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サスペンション・ウォッチング | ルノー・メガーヌR.S.[II]実存転舵軸/ダブルアクシスストラットとは何か

  • 2020/10/14
  • Motor Fan illustrated編集部
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ルノー・メガーヌRS(Ⅱ)のサスペンションはフロントに「実存転舵軸」を持つ独特の設計になっている。その狙いを考えてみよう。
STORY:國政久郎(KUNIMASA Hisao) TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

2006年は、サスペンション・ウオッチャーにとって印象深い年だった。この年に登場した2台のフランス車が打ち出した新機軸に、いたく感心させられたことがその理由だ。1台はプジョー407。そしてもう1台が、このルノー・メガーヌRSである。

この2車の特徴は、フロントに「実存転舵軸」を持つこと。407はダブルウィッシュボーン、メガーヌRSはマクファーソン・ストラットと、基本形式こそ異なるが、目指しているものはまったく同じだ。特にメガーヌRSは、ストラットの中にこの機軸を織り込んだ点が素晴らしい。出来上がったモノを見てしまえば、それまで誰もこのやり方に気付かなかったことが不思議に思えるほど正攻法かつシンプルなアプローチである。

プジョー407のフロントサスペンション(ILLUST:PEUGEOT)

サスペンションに求められる事柄は、いつの世も変わらない。しかし、目的は同じでも、最適解を求める手法には、時代ごとのトレンドがある。その時々で主流の理論と、使える技術アイテムによって、アプローチ方法がある範囲に収束してくるからだ。

転舵軸の作り方を例にあげれば、可能な限り立ててタイヤの中に入れておきたい。また、路面からの攻撃に対する抵抗力をキープする意味で、なるべくオフセットさせずに接地中心近傍に置いておきたい。これが不変の要求である。

その実現を目指し、さまざまな試みが重ねられて来たが、ひとつのターニングポイントになったのが、1966年に登場したスバル1000だ。FFのフロントサスに実存転舵軸を持たせるレイアウトを実現。ホイール径が小さかったためにブレーキとの共存が難しく、インボードブレーキ化せざるをえなかったが、その目的は十分に達成され、後のシトロエンやアルファロメオにも影響を与える存在となった。

時が下り、1980年代末になると、「仮想転舵軸」を用いたアプローチが流行する。メルセデス・ベンツが先鞭をつけた、いわゆるマルチリンク方式だ。複数のリンクを組合わせて構成することで、ストローク変化によらず仮想の転舵軸をタイヤの接地中心付近にキープする、という発想である。

そして2006年に登場した407とメガーヌRSは、実存転舵軸を設けながら、ブレーキ等もコンベンショナルな配置とする、新たな構成手法を実現した。

スバル1000のパワートレイン/ドライブトレイン(PHOTO:SUBARU)

では、なぜ実存転舵軸なのか?を、自分なりに考察してみよう。欧州では、少し郊外に行くと、あまり舗装状態の良くない路面をハイスピードで走ることが珍しくない。フランスも例外ではなく、むしろそのような機会が比較的多い国情である。そんな状況下で安定して走り続けるためには、微舵領域のインフォメーションと応答の適切さが重要になってくる。そこを突き詰めると、転舵軸は仮想ではなく、やはり実存していることに越したことはない。

一方で、エンジン出力の向上と、衝突安全性能要求の高まりなどから、クルマのサイズに対する重量はどんどん大きくなってきている。つまりタイヤに要求される能力が高まるので、サイズアップせざるをえない。するとタイヤ/ホイールの重量が増すので、対策としてステアリングにパワーアシストが標準装備される。アシストの存在が前提となれば、自然とレシオは速い方向に振られることになり、操舵フィールや直進安定性などのまとめが難しくなる。また、アシストに頼ることでネガが見えにくくなってしまう傾向も無視できない。たとえば電動アシスト型のなかに、勝手に舵を戻すような動きを見せるものが少なくないことも、これに起因している。

このような流れから脱却するためには、サスペンション全体の構成を見直す必要がある。その結果として出現した「本来あるべき姿の再発見」が、この2車のフロントサスペンションだ。出発点になっているのは、車重の増大にともなうタイヤ/ホイールの大径化傾向。内部のスペースが増えたことで、ブレーキローター、キャリパーとともに、実存転舵軸を備えるハブキャリアを無理なく収められるようになった。ハブキャリアとアップライトは、それぞれが受け持つ力の方向を完全に分けたことで、パワーアシスト前提のセットアップが舵の正確さに与えた悪影響を、帳消しにして余りある効能を実現している。また、レイアウトの工夫によってドライブシャフト長を大きく取っていることで、長いストロークも確保している。

