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内燃機関超基礎講座 | エンジンの排熱回収を考える。熱を熱のまま使う手段:ヒートコレクターシステム

  • 2021/01/30
  • Motor Fan illustrated編集部
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排熱を最も効率よく使う方法は、熱のままで活用することだ。「必要な熱」を「不要な部分」から回収する仕組みと、その効能とは?
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

実は、自動車用の排熱回収システムは、すでに実用化されている。排ガスの経路中にエンジン冷却水と接触する部分を作り、熱伝導によって排気ガスの熱を冷却水へ回収する、通称「ヒートコレクター」である。

基本構造は、下に掲載している三五の製品がわかりやすい。パイプの内部が同心円状の三重構造になっていると考えればいい。一番内側が通常の排気流路で、外側が冷却水の流路。その間が、熱交換用の排気流路だ。

三五・ヒートコレクターシステム。排気の持つ熱を冷却水に伝えることで回収し、再利用する「排熱回収器」。従来の排気熱回収装置は、熱交換経路を別に設け、暖機を済ませた後はバイパスさせる手法を採っていたが、システムの長大化が課題となっていた。このヒートコレクターシステムはバイパス路と熱交換経路を同心円上に配することで、軸方向のコンパクト化を実現した。
中央部のパイプが通常の排気流路。周囲に波打っている部分の中央側が熱交換用の排気経路で、外側が冷却水流路だ。
エンジン始動直後は右端のバタフライバルブが閉じており、排気は通常流路に設けられた穴から外側の熱交換用流路へ流れ込み、冷却水に熱を伝える。冷却水が規定温度に達すると、バルブが開いて排気は通常の流路を流れるようになる。
排熱回収器は、触媒の直後あたりに配置されることが多い。なるべく排気温度の高いところで効率よく排熱を回収するためだ。この三五のシステムは試作品だが、従来品に比べて圧力損失が1/3、熱交換能力が2倍、寸法、質量、コストが1/2という高性能品である。(ILLUST:熊谷敏直)

現在、実用化されている製品の主目的は、暖機時間の短縮による燃費向上と、有害物質の低減だ。エンジンを早く温めたい状態では、通常の排気流路をバルブなどで閉じて、排気を熱交換用流路に導く。

この状態では圧力損失が高まってしまうが、暖機が終わるまでの間はあまり回転数を上げないので、特別なデメリットとはならない。暖機が終了したら、排気流路を通常のものに戻して圧力損失を減らし、所定のエンジン性能を発揮させる。

比較的簡便な構造で、そこそこの効能が得られることが特徴。機構的に、排気の熱量が効率に影響するため、エンジン排気量が大きいほど効果が高まる。

排熱回収システムと電気式ヒーターの性能を比較した。図は、エンジン排気量による効率を比較するため、ヒーター側も発熱量を2種類用意しての比較。結果は明らかで、小排気量エンジン車でも500Wヒーター相当程度の暖房能力を発揮している。暖房時にこれだけの電力が不要となることで、燃費への悪影響の低減も期待できる。
システムの有無によるエンジン水温とヒーター吹出し温度との関係を調べた結果。始動後300秒あたりまではあまり顕著な差は見られないが、システムありの場合、そこから500秒までの間で差を拡げ、吹出し温度50度に達するまでの時間が、約半分で済んでいる。エンジン水温も、500秒あたりですでに60度を超えており、暖機時間の短縮効果が実証された。

燃費向上の効果は、EV走行が可能なハイブリッド車に組み合わせた場合、冬季の暖房用エンジン始動が減らせる効能があるため、8%程度と良好なレベルだ。通常のガソリン車やディーゼル車でも、暖機時間短縮によって3〜4%程度の改善が見込まれる。

排熱回収のためのシステムとして、すでに実績を重ねている点が強み。今後は、回収した熱の用途をいかに拡げられるかがポイントとなる。

コールドスタート要件を含む欧州モードで測定した結果のグラフ。上2点は冷却水温度と排気温度の推移を示す。測定条件は外気25度だ。廃熱回収システムありの場合、時間軸で2分をすぎたあたりからシステムなしに比べて早い水温上昇を示す。80度にン水達するまでの時間は、システムなしに比べて1分ほど早い。排ガス温度は、システムの有無にかかわらず、入口側が温度の推移はほぼ同じ。しかしシステムありの場合、出口側温度に大きな差があることが見てとれる。この差が、すなわち回収されている熱エネルギーの大きさを表わしている。
EV走行可能なハイブリッド車を使っての比較。通常車のエンジン水温が60度に達するまでに800秒かかっているのに対し、排熱回収器付きは400秒程度で到達していることがわかる。

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