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内燃機関超基礎講座 | バイクにもターボ。カワサキ750ターボとはどんなバイクか。

  • 2020/08/27
  • Motor Fan illustrated編集部
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自動車にターボが採用されるようになって間もない1980年代初頭。国産二輪メーカーがこぞってターボモデルを発表した時期があった。
TEXT:髙橋一平(TAKAHASHI Ippey) PHOTO:瀬谷正弘

(ILLUST:KHI)

■ カワサキ750ターボ(1984年)
エンジン形式:空冷直列4気筒DOHC2バルブ
総排気量:738cc
ボア×ストローク:66.0×54.0mm
圧縮比:7.8
最高出力:82.4kW(112ps)/9000rpm
最大トルク:99.1Nm(10.1kg-m)/6500rpm
過給の種類:ターボチャージャー
燃料供給:フューエルインジェクション

 カワサキ750ターボ(750 turbo)は1984年に発売。エンジンは動弁系に1気筒あたり2バルブのDOHCを採用する空冷式の4気筒。これにターボを組み合わせることで、112ps(82.4kW)という当時としては破格のパワーを絞り出す。ターボユニットやインジェクションなどといった“四輪的”な部分はJECS製(現・日立オートモティブ)パーツで構築されていた。発売翌年の1985年にその生産を終了。以来ターボ付きの二輪車は姿を消している。

 当時聞かれた不評は、主にターボラグの存在と、電子制御インジェクションシステムの不調というものだった。しかし、あらためて乗ってみると、圧縮比7.8ということもあって、ターボラグは確かにあるものの、今となっては112psもさほど驚くほどのものではなく、ブーストがフルに掛った状態でも“程良い”レベルのパワー。ターボラグがむしろ新鮮で“楽しい”と感じるほど。

 また、インジェクションについては、当時“CB無線で急加速する”と囁かれたが、今考えてみれば電子制御スロットルを装備しない同車にはあり得ない現象とわかる。日立製8ビットCPUを搭載するECUや、並列配線されたインジェクターなど、あまりにシンプルでありながら、二輪として問題ないレベルのドライバビリティが確保出来ていることがむしろ興味深い。何しろフィードバックなしのオープンループ制御なのだ。

 時代が早過ぎたためか、世に受け入れられなかったターボだが、他にない独特な魅力が存在することは間違いない。新たな技術開発を背景に、自動車用ターボが復権する現在。二輪にも再びターボを、と筆者は切に思うのである。

 カワサキ750ターボに搭載されるエンジンは、排気量738ccの空冷4気筒。これに日立製のHT10-B型タービンを組み合わせる。現役当時は巷で“軽自動車用”と囁かれたが、実際には自動車用(ガソリンエンジン)としては1.0~1.5ℓ用に相当するサイズだった。HT10-Bは基本的には750ターボ専用品だが、型番がHT10まで共通となるものが1989年の日産マーチ・スーパーターボや、マツダのRF型エンジン(2.0ℓディーゼル)にも採用されている。最大ブースト圧は0.65kg/cm(20.64bar)。

タービンホイールは10枚のブレードで構成されている。ウェイストゲートは空圧アクチュエーター駆動のスイングバルブ式。ハウジングはバンド固定式だ。
12枚のブレードを備えるコンプレッサーホイールの径は50mm。タービンシャフトはフローティング式のメタルで支持。シャフト径は9mm。
ターボのオイルアウトレットの位置が通常のオイルパンよりも低いため、ターボ専用のサブオイルパンを追加。専用のスカベンジングポンプも備える。
配管の都合や、スペース的な制約から、エアクリーナーボックスをトランスミッション左側に配置。二輪車としてはきわめて特異なレイアウトだ。
ミクニ製の4連スロットルに1本当たり150cc/minの容量を持つJECS製インジェクターを組み合わせる。バルブタイミングに依存しない4本同時噴射となっている。
シート下に配置されるインライン式の燃料ポンプ。上に見える黒い箱はサージタンク内の圧力を検出するブーストセンサー。

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