結果としてこの2車のステアリングは、操舵が軽く、フィーリングも自然で一定であるだけではなく、舵の正確さも直進安定性も、非常に高いレベルを実現している。ただし、メガーヌRS自体はサーキットレベルも含めて仕立てられているとおぼしいため、日常領域ではセットアップに不満を覚える点もないではない。この構成が標準車に採用される日を楽しみにしている。

オレンジの破線で転舵軸を示す

右側のフロントサスペンションの図。アップライト②にハブキャリア①をマウント。ドライブシャフトを通すスペース確保のため、ハブキャリアを留めるボルトは上下別だが、それぞれの中心点を結んだ線が実存の転舵軸として機能する(オレンジの破線)。ハブキャリアは回転方向の動き/力だけを受け持ち、アップライトは上下方向の動き/力だけを受け持つ。

④のアンチローテーションリンクは、アップライトの回転方向への動きを制限するためのもの。いかにも華奢で頼りなく見えるが、前述のように受ける力を完全に分離しているため、これでも強度・剛性に問題はない。タイロッドとロワーアームの位置関係も良好。

同じく、オレンジの破線で転舵軸を示す

上の図は転舵軸(オレンジの破線)とタイヤ接地面の関係を示す。転舵軸の路面側はタイヤセンターより外側に出ているように描かれているが、実車で各パーツの位置関係を確認したところ、これほど外側に出てはいないように見えた。停止状態でステアリングを据え切りしてみたが、タイヤが路面にこすれてできる痕跡は中心点から若干だけ膨らんだ楕円形状を描いていたので、実際のオフセット量も相応にわずかなものと推測できる。ロワーアームは路面に対して下反角が付けられ、ストロークに対する挙動変化をマイルドにしている。

フロントサスペンション:マクファーソンストラット

メガーヌはVWゴルフやプジョー307などと競合する、Cセグメントの実用車。それを“本気”のスポーツモデルに仕立て直したのがルノースポール(R.S.)バージョンである。実装転舵軸を組み込んだフロントサスの構成は、ルーテシア(現地名クリオ)も同様、ルノースポールバージョンのみに採用されている。ステアリングシャフトもチューブ・イン・チューブタイプを採用した。

スプリングはアイバッハ製。ダンパーはツインチューブタイプを採用。ストロークはかなりのレベルを確保しているとおぼしい。
アンチローテーションリンクはロワーアームとハブキャリアをつなぎ、ハブキャリアの回転を制限する。アップライトはアルミ鍛造製で、通常の役割に加え、ハブキャリアのマウント軸を実存転舵軸として機能させている。いかにも剛性の高そうな作り。

アンチロールバーはストラット直付け。ホイールストローク1に対してほぼ1のレバー比とし、入力効率を高めている。

サブフレームはスチール製で、プレス工法+溶接構造。標準車とはっきり異なる構造。剛性アップのため、念入りな補強が施されている。イラストでは見えないが、ロワーアームもスチールのプレス品ながら、力をしっかりと直線で受けられる構成としている。

標準車の透視図。RS仕様は、強度・剛性向上のため、サブフレームを筆頭として各部に念入りな補強が施されている点にも注目してほしい。
リヤサスペンション:トーションビームアクスル

FF2ボックスの実用車では、もはや定番となっている形式。フロントとは異なり、RSでも全体の構成はもとより、細部の形状も同一といっていいほど、標準車から踏襲されている。フロントと違い、スペースなどの都合上、大幅な変更が難しいという事情が大前提と推測できる。しかし、もともとロール剛性の面で優れた形式であり、FF車としてはスポーツモデルであっても十分に機能できると判断してのことだろう。実車で確認しても、ブッシュ類の材質や容量、アンチロールバーの径などはそれなりにチューニングされた痕跡が見て取れるが、基本的には非常にコンベンショナルな構成である。

ダンパーは静止状態で路面に対して40度程度の角度で前傾、かつ若干内傾してマウントされている。標準車と同様の構成であり、車室およびラゲッジスペースとの兼ね合いからこの方式を採用したと考えられる。前後および横力への影響が考慮される構成だが、実車では特に気になる挙動は見られなかった。コイルスプリングはアイバッハ製。バンプストッパーをプラスチックとラバーの二重構造としている点が興味深い。フルバンプした先の挙動を考慮しての措置か?
ツイストビーム部はスチール製で、プレス工法+溶接構造。角型断面を持つ両側トレーリングリンクに、プレス成型のアクスル部を溶接した構造。大きな力を受ける部分には、剛性向上のための念入りな処置が施されている。イラストでは見えないが、トレーリング部は路面側に保護カバーを装着している。アンチロールバーは内蔵。

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