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IHI:世界初、2000kW級ガスタービンで液体アンモニアの70%混焼に成功

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液体アンモニアと天然ガスを混焼した2000kW級ガスタービン

IHIは、2000kW級ガスタービンで液体アンモニアの70%混焼に世界で初めて成功した。航空エンジン技術の応用により、安定燃焼が困難な液体アンモニアの燃焼技術を開発した。

 IHIは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託事業(*1)として、液体アンモニアを燃焼器内に直接噴霧して天然ガスと混焼させる2000kW級ガスタービンの技術開発を実施し、このたび、世界で初めて熱量比率70%の液体アンモニアを安定燃焼させるとともにNOx発生量を抑制することに成功した。また、100%液体アンモニア専焼でのガスタービン運転にも限定的に成功した。

 IHIは2018年3月に、2000kW級ガスタービンで燃料比率20%の気体アンモニアを天然ガスと安定に混焼させると同時に、NOx発生量を抑制する燃焼技術を実証した。さらにCO2排出量を削減するためにはアンモニア混焼率を高めていく必要があるが、多量の気体アンモニアをガスタービンに供給するためには、蒸発器・制御弁などの付帯設備を大型化する必要があり、設備コストの増加が課題の一つとなっていた。そこで2019年5月からIHIは、東北大学 小林秀昭教授、産業総合研究所とともに、液体アンモニアを燃焼器に直接噴霧して安定燃焼させる技術開発に取り組んだ。通常液体状態で貯蔵されているアンモニアを気化させずに直接使用するため、付帯設備が不要になるほか、制御性向上などのメリットがある。

 アンモニアは天然ガスと比べ燃焼速度が遅く、安定な燃焼が難しいことに加え、液体アンモニアの気化潜熱(*2)が大きいことにより燃焼器内の急激な温度低下を招き、安定燃焼させることは困難と考えられていた。本委託事業では、航空エンジン開発で培ってきた知見を活かして燃焼器の改良を行い、液体アンモニアと天然ガスの混焼技術を開発してきた。IHIは,この技術を2,000kW級ガスタービンに適用し,2020年10月から様々な開発試験を行った結果,混焼率70%での安定燃焼とNOx発生量の抑制に成功した。課題はまだあるものの、液体アンモニアのみでの運転にも成功しており、引き続き安定燃焼やNOx等排気ガス中の有害成分抑制に取り組み、2025年を目途にアンモニア専焼ガスタービンの商用化を目指す。

 アンモニアは、可燃性ガスのため発電等に直接利用が可能であることに加え、燃焼時にCO2を出さないことから、カーボンニュートラル社会の実現にむけた有望なエネルギーと期待されている。また、すでに肥料・化学原料として広く使用され、供給インフラ構築のノウハウが蓄積されていることから、早期に社会実装が可能と考えられている。

 今後、燃焼アンモニアの利用を進めるには、大量かつ安価でクリーンなアンモニア供給の実現も必要だ。「グリーンアンモニア(*3)」や「ブルーアンモニア(*4)」の供給網を確立することで、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現に向け、IHIでは様々な取り組みを推進している。

 IHIは、燃焼技術開発によりアンモニア需要を拡大させるとともに、サプライチェーン構築に積極的に関与することで、アンモニアの早期の社会実装による脱CO2 ・循環型社会の実現に貢献していく。

(*1) NEDO委託事業:
・件名:カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電技術推進事業/アンモニア混焼火力発電技術の先導研究
・テーマ:「液体アンモニア直接噴霧ガスタービンシステムの研究開発」
(IHI, 東北大学, 産業技術総合研究所)
事業期間:2019年4月~2021年3月

(*2) 気化潜熱:
液体は気化する際に周囲から熱を奪う。その熱量を気化潜熱というが,液体アンモニアの気化潜熱は灯油など一般的な液体燃料よりも非常に大きいため,燃焼器内温度の低下につながる。

(*3) グリーンアンモニア:
再生可能エネルギー由来の電力を利用して,水を電気分解し生成した水素から製造したアンモニア。製造の過程でもCO₂を発生させないことが特徴。

(*4) ブルーアンモニア:
天然ガスからアンモニアを製造する際に排出されるCO₂を分離回収し,EOR(石油増進回収)に利用することなどによりCCUS(CO₂回収・利用・貯留)を行うカーボンニュートラルなアンモニア。IHIは,一般財団法人日本エネルギー経済研究所(IEEJ)とサウジアラビアン・オイル・カンパニー(サウジアラムコ)が実施したブルーアンモニアのサプライチェーン実証試験に協力し,2,000kWガスタービンにおける混焼試験において,36トンのブルーアンモニアを使用した。

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