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内燃機関超基礎講座 | SKYACTIV以前のマツダ直噴ターボ。日本初のダウンサイジング[L3-VDT]

  • 2020/09/27
  • Motor Fan illustrated編集部
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SKYACTIV-G 2.5Tに先立つこと11年前、マツダは直噴ターボエンジンを登場させていた。その後ミニバン/SUVにこれを搭載、日本で初めてダウンサイジングターボを成し遂げている。果たしてどのようなエンジンだったのだろうか。

DISIターボと称したL3-VDT型の登場は2005年のこと。マツダスピードアテンザへの搭載だったから、ハイパフォーマンスを期待したエンジンだった。ところがマツダは同機搭載の次弾としてミニバンであるMPVを採択、ここに日本初のダウンサイジングターボが現れることとなった。

MPVに載せるにあたっては、エンジンの中低速トルク強化に意が払われた。

 272ps(200kW)/5500rpm 380Nm/3000rpm【MSアテンザ】
 245ps(180kW)/5000rpm 350Nm/2500rpm【MPV】

A/Rの違いによるトルク特性の違い(FIGURE:MAZDA)
ご覧のとおりパワー/トルクともに抑えられているが、注目すべきは500回転も下げたその発生回転数である。トルク強化に寄与したのがタービンハウジングのA/R値の縮小(16.5mmから12.7mm)およびコンプレッサインペラの小径化(45.1mmから41.7mm)だった。いわゆる「ターボの小型化」にあたる手段で、これらにより低回転からの過給効率の向上を図り、結果としてMSアテンザに対して2000回転時では22%ものトルク増強を実現している。なお、ターボチャージャーは日立製のシングルスクロール型。

その後CX-7にもL3-VDTは搭載され、その際にメイン市場である北米での使用形態に対応したターボの耐熱性を勘案し、材質をインコネル系からMM246に改変している。

左:加速時のローンチフィール/右:過給圧の立ち上がり(FIGURE:MAZDA)

もうひとつの白眉・筒内直噴については、登場時から、ターボエンジンに使用するにあたりダイナミックレンジの拡大が図られた。これは、高出力発揮時の大流量と低負荷時の小流量吐出を両立させるため。前者についてはソレノイドインジェクターに最大5.8mmのストローク量を与えることで875立方ミリメートル/rev.の理論吐出量を実現、後者については制御ソレノイド特性の最適化で対処している。噴霧角は63度、吐出圧は全負荷時で11.5MPa/低負荷時に3MPa。スワールを発生する墳孔形状とした側方配置型である。これにより、吸気バルブを自然吸気と同じ35mmにとどめることができた。

ボア間ドリルスリットの様子(FIGURE:MAZDA)
内径/行程値は自然吸気版と同じだが、過給に伴うストレス増大に対処するため、シリンダブロックを強化した。高圧高温になるシリンダ上部の素性を緻密化し高強度化、熱交換が厳しいボア間にドリルスリットを設けることで冷却の均一化を図っている。ピストンはピン径を自然吸気版の21mmに対して22.5mmに拡大、リング厚も1.2mmから1.5mmに拡大して高圧に対処する。コンロッドは高強度綱により合成と重量を両立した。クランクシャフトは自然吸気版が鋳鉄だったのに対して鋼製としクランクピンを大径化(50mmから52mm)と、もはやディーゼルエンジン並みの改良であった。

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