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F50再生:タイムカプセル状態のフェラーリF50をリフトアップ、各部を眺める(車両確認編)

  • 2020/12/31
  • Motor Fan illustrated編集部
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納車後まったく動かさない状態で発見されたフェラーリF50。コーンズ・ 東雲サービスセンターによる再生プロジェクトを追う。第二弾はシャシーまわりの状態確認である。

工場へ運び込まれてから、F50は外装のかんたんな清掃は済ませた模様。そこから各部を点検して、何を交換するか、そしてどこまで交換できるかを確認していく。経年劣化した部品類を片端から交換していけば復調するのは当然だが、何せスペシャルメイドの車両だけに部品の手配ができる可能性は未知。当然、クルマがクルマだけにコストが果てしなくかかっていくだけに、バランスをとらなければならない。

モノコックに直付け:ストレスマウントするパワートレイン。車両中央にマウントするプッシュ式のスプリング+ダンパーユニットが迫力。
下方から眺めたエキゾーストマニフォールド。V12なので、当然逆側にも同じシステムが備わる。
フロントセクション。ラジエーターは車両最前部に備わり、モノコック下部を伝わってエンジンに接続される。

マスターテクニシャンを務める長谷川正吾氏によれば、最低限、交換しておきたいと考える部品/システム類は以下のとおりだった。

・エンジン分解、各部点検にともなうガスケット/パッキン類
・エンジン/トランスミッションの油脂類
・吸排気系のガスケット/パッキン類
・サスペンションのブッシュ/ゲーター類
・燃料タンク
・タイヤ
・ブレーキ/水まわりのホース類
 
ストレスマウントであるパワートレインは一度モノコックから降ろし、エンジンはトランスミッションとも分離して完全分解し、各部を点検する。したがって、ガスケットやパッキンは交換不可避である。油脂類については、このような案件でなくとも交換される。また、ホースやタイヤといった樹脂類の交換も当然だろう。このほか、点検を進めていくにあたって不具合や劣化を認めれば、都度交換していく。

ユニークなのは燃料タンク。モノコック内部に器用に収められているソフトシェルタイプであるらしく、サービスホールから出し入れするのだという。まさにレーシングカーさながらである。フェラーリから耐用年数が定められている指定部品であり、四半世紀を過ぎているとなればもちろん交換対象。問題は新品部品が入手できるか……である。

モノコック左右にまたがるような格好で備わる燃料タンク。ふたつのサービスホールから着脱する。

工場へ足を運ぶと、すでにF50はアンダーパネル類を外した状態でリフトアップされていた。サスペンションまわりがよく確認できる状態だ。

サス形式は前がダブルウィッシュボーン、後がダブルウィッシュボーン+トーコントロールリンク。フロントサスペンションはCFRP製のキャビンモノコックの前方に備わる鋼製のトラスフレームに、リヤサスペンションはトランスミッションケースに直接、アームとダンパー/スプリングユニットが接続される構造である。

リヤサスペンションを下から。ロワーアームのハブキャリア側は1点(ピボット)接続、さらにトーコントロールリンクで位置を定める構造。
フロントサスペンション。強制冷却のためのダクトがフロントバンパーから伸びる。スプリング+ダンパーユニットはリヤ同様、リンク式のプッシュ式センターマウント。

25年もの間、まったく動かずその角度のまま固定されていたジョイントには、ブーツ類はもちろんのこと、ブッシュにも癖がついてしまう。また、油分が抜けて収縮硬化してしまうこともあり、交換は必須である。ただし、目視した限りではおかしなちぎれや変形の類は見当たらない。リヤサスペンションのブッシュ類は、高熱を発するエキゾーストマニフォールドの近くにあるということもあり、熱影響も少なくないはずだが、本車についてはその心配は皆無である。

フロントサスペンションのロワーアーム。ハブ側ピボット近傍のブッシュは、ダンパーユニットのリンク部。

ブレーキについてはどうだろうか。ローターの端面に激しい錆が認められるが、これはおそらく実動状態のクルマでも同様だろう。フェース面については、ガレージから転がしてここまで運び込んだこともあり(つまりひどい固着はなかったということだろう)、ごくごくわずかではあるがブレーキパッドで磨かれた形跡があった。とはいうもののベルハウジングまわりも含めてコンディションは非常によく、長期間の保管状態がきわめて良好だったことがうかがえる。今後、ハブまわりの点検を含めてベアリングの交換を検討していく。

ローターのフェース面にはうっすら錆があるものの、固着している様子はうかがえない。キャリパーはラジアルマウント、ホイール固定は八角(!)のセンターナット式。

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