テクノロジーがわかるとクルマはもっと面白い。未来を予見する自動車技術情報サイト

  • 2019/01/20
  • Motor Fan illustrated編集部

【牧野茂雄の自動車業界鳥瞰図】自動車新興ブランドの「夢」と「現実」QOROS、Lynk&Co、ボルグヴァルト、ビンファスト……

このエントリーをはてなブックマークに追加
2016年北京モーターショーでのボルクヴァルト・ブース。ほとんどの来場者にとってボルクヴァルトは聞いたことのな い名前だったようだ。かくいう筆者も知らなかった。中国はこうした新しいものを好意的に受け入れる土壌がある半面、 買い物には「口コミ」が大きな影響を与える。「自動車販売店へは絶対にひとりでは行かない。うまく丸め込まれるから」 も中国だ。19年の中国市場はどうなるだろうか。
QOROS、Lynk&Co、ボルグヴァルト(Borgward)、ビンファスト(Vinfast)……アジアに生まれたこれらの自動車メーカーの名前は、日本ではほとんど知られていない。20世紀末には「もう自動車メーカーは生まれない」と言われていたが、新興メーカーは生まれている。しかも以前には予測すらできなかった手法で生まれている。問題は成功できるか、だ。競争は激しい。

 2017年にベトナムで誕生した新しい民族資本の自動車メーカー、ビンファストの工場が18年秋に完成した。港湾都市ハイフォンにある広大な埋め立て地に建設された工場だ。まず電動バイクの生産を始め、19年夏から4ドアセダンとSUVの生産を開始する予定だ。ビン・グループはベトナムの投資グループであり不動産業大手でもある。同社は設立趣意書のなかでベトナムに「ベトナム資本の自動車メーカーを誕生させたい」という思いを綴っていたが、同時に自動車メーカーは「確実に儲かる」との目算があったのだろう。

 ビンファスト最初の量産乗用車として発表された4ドアセダン「LuxA2.0」は、BMW5シリーズの旧型、F10型と呼ばれ09年から16年まで生産されたモデルのボディ骨格を使う。同時に量産が始まるSUVの「LuxSA2.0」はBMWX5の旧モデル、13年から生産され、つい先ごろ(18年10月)まで生産されていたF15型がベースである。これには少々驚いた。旧型とはいえ、BMWがプラットフォーム外販に乗り出したのである。

 BMWは中国・華晨汽車との合弁会社にミニおよび2シリーズ・グランツアラー/アクティブツアラーで使用しているFFプラットフォームを提供し、BMWブランドの中国市場専用セダンとして量産を開始している。外観デザインはBMWが手がけた。しかし、ビンファストに権利を販売したのはBMW伝統のFRプラットフォームであり、内外装デザインはビンファストの自由という契約だった。

 ベトナム生産されるF10プラットフォームが果たして旧5シリーズ用をそのまま踏襲しているかどうかは公表されていない。F10はボディ骨格に熱間成形鋼板やDP(二相=デュアルフェーズ)およびTRIP(三相=トライフェーズ)の高張力鋼を使用し、もっとも大きな力を受ける前輪ストラットタワーはアルミ鋳物製だ。接合にはレーザー線溶接と構造接着剤を多用するほか、ボンネットフード、フェンダー、4枚のドア外皮はアルミ合金製である。これらをビンファストが内製するのか、それともドイツから調達するのか、あるいは設計変更するのか。ここはまだ伝わってこない。

 ただし、ビンファストに協力する企業のリストを見れば「F10の設計そのまま」でもモノになりそうな気がする。オーストリアのマグナ・シュタイアーとAVLはエンジニアリング部門で参画し、マグナは車両実験までを請け負っている。デザインはイタリアの名門・ピニンファリーナとイタルデザインが担当した。部品・ユニットのサプライヤーにはドイツ系が多い。この布陣は、中国の奇瑞汽車がイスラエルの投資会社と共同でQOROSAuto(観致汽車)を立ち上げたときに似ている。

 QOROSの市販モデル開発は多国籍軍の仕事であり、たとえばボディの衝突安全性能はサーブ・オートモーティブから移籍したチームが手がけ、制御系の開発担当には日本人エンジニアもいた。資本は中国とイスラエル。実働部隊は欧米日のエンジニア。現時点では大成功と呼べるほどの販売実績ではないが、形態としてはまったく新しい自動車メーカーである。そしてこのQOROSを追って、似たスタイルの自動車メーカーがベトナムにも誕生した。それがビンファストである。

自動車起業に前向きな中国。この先はどうなる?

自動車業界の最新情報をお届けします!


大車林

大車林

基礎原理から最新技術、産業、環境、行政、モータースポーツ、デザインまで、クルマ社会をキーワードで理解する自動車総合情報・専門用語事典『大車林』の検索サービスです。

キーワードを検索
注目のキーワード
FIA
国際自動車連盟。JAFやADACなど各国の自動車協会が加盟する国際連盟で、いわば自動...
電動チルトテレスコピックステアリング
スイッチを押すだけで、モーターによってステアリングコラムを上下(チルト)および...
FISA
FIAのモータースポーツ部門。一時期は国際自動車スポーツ連盟(FISA)と呼ばれていた...

カーライフに関するサービス

ランキング

もっと見る
@motorfan_illustrated