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  • 2018/07/18
  • Motor Fan illustrated編集部

【牧野茂雄の自動車業界鳥瞰図】 日本のモノづくりは、100年寿命を支えることができるだろうか

非競争領域で重複投資を続けている場合ではない。全ドイツ連合産学官機甲師団に対峙しなければならない

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日本のモノづくりを支えてきた下町工場群は後継者不足に直面している。理由は出生率低下と、そこに未来を見出せな いことだ。この写真のような試作品作りの現場を支えてきた下町工場の崩壊は、モノづくりの崩壊につながる。頭よりも 先に経験則で手が動く現場は絶対だ。人的資源の再配置を今後10年でやらなければならない(人とくるまのテクノロ ジー展・東京都大田区のブースにて)。
最近やたらと「人生100年」という言葉を耳にする。本当に寿命100歳が当たり前になるのだとすれば、社会システムを大きく変えなければならない。70歳定年で年金給付は80歳、クルマはレベル4の自動運転、社会コスト維持のための増税……などいろいろと思い浮かぶが、日本のモノづくりは果たしてその100年寿命を支えることができるだろうか。

TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)

 あと3ヵ月ほどで私は還暦を迎える。仕事を辞める気は毛頭ない。フリーの物書きには退職金がないから仕事を続けなければならないという経済的理由だけではない。自動車激動の時代に、自分が過去33年間に見聞きしたことを重ねれば、なにか世の中の役に立つ仕事ができるのではないかと思うし、それ以前に私は仕事が好きだ。少なくともあと10年は第 一 線で取材をし 、 記事 を書いていたいと思う。足腰が弱ったら後輩の役 に立つような自動車取材卒業論文を書く。死ぬまで仕事を続け、原稿を書きながら死ぬ。そんな生活を私は望んでいる。

 たまに会う同級生諸君からは定年延長の話をよく聞く。たとえ給料が半分になっても始終家にいるよりマシだ、と。「これからは趣味に生きる」という御仁もいる。「マッキン(私は小学校 からずっとこう呼ばれてきた)は自由業だからいいよな」と言われると、「趣味は仕事だから」と答えることにしている。事実だ。

 思えば大学時代より高校時代の友人のほうが 数が多い。私が通った日本大学芸術学部放送学科は1学 年 120人 ほどだった 。 東京都立両国高校第74期は 410 人いた。この差である。高校時代の友人は議員、官僚、会社役員、教授・教諭、 医師などお堅い職業がほとんどだが、大学時代の友人たちは音楽関係やテレビ業界、広告代理店、フリーライターなど私に似た職業が多い。 たまにそれぞれの人生を語り合うと、圧倒的に満足派が多い。つくづく幸せな世代だと思う。

「教授をつかまえて何時間も議論につき合わせた お前らのような暴れん坊はもういない。荒唐無稽な主張をする輩もいない。いま学部は女子6割 だ。男子もお行儀よく真面目になった」

恩師である教授はこう言った。

「牧野、会社訪問したか?」と訊かれ「3社ほどしましたよ」と答えた。学部推薦で時事通信社の試験を受けたが、なにを血迷ったかカメラマ ン志望で試験に臨み、写真プリント提出で見事 に落ちた。朝日新聞は長々と面接で引っ張られ 最後に落とされた。某大手広告代理店の2次面接で「テレビは嫌いなので見ません」と答えて落ちた。この3社は事前に訪問したが、内定をもら うような就活はしなかった。入社試験がすべての 業種にしか目が向いていなかった。そして大先輩記者のご尽力で就職浪人せず日刊自動車新聞社に就職し、ここで自動車産業と出会った。いま思えば幸運だった。

 そもそも私は理系志望だった。数学の先生とケンカし、高校2年の3学期から数学の授業をボイコットしたために選択肢は文系しかなくなってしまった。ところが、自動車という工業製品に触れてふたたび欲が出てきた。当時のトヨタのデザイン部長だった渚さんへのインタビューを機に、 学びたかった流体力学への憧れが頭をもたげ、 恩師にお願いして理工学部の授業を聴講させていただく手続きを取ってもらった。社会人になってからは学生時代以上に勉強した。

 いま私がモーターファン・イラストレーテッド 誌の仕事をいただけるのは 、 20代後半の自主的再教育の成果だと思っている。そして、毎号の特集のためのにわか勉強も12年続けば 相当な量になる。技術者諸氏や大学の先生方の話にもなんとかついてゆけるようになった。門前の小僧な んとやら、である。ある意味私は敗者復活の機会を与えられ、救われた。

 寿命 100歳時代になるのであれば 、 敗者復活の機会こそ必要だと思 う 。 70歳定年だとして大 卒で就業期間48年。折り返し地点のあたりで職 種や分野の転換、あるいはリフレッシュのための 休暇を1年取得できる権利を等しく与える。年齢にして45歳前後だから、思うところもいろいろ ある。自己採点の機会と次の目標の見定めは絶対に必要だ。

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