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内燃機関超基礎講座 | ピストンリングの役割:3つの機能を掘り下げてみる

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ピストンリングが担っている役割は多岐にわたる。低抵抗高効率を両立させるための考え方をあらためて考えてみた。
TEXT:世良耕太(SERA Kota) FIGURE:RIKEN

ピストンリングには主に3つの機能がある。1つめは燃焼ガスのシール機能。ピストンリングから漏れるブローバイガスが多いと、オイル劣化を促進するし、オイル消費も高めてしまう。これを抑える設計が必要。オイルリングの形状はドラスティックに変えることはできない。どこまで細かい目配りをし、精度高く作ることができるかが、機能向上のカギを握る。

ブローバイガスが漏れる経路(下の説明参照)のひとつは合い口隙間(シリンダーに収めた際の隙間)。隙間をゼロにすればガス漏れはなくなるが、リングは熱膨張するので実際にはゼロにできず、下限値が決まる。そこで、公差を小さくする努力が行なわれている。合い口隙間の面取りも重要。角が当たるとリングが欠けるので面取りは必須だが、問題が起こらない範囲で極力面取り範囲を小さくする(とガス漏れ量が減る)努力が払われている。

機能の2つめは、オイルコントロール機能。必要最小限のオイルだけ壁に残すような設計をする。3番目の機能は熱伝導機能。ピストンの熱は、3本のピストンリングを伝わってシリンダーに伝わっている。このマネージメントが重要。これら3つの基本機能を満たしながら、フリクションを低減するのが近年のトレンドだ。

1.ガスシール機能

ピストンリングを通過する燃焼ガスの通路は3つある。1つ目はリングすべり面。すなわち、ピストンリング外周面とシリンダー壁との摺動面のこと。2つ目は合い口部。3つ目の通路がリング側面だ。リング溝とリングの間には上下合わせて50μm程度の隙間が開いており、ここをガスが通り抜ける。ピストンが上下動を繰り返すと、溝の中でリング(スチール製)が動きピストン(主にアルミ製)と接触する。柔らかいアルミ側の摩耗を防ぐために、リング側面に樹脂の皮膜を施す技術もある。

2.熱伝導機能

燃焼室で発生した熱は、ピストン頂面からピストン内部に伝わり、リングに伝わる(トップリング近辺で200°C前後)。その熱は、リング外周面からシリンダー壁を通じ、放熱する。ピストン各部の放熱割合を調べてみると、一例としてピストンリング全体で約65%、トップリングで約30%の放熱割合を受け持っている場合がある。ヒートマネージメントの重要性が増すなかで、注目を集めている領域。ピストンリングの形状や寸法、ピストン自体の形状を変えた際、ピストンやリングの温度にどう影響を与えるか、解析し、設計に反映する。

3.オイルコントロール機能

計算や測定の結果、ピストンリングとシリンダー壁の間に存在するオイルの厚さは厚くて数μm、薄いと1μm以下で、シリンダー壁面の粗さとほぼ同等。上下死点では金属接触する。トップリングの第一の機能はガスシール性。オイルリングは摺動に必要なオイルを残し、不必要なオイルを掻き落とすのが役目。セカンドリングはトップリングとオイルリングのバランスを取るイメージ。セカンドリングの溝内での動きが、トップリング下側面のシール性に影響を与えたりする。

リングの軽量化とブローバイ量

フリクション低減のためにリング張力を下げたとき、懸念されるのは、オイル消費の増加である。ピストンリングの張力を50~60%減らすと、フリクションは約40%減るが、その見返りとしてオイル消費が増えてしまう。そのオイル消費を抑える手法が、ピストンリングを薄幅にすることだ。リングを薄くすることでピストン溝に対する追従性が増し、ブローバイガスの発生量が減る。1960~70年代に2mmだったトップリングの幅は、1980年代に1.5mm、1990年代後半に1mmになり、2003年に0.8mmが出てきた。

内燃機関の摩擦損失の区分け

A ピストンおよびピストンリング
B コンロッド
C クランク軸
D 動弁機構
E ウォーターポンプ
F オイルおよびウォーターポンプ
G ピストンリング
H ピストン
I ピストンおよびコンロッド

グラフの下から4つ目までは、ガソリンエンジンのデータ。上の2つはガソリンで、3つ目はディーゼル(計測した機関が異なる)。赤く色分けしたグラフが平均値で、ピストン/ピストンリングの摩擦損失は、内燃機関の摩擦損失のうち40~60%を占める。この損失を減らせば、燃費向上につながる。薄幅低張力化が加速する背景はここにある。オイルコントロール性やガスシール性を向上させる薄幅化なしに、低張力リングは成立しない。

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