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3M・シンサレートとは──安藤眞の『テクノロジーのすべて』第9弾

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季節は大寒を迎え、いよいよ寒さも本番に入った。そこで、今回は断熱材のお話をしたい。近年、自動車業界では吸音材として名前が知られるようになったシンサレートは、実は断熱材として誕生したものなのだ。
TEXT:安藤 眞(ANDO Makoto)

 シンサレート(Thinsulate)とは、米3M社が1979年に市販化したポリエステル綿のこと。ポリエステル繊維を水鳥の羽毛(ダウンジャケットの中身)並に極細化し、綿の内部にたくさんの空気を含ませることで、高い断熱効果を得ようという狙いで作られた。ダウンの約半分の厚さで同等の断熱効果を得ることができることから、Thin(薄い)とInsulate(中綿)を合わせて、その名前が付けられた。
 僕がこの素材を初めて知ったのも、防寒ウェアの中綿としてだ。学生時代のある日、サイクリングクラブの先輩がシンサレート入りのウェアを着て自慢げに現れ、ひとしきりウンチクを聞かされたのだった。しかし30年以上経って、そのときの知識がこうして仕事に生かされることになるとは思わなかった。

3M・Thinsulateの構造。空気を多く含んだ薄く軽い断熱層を用いる。(FIGURE:3M)

 ではなぜ、シンサレートは優れた吸音材なのか。それには、吸音の仕組みを知っておく必要がある。

 “音”というのは、エネルギーの一形態。たとえば、電気エネルギーを機械エネルギーに変え、コーン紙を振動させて音に変えるのがスピーカーだ。ならばそれとは反対に、音のエネルギーを別のエネルギーに変えてしまえば、音を消すことができる。
 音のエネルギーは、空気の振動を介して伝わるということは、理科の実験で習ったことがあると思う。容器の中にブザーを入れて、真空ポンプで空気を抜いていくと、音は次第に聞こえなくなっていく。だから宇宙空間では音は聞こえないはずで、スターウォーズの爆発シーンで大きな音がしたら「そんなわけないだろ!」と突っ込むのが、理系人間のたしなみだ(引かれるのでやめたほうが良い)。

電子顕微鏡による各種繊維の比較。シンサレートの繊維径の細さがよくわかる。(FIGURE:3M)

 余談はさておき、空気の振動を、摩擦を利用して熱エネルギーに変えるのが、吸音材の原理である。空気には粘性(粘り気)があり、物体の表面に粘り着いて摩擦力を生じる。これが空気抵抗の一因でもあるのだが、その話はまた別の機会にするとして、吸音効果を高めたいのであれば、同じ体積の中で、空気と物体の摩擦面積をできるだけ増やせば良いことがわかる。それには、細い繊維を複雑に絡み合わせるのが効果的で、雑布フェルトよりグラスウール、グラスウールよりシンサレートのほうが繊維が細いため、より吸音効果が高まる、というわけだ。しかもシンサレートはポリエステル繊維なので、雑布フェルトやグラスウールより軽く、クルマに使うには、いろいろな面で具合が良い。

 そういえば、「発熱する繊維」の先駆けとなったミズノのブレスサーモも、もともとは緩衝材として開発された素材が、別の用途に転用された例。でも、これをクルマの何かに利用するのは、ちょっと難しいかナ?

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