定番形式のキャブオーバーにホンダがFFレイアウトで挑む理由 ホンダN-VANをスズキ・エブリイ、ダイハツ・ハイゼットカーゴと同時試乗!【ライバル比較インプレッション】
- 2019/04/07
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青山 尚暉
自然な運転感覚こそN-VANの大きな魅力
そろそろ各車を走らせてみよう(1名乗車/空荷)。まず乗ったのはN-VANのNAエンジン+CVTの「L」と「+STYLE FUN」のFF車(S660用! をベースとした6速MTも設定あり)。モード燃費はどちらもクラス最高の23.8㎞/ℓを誇る。走りだせばステアリングは適度な軽さで実に扱いやすくスムーズ。N-BOX用から軽バン用に低速トルクを太らせたエンジンは出足から静かで滑らかに回る。発進時こそ軽バンとして必要最小限の動力性能でしかない印象だが、いったんスピードに乗ってしまえばまったく不足ない加速力を発揮。回してもノイズが耳障りではないところも褒められるポイントだろう。
乗り心地は軽バンの域を超えている。というか、ほぼN-BOXである。荒れた路面や段差越えでもショックは軽微でストローク感ある快適なフラットライドに終始する。クルージング時の静かさも軽の乗用車並みで、ブレーキのタッチ、制動力も信頼に足るものと言っていい。
ただし、助手席とは別物のハードユースに応える専用設計の運転席の掛け心地は、クッション長が短めで感覚的には前下りに感じられ、慣れるまで落ち着きに欠ける印象。また、スラローム的な走りを試みるとさすがにN-BOXのような軽自動車とは思えないしっかり感あるフットワークとは言いにくい。何しろタイヤは軽バン標準、全車同一の145/80R12サイズなのだから(N-BOXの標準タイヤは155/65R14)。
またN-VANはメーターの見やすさ、インフォメーションの充実度も文句なし。全グレードにホンダセンシングが標準装備され、右側の液晶表示には平均燃費や外気温、ホンダセンシングの機能の一部の標識などが大きく表示される。燃費向上意識が高まり、標識の見落としによる違反回避にもなるはずだ。
ハイゼットカーゴの運転感覚は軽バンにしては極めて乗用車的。たっぷりしたシートサイズ、シートのふんわりソフトな掛け心地からして乗用車的で、ステアリングは今回の各車で最も軽く扱いやすく、NAエンジンでも4速ATとの組み合わせにより出足からトルクがしっかり出てスムーズかつ静かに加速する。つまり動力性能は十二分。NAの2WD車のモード燃費は17.8㎞/ℓだ。
乗り心地は良路ではマイルドなタッチに終始し、走りやすさ、快適感は文句なし。ハードな仕事、ホビーライフの後にホッとできる身体にやさしい乗り味と言っていい。ただし、乗り心地がソフトな分、路面のうねりで車体がふわりとする場面もある。壊れ物を積んでうねり路に遭遇したら、速度を少し落としたほうがいい。
エブリイはメーカーのテスト車がなく、走行3万㎞弱のレンタカーを試乗した点を断っておかなければならないが、運転席の掛け心地はクッション長がたっぷりあり悪くない。が、ステアリングは結構重く、5AGS(5速の2ペダルマニュアル)と呼ばれる、燃費性能的に優れるミッションの制御が最新のものではないため、出足から中間加速まで結構ギクシャクする。アクセルを踏んでからエンジンがレスポンスするまでにタメがあり、アクセル操作に慣れないと変速時に船をこぐようなあおられ感が生じてしまう。もちろん4速AT、または5速MTを選べば解決する事項である。2WD車のモード燃費は5AGSが19.4㎞/ℓ、4速ATは17.0㎞/ℓとなる。
そんなエブリイの乗り心地は空荷だと硬めで路面によっては車体がハネるような場面があり、Uターンする際にはクルマが倒れ込むような挙動、ロール感があった。走りに関して商用車っぽさを最も強く感じたのが、レンタカーであることを差し引いてもこのエブリイだった(走行中の後席のガタツキも気になる)。
こうして軽バン各車に触れ、走らせてみれば、さすがに設計の新しいN-VANが使い勝手や走行性能で優れていて当然。そもそもハイゼットカーゴの十代目となる現行型は2004年のデビュー。2017年に改良されたとはいえ、基本設計はかなり古い。エブリイは2015年デビューながらFRプラットフォームそのものは決して新しくないのだ。
試乗した印象を要約すると、乗り心地では現代的なしっかり感、質感の高さでN-VAN。ソフトなマイルド感ならハイゼットカーゴ。走行中の静かさではN-VANが優秀でハイゼットカーゴがそれに続く(エブリイも4速AT車ならハイゼットカーゴと同等のはず)。
そして荷物の積みやすさではフロアが低くセンターピラーレス採用のN―VANに軽バンの新しい使い勝手の提案がある。ただ、助手席使用時の最大荷室長、後席に乗ったときの膝まわり空間ではキャブオーバーのハイゼットカーