「e-Pedal」と「プロパイロット」は熟成不足だが「プロパイロットパーキング」はすでに熟練ドライバーを超える水準 【新型日産リーフ試乗インプレ】走りの性能と質感は確実に進化。だが全体的にはビッグマイナーチェンジの域を出ず
- 2018/05/07
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遠藤正賢
2010年発売の初代を含むグローバルの累計販売台数が今年1月には30万台、4月には国内累計販売台数が10万台を突破した、CセグメントのEV専用5ドアハッチバック・日産リーフ。昨年10月に発売された新型2代目を、市街地および高速道路を中心に公道で約130km試乗した。
内外装のデザインは、世界初のEV専用量販車としてはコンサバティブに思えた初代よりもさらに“普通のクルマ”となった、だがスポーティな、全く異なるものに見える新型リーフ。
しかしながら全長は+35mmの4480mm、全幅は+20mmの1790mm、全高は-10mmの1540mm、ホイールベースは変わらず2700mm。
これらはフロントオーバーハングの延長、リヤトレッドの20mm拡大(1555mm)、サスペンションの10mmローダウン(最低地上高150mm)によって実現したもので、パッケージングそのものはほとんど変わっていない。
そして、初代と新型を見比べると、ガラスを含めた前後ドアパネル・トリムと前後シートの基本設計は初代から流用されていることが、初代リーフオーナーならずともすぐに見破れるはずだ。
ただしラゲッジルームは、EV専用部品の小型化および搭載位置の変更などにより、容量を初代の370Lから435Lへ拡大。最小荷室フロア幅も700mmから1009mmに広げたことで、9.5インチのゴルフバッグ2セットを横置きで積載可能としている。
とはいえ、インバーターの変更で最高出力が109psから150ps、最大トルクが254Nmから320Nmへ、リチウムイオンバッテリーの容量も30kWhから40kWhに拡大され、JC08モード航続距離は280kmから400kmへと、いずれも大幅に向上した。
また、アクセルペダルのみでの加減速・停止を可能にしたノートの「e-POWER」をさらに発展させ、モーター回生のみならずメカニカルブレーキも併用して低ミュー路での安定性を向上させた「e-Pedal」を採用。高速道路で同一車線において自動的に操舵・加減速を行う「プロパイロット」、駐車を自動的に行う「プロパイロットパーキング」も新たに設定された。
さらに、ボディ・シャシー性能が高められNVH対策も強化されたことから、ロングツーリング性能が大幅に向上していると思ったのだが……その期待は運転席に座った瞬間、裏切られることになる。
フロントシートは絶対的にサイズが小さく、しかも背もたれは上部のえぐれが大きく、座面は先端のカーブが緩いため、腰とヒップに面圧が集中し、フィット感は非常に悪い。あの悪名高き初代日産ティアナを思い出させるそのシートは、しかしながらデザインはごく平凡だ。さらに言えば、ステアリングにはチルトしか調整機構は備わっておらず、腕が短い筆者は肘がほとんど曲がらないポジションを強要される。
床下にバッテリーを搭載するためフロア高が高く、だがヒップポイントは低いため体育座りを強要される後席も、初代より全く改善されていない。背もたれ・座面とも小ぶりかつ平板で、身長174cmの筆者が座ればヘッドクリアランスは5cm程度。これではタクシーの初乗り料金の範囲内が我慢の限界だろう。
筆者は今回試乗する前、エアコンは常時オン、特にエコランを意識しない現実的な走り方で一度も充電せず走れるギリギリの範囲、最低でも200km程度は走ろうと思っていたのだが、この全く進化していない前後席を確認した瞬間、その気持ちは雲散霧消した。
そしてパワートレインを始動し、舵を当てて駐車場を出ると、失望はより一層深まることになる。ボディおよびステアリング機構のねじり剛性が高められたおかげで不快な振動と応答遅れは減ったものの、低速域のアシストが強すぎてインフォメーションを皆無にしてしまうEPSの制御特性は相変わらず。荒れた路面でフロアの振動が伝わりがちなのも、抜本的には改善されていない。
そのうえ、e-Pedalをオンにして走行すると、特に低速域でほぼ加速も減速もしないパーシャル域の範囲が狭く、加速から減速への遷移が急激なうえ、最大減速Gがe-POWERの0.15Gに対し0.2Gまで高められているため、相当慎重にアクセルペダルを戻さなければ、アクセルオフ時につんのめった挙動を起こしやすい。ノートe-POWERが予備知識なしでもほとんど苦慮せずアクセル操作できることを考えると、かえって退化した感すらある。
それ以上に大きな問題は、ブレーキペダルを踏んだ時の回生協調ブレーキの減速特性が、e-Pedalのオンオフで全く変わらないことだろう。アクセルオフだけで0.2Gもの減速度を発生するため、通常はまずフットブレーキを使わないのだが、それでもフットブレーキを使うという状況は、そうしなければ衝突する危険性がある緊急時に限られる。にも関わらず、減速特性はe-Pedalオフ時と全く変わらないため、ブレーキペダルを踏み込んでも、踏力が0.2G以上の減速度を発生する領域に達するまで減速度が上乗せされない。
ドライバーはその間、ブレーキペダルを踏んでも減速しないという空走感を覚えるのだが、その恐怖たるや尋常ではない。勢いブレーキペダルを目一杯踏みつけ、急激に減速Gを立ち上げることになるため、同乗者を酔わせるばかりか後続車からの追突を誘発する危険性すらあるだろう。e-Pedalオン時はブレーキペダル踏力が弱いうちから制動力が強く立ち上がるよう、フットブレーキ側の回生協調制御マップを変更することを強く望む。
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