電子制御することで、フレームごとに感度波長域を切り換えた撮像が実現できる。このような特長を利用すると、可視光域撮像による目で見たままの画像と、近赤外線域撮像による人の目では捉えることのできない埋もれた画像情報とを、わずか1フレームの差で交互に取得することが可能になる。ひとつのイメージセンサーで高速に動く被写体の色情報と近赤外線を用いた不可視情報を取得できることから、産業・監視用途のカメラへの応用が期待される。

図4 回転するボトルをフレーム単位で撮像波長域を切り換えて撮像した画像事例 可視光域と近赤外線域とで見え方の異なるインクを用いてQRコードを印刷しているため、 近赤外線域の撮像時にのみQRコード認識が可能になる

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