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メルセデスの新型直6をメルセデス・ベンツSクラス S450で味わう 時代は再び直6へ! F1エンジン開発者が作ったメルセデスの新型直6エンジン・M256【メルセデス・ベンツSクラス S450】

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実はS450が搭載するM256およびV型ガソリンエンジンの統括シニアマネージャーを務めるのは、1998年から2006年まで(つまり、マクラーレン・メルセデス時代)F1エンジンの開発に携わったDr.ラルフ・ヴェッラーという技術者だ。「F1エンジンを開発していた人が量産エンジン開発の要職に就いているんだ」と知るだけで、途端にM256を見る目が変わってしまう(個人的に)。

直列6気筒にしたことだけがM256やS450のハイライトではなく、48Vシステムを組み込んだことも見逃せない。パフォーマンスと効率のためだ。S450が搭載する直6エンジンと、その後方にある9速オートマチックトランスミッション(AT)の間に、最高出力16kW、最大トルク250Nmを発生するモーターを搭載している。

三菱電機が供給する48V ISGシステム

メルセデス・ベンツのエンジンに三菱電機のISG。48Vシステム

このモーターは48Vの電圧で駆動する。既存の12Vシステムで駆動できないこともないが、電圧が低いので効率が悪くなる。といって、本格的なハイブリッドシステムで用いている数百ボルトを選択するとシステムが大がかりになるし、コストがかさむ。得られる効果とコストのバランスをとった最適解が48Vシステムというわけだ。

ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と呼ぶモーターは働き者だ。まず、エンジン始動時はスターターとして機能する。つまり、スターターモーターは搭載していない。エンジン後部に設置したモーターでダイレクトに始動するので、アイドルストップからの再始動は静か(スターター特有のキュルキュル音とは無縁)でスムーズだ。「は? いつ始動した?」というのが実感である。

このISG、アイドル時は振動を抑える役目を果たすため、低い回転を保つことが可能。アイドル回転数はなんと520rpmだ。「あれ? エンジン回ってるの?」というのが実感である(いや、大げさではなく)。

ISGは加速時にはエンジンをアシストする。加えて、電動スーパーチャージャーが働きだす。メルセデス・ベンツS450が搭載する3.0L・直6直噴ターボエンジンは、ターボチャージャーに加え、電動スーパーチャージャー(SC)も搭載しているのだ。種類の異なる過給機を2基搭載していることになる。電動SCも12Vシステムで駆動できないことはないが、やはり48Vの方が力強く、かつ長時間にわたって効率良く使うことができる。

ターボは排気のエネルギーを利用して過給圧を高める仕組みだが、発進時などの低回転域は排気のエネルギーが少ないから、ドライバーから加速要求があってもそれに充分応えることができない。そこで、電動SCを駆動して過給圧を高めてやるのだ。ターボは応答遅れ(ターボラグ)という致命的な欠点を抱えているが、M256はISGと電動SCの2段構えでこの欠点を帳消しにし、ドライバーの加速要求に待ったを掛けることなく、素早く反応してクルマを加速させる。

ISG の働き者ぶりはこれで終わり、ではない。減速時にはエネルギーを回生し、容量1kWhのリチウムイオンバッテリーに蓄える。そのエネルギーを始動時や加速時にISGや電動SCの原資として用いることで、快適な走りと燃費の向上に結びつけているのだ。

S450と聞くと、「あ、S560の下ね」とつい数字でポジショニングを判断しがちだが、アイドルストップからのエンジン再始動がスムーズなことや、アクセルペダルを踏み込むと間髪入れず「加速」を体感させてくれること。さらに強く踏み込めば「さすが、270kWを発生させるだけのことはある」と感じさせる力強くも俊敏なダッシュを披露することなども含めて、数字では表現しきれない洗練された仕立てを感じる。エンジン始動もアイドルも、一定回転でのクルーズも加速も、万事スムーズだ。

メルセデス・ベンツSクラス S450
全長×全幅×全高:5125×1899×1493mm ホイールベース:3035mm
エンジン形式:直列6気筒DOHCターボ エンジン型式:M256 排気量:2999cc ボア×ストローク:83.0×92.0mm 圧縮比:10.5 最高出力:367ps(270kW)/5500-6100rpm 最大トルク:500Nm/1600-4000rpm トランスミッション:9速AT(9G Tronic Plus)

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