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いすゞ・NAVi5は本当に失敗作だったのか(その1)世界初のバイ・ワイヤー技術搭載の意義と成果

  • 2019/04/13
  • Motor Fan illustrated編集部
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NAVi5のシフトレバーは通常のMTのようなH型ゲートを持つが、シフト・バイ・ワイヤーゆえ操作はあくまでも疑似。支点を軸に動かすリンクではなく、単なるスイッチ構造のため、操作感も大きく異なっていた。

今から35年前、いすゞ・アスカに搭載され登場を果たしたNAVi5。New Advanced Vehicle with Intelligentの頭文字をとって名付けられた同システムは、先例がなく、概念すら定まっていなかった自動制御に果敢に挑戦した意欲作だった。実現のためにはバイ・ワイヤー技術が不可欠。果たして開発陣はいかにしてNAVi5を仕立て上げたのか。

 フォルクスワーゲンのDSGを端緒に、DCT:デュアルクラッチトランスミッションは一気に世の注目を集め、伝達効率の良さと断続のないトルク感を長所として、欧米勢を中心に普及が進んでいる。それと並行し、主に低廉価車へAMT:オートメーテッドマニュアルトランスミッションの採用がある。AMTとはクラッチの断続とギヤ段選択を自動化したMTであり、つまりDCTはデュアルクラッチAMTとも言える機構である。

 AMTは通常のMTの動作を自動化したトランスミッションなので、クラッチは1組、ギヤセットも通常の平行軸構成の常時噛み合い式である。運転時にエンジン回転が上昇すれば高いギヤ段に架け替える必要が生じ、クラッチ断続の際にはどうしてもトルクが切れる瞬間がある。自身で断続を操作すれば気にならないこのトルク切れは、他者に任せると大きな違和感となってしまう。

 本稿のテーマであるNAVi5の開発と対策も、このトルク切れとの絶え間ない戦いであった。自動でクラッチを断続し変速するためにはシフト・バイ・ワイヤー:SBWは当然不可欠。当時はハードウェアの進化が思想に追いついていなかったため、志半ばでNAVi5は退場を余儀なくされたとされている。あと10年登場が遅ければ──とはよく同システムを語るときに掲げられる前提である。

 しかし、NAVi5の意義はシフト・バイ・ワイヤーだけではなかった。燃料供給システムも、つまりスロットル・バイ・ワイヤー:TBWも成し遂げていたのである。世界で初めて、と言っても差し支えないほどの早期に、SBWとTBWを携え、しかも実用化を果たしたNAVi5とは、どのようなシステムだったのだろうか。

「人間の感性に近い透明の空間ロボットを運転席にすわらせる。通常ドライバーが行っている面倒なクラッチ操作やギヤチェンジ操作は感性ロボットが代行する。運転席の本当のドライバーはアクセルとブレーキを踏んでその意思をロボットに伝えるだけで良い」


 これが、いすゞ・NAVi5の開発チームの立ち上げたコンセプトである。大部分がすでに現実となっている2019年の今ですら荒唐無稽とも思えるこの声明が、当時の人々に与えた衝撃は推して知るべし。果たして、なぜこのようなコンセプトを彼らは打ち立てたのだろうか。

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