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内燃機関超基礎講座 | スバルのフラットシックス! 惜しまれながら勇退[EZ36]

  • 2020/09/06
  • Motor Fan illustrated編集部
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エンジン両側端に燃焼室が位置する水平対向エンジンはいかに「横幅を切り詰めるか」が設計上の重要なポイントになる。富士重工(現スバル)は6気筒版で「外形寸法を変えない排気量拡大」をやってのけた。EZ36に注がれた技術の向こうに、将来のエンジンが見える。
TEXT:牧野茂雄(MAKINO Shigeo)
*本記事は2008年5月に執筆したものです

富士重工(現スバル)が乗用車用に持つ最大排気量エンジンであるEZ36型は、従来の3ℓ水平対向6気筒エンジン・EZ30型の外寸を変えずに排気量を3.6ℓまで拡大したものだ。同時に、従来は吸気側だけだった可変バルブタイミング&可変リフト機構を排気系にも導入したほか、排気量拡大で増加した熱負荷に対応するため冷却系の見直しも行なわれた。

EZ30前期/後期とEZ36のスペック比較

ボア92mmはEJ20と同じ。ストロークは91mmであり、比率はほぼスクエアになった。従来のEZ30はボア89.2×ストローク80mmというショートストロークだったが、ボアピッチもデッキハイトも変えずに気筒当たり排気量を拡大している。ボア92mmはEJ20と同じであり、これまでに膨大な燃焼データを蓄積していることから考えれば、このボア寸法の選択は自然な流れだ。通常の同排気量クラスに比べれば92mmはビッグボアだが、かつて「F2」フォーミュラ用のハート・エンジンも92mmだった。ボア拡大に当たっては、ボア間の肉厚を削ぎ、ライナー厚を2.5mmから1.5mmに変えて対応している。ストロークは11mm延びたが、コンロッド回転軌跡が大きくなるぶんはエンジンブロック側を削っている。エンジン外寸据え置きという大前提を守るため各部がぎりぎりの寸法となり、コンロッドは斜めかち割にしてボルト締めの組み付け性を確保している。非常にタイトな設計である。

気筒当たり排気量が拡大すればコンロッドが受ける慣性力も大きくなるが、厚みは従来と同じ。素材もAl/Si/Cu系の鋳造用合金ADC12のままで、生材焼き入れと表面窒化処理である。ジャーナル側の慣性力アップはジャーナル高の増加で対応し、ジャーナル厚は変えていない。

EZ30型。水平対向の宿命として横幅が大きいものの、3ℓ級エンジンとしてはコンパクトにまとまっている。このイラストは初期型でありインテークマニフォールドがアルミ。現在の規準で見れば「余裕のある設計」とも言える。

ユーザーが受けるメリットはトルク/出力の増加だけではない。レギュラーガソリンで10.5の圧縮比を達成している。米国でのラベル燃費は変わらないから、燃料費をセーブできる。これは吸排気系両方に可変バルブイベント機構を組み込んだ成果だ。オーバーラップ量の制御による掃気/新気導入の効果と実膨張比/実圧縮比のコントロールが効いているのだろう。吸排気ともバルブ径を拡大しポート形状も変更しているが、ガス流動の最適化で燃焼速度を上げているのだろうか。

一見したところ後期型EZ30と変わらないEZ36だが、エンジン主機の部品は90%が見直され、結果的に重量は1kg軽くなった。3.6ℓになった理由は「できるだけ排気量を拡大したかったから」だというが、さらに詰めれば「あと120ccは増やせる」?

冷却系には大改革が施され、シリンダーブロック側はフリクション低減を狙って最小限の冷却とし、ヘッド側に水流量の8割を振り向けるよう水路を分けた。中低速域高負荷でのノッキングを抑えられたことでレギュラーガソリン使用が実現した。富士重工のエンジニア諸氏は、ストイキ直噴化を含めた改良の姿を視野に入れていると、当時の取材では語っている。

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