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ダウンサイジング過給エンジン:なぜエンジンをダウンサイジングすると効率が良くなるのか?

  • 2019/03/24
  • Motor Fan illustrated編集部
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「ダウンサイジング」を膾炙した立役者・フォルクスワーゲンのTSI。

フォルクスワーゲンが口火を切って、世界中の自動車メーカーが追随した過給ダウンサイジング。排気量を落としてターボ過給するダウンサイジング。その効果は世界中で認められているとおりである。ではそもそもなぜ排気量を落とすのか。排気量を落とすと何がいいのか。あらためて考えてみよう。

 エンジンが吸入する空気を何らかの手段で加圧し、その密度を上げ、より多くの酸素分子をシリンダー内に存在させる。その酸素量を使い切るために燃料も増やし、結果としてエンジン排気量以上の仕事を得る。これが過給=スーパーチャージングである。
 エンジンの排気量以上に空気+燃料を押し込み、同じ出力/トルクの得る。逆に考えれば、同じ出力/トルクのエンジンを、より小さな排気量でつくれる。その結果は現在隆盛を誇るターボ過給エンジンの数々を見れば明らかだ。

 地球規模で見たときに、CO2排出量をできるだけ抑える。同時に、個人としての燃料出費を抑える。これを両立させる手段としては、エンジン排気量の縮小が有効だ。自動車の利便性を捨て去るという選択肢が非現実的である以上、3000cc車ではなく2000cc車を選ぶ、2000cc車よりも経済的な1400cc車を選ぶ……という「クルマ選びの意識改革」が重要だ。しかし、排気量を抑えるとエンジンの仕事量が小さくなってしまう。いままで3000ccでエンジンを引っ張っていた自動車のボディに2000ccエンジンを載せるとなると、さまざまな工夫をしないかぎり3000ccと同等の出力/トルクは得られない。かえって燃費が悪化することもある。そこで過給に注目する。

 では、なぜ排気量縮小が試みられたのか。その理由のひとつは、エンジン排気量と機械抵抗の相関関係にある。

 通常、ガソリン(オットーサイクル)エンジンは吸入空気量で出力をコントロールする。そのため、スロットルバルブが必要になる。エンジンの発生トルクが小さい運転状態では、スロットルで吸気を絞る。このときにポンプ損失(ポンピングロス)が発生する。これは気筒当たりの燃焼室容積に関係なく吸気絞りを行う領域では必ず発生するロスだ。そして、摩擦抵抗損失(フリクションロス)とポンプ損失の合計である機械抵抗損失は、エンジン排気量に比例する。大排気量エンジンほど、無駄にエネルギーを消費する割合が大きいのである。

W124型メルセデス・ベンツEクラスに搭載された3ℓ級エンジンと4ATでのデータ。時速40kmまでの緩加速においては、エンジンは自らの機械損失(フリクションロス)に打ち勝つため、仕事量の約4分の1を消費してしまう。すべての走行条件を合計すると、30〜40%の仕事量は「エンジン回転を維持するため」に費やされるエネルギーということになる。

 上のグラフは、3000cc級エンジンの4AT仕様という、やや古い組み合わせでのデータだが紹介する。アイドリング時の約6kWの出力(燃焼ガスがピストンを押すパワー)のうち約6割は、エンジン回転を維持するために消費されている。残りはAT内のトルクコンバーターの滑りである。時速40kmの緩加速では約40kWの出力であり、このうちクルマを「走らせる」ために消費されている分は約57%に過ぎない。重量物を加速させるのに必要なエネルギーと、転がり抵抗および空気抵抗に打ち勝つための必要なエネルギーの合計が57%である。

 時速60kmでの定速走行では、約16kWの出力で済むが、このうちクルマの走行に充てられているのは約半分。時速100kmでの定速走行になると、エンジン回転を維持するために必要なエネルギーの絶対値が大きくなる。つまり、実際の走行では、エンジンが発生する機械的エネルギーのうちかなりの部分を機械抵抗損失として消費してしまう、ということだ。全負荷状態ではあまり問題にならない機械抵抗損失が、日常領域では大きなロスとなることがご理解いただけると思う。

 エンジン排気量を半分にすれば、その損失は約3分の2から2分の1程度まで減少する。過渡域(パーシャルスロットル)での使用が多いのなら、大排気量エンジンはいらない、と言っていい。

スロットルバルブによるポンピングロスを極力なくしたい。ならばスロットルバルブを廃してしまい、吸入空気量は吸気バルブのリフト量でコントロールしてしまおう。そのように考えたのがBMWバルブトロニックである。

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