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  • 2019/03/18
  • Motor Fan illustrated編集部

ZFのEモビリティ:サーキットでは速く、一般道では長く、走行が可能

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ZFは、ショックアブソーバーおよびトランスミッションとインバーターを含む電動パワートレインをフォーミュラEのマシンに供給
フォーミュラEのシーズン5、ZFはモーター、トランスミッション、インバーターを統合した新しい電動パワートレインを開発しヴェンチュリーに供給

 ZFは2016年にヴェンチュリーとテクニカルパートナーシップを結び、FIAフォーミュラE選手権(FE)への参戦を始めた。昨年12月に開幕した第5シーズンでは、モーターおよび新開発のトランスミッションとインバーターを統合した新開発の電動パワートレインを同チームに提供している。シーズン4終了からシーズン5開幕まで、3か月間で完成したこのパワートレインは、ZFグループ全体のシステム開発に関わるノウハウを結集し、これまでにない新しいアプローチで開発されたもの。FE香港戦ではレース初勝利と今シーズン5位という好成績を残し、これまでの開発努力が結果に結びついた。限られた期間での技術開発が求められるとともに、非常に過酷な条件下で争われるモータースポーツにおいて得られた知識と経験は、ZFの量産車向け製品開発にも大きなメリットをもたらす。

「ZFは、一般の自動車、バス、商用車向けの電動パワートレインを量産するだけでなく、1/100秒を争う過酷なモータースポーツの世界にも電動化技術を提供しています」と、ZFのEモビリティ事業部責任者のヨルグ・グローテンドースト氏は述べている。ZFの最先端技術を活用した最高出力250kWを発生する最新の電動パワートレインが、モナコに拠点を置くヴェンチュリー・フォーミュラEチームのマシンに搭載されている。

 FE香港戦でエドアルド・モルタラがヴェンチュリー・フォーミュラEチームに初勝利をもたらした。また、元F1ドライバー、フェリペ・マッサも5位入賞を果たし、ヴェンチュリーとZFにとっても最高のレースとなった。

ZFのパワートレイン搭載のマシンで香港戦で初優勝をおさめたエドアルド・モルタラ(左)と今シーズン最高の5位入賞を果たしたフェリペ・マッサ

短期間での開発作業

FEのプロジェクトマネージャー、トバイアス・ホフマン氏のコメント:
「モータースポーツという世界で、1/100秒を削るための性能に焦点を当てた技術開発はとてもやりがいのある仕事です。開発プロジェクト開始からサーキットでのテスト走行まで1年半しかなかったため、パワートレインの設計は、わずか数か月で行いました。その後、パーツの調達、ベンチテスト、走行テストを経てサウジアラビアで行われた開幕戦に向けた実戦用のユニット製作が行われました」

「開発においては、短期間に多くの修正や設計変更などに対応する必要に迫られました。また、例えば決勝レース中の一定の時間、25kWのパワーアップが許可される『アタックモード』の導入など、開発の終盤になって重要な変更が行われたこともありました」

 当初から、効率面や軽量化、耐久性などに関する目標値は明確に定められている。FEでは、1シーズンに全13戦が行われ、予選・決勝などを含めると総走行距離は5,000キロを越える。この間、パワートレインコンポーネンツの交換は1回しか許されず、2回目以降の交換が行われた場合には大きなタイムペナルティが課せられる。

システムアプローチによって高効率と軽量化を実現

 最高の性能と軽量化実現のため、ZFはシステム化に関するノウハウを活用し、専用設計のインバーターとトランスミッションを組込んだ、エネルギー変換効率の非常に高い電動パワートレインを開発した。素材、歯車の精度と噛み合わせ、潤滑と冷却などに関する知識と経験を最新のインバーター技術と組み合わせることで、最適なパッケージングが可能になった。ホフマン氏によれば、「こうした『システムアプローチ』を採用せず、それぞれの部門が個々に開発作業を行っていたら、あまり結果は出せなかったと思います」。

 軽量合金製のトランスミッションハウジングなど、このパワートレインには軽量金属とカーボンを多く使用し大幅な軽量化が図られている。インバーターにはシリコンカーバイド製チップセットが初めて採用された。この素材はチップセットを従来の1/10の薄さにすることができるため、内部抵抗の低減が可能でバッテリーから供給されるエネルギーの使用効率向上と走行可能距離の延長につながる。さらに、ドライサンプ方式の潤滑システムはオイル量を最適化することで攪拌抵抗が軽減し、減速ギヤにおけるエネルギー変換効率を向上させるなど、新しい冷却と潤滑システムも軽量化と高効率を実現している。

量産用ユニット開発への応用

 FEを通して得られた経験やデータは、新しい技術の開発に直接取り入れられていく。例えば、レーシングカー用に開発されたモーター内部のステーターの特別な巻線を巻くプロセスは、量産車向けへの応用が徐々に進んでいくと考えられる。また、インバーターへのシリコンカーバイドの使用は、3~4年後をめどに計画している。

 モータースポーツ向け電動パワートレインの開発はまた、テスト環境の改善にもメリットをもたらした。効率の向上に焦点をあてた開発においては、ごくわずかな違いも無視できない。100%に近いエネルギー変換効率をもつFEのパワートレイン開発では、テストにおける測定にも高い精度が要求される。この経験から得られた高精度な測定セッティングは、ZFの量産向けプロトタイプ開発プロジェクトにおける試験環境の改善にすでに役立てられている。

「電動小型バスやバンなど、自動車業界に新規参入する企業とのビジネスにおけるシステム開発では、多くの不確定要素が存在します。これは、モータースポーツ向けの製品開発によく似ています」と、ホフマン氏は時間の制約の中で新しい方向を模索する経験が、将来の開発に役立つと述べている。詳細な要求スペックが決められていない状況でありながら、最適なシステムアプローチを通して高効率なパワートレインの開発を成し遂げたZFのエンジニアの経験は、今後の技術開発において大きな力となるだろう。

量産車向け技術への応用:シリコンカーバイド製半導体は、フォーミュラEだけでなく、一般車両向け電動ドライブの効率向上と走行可能距離延長をもたらす

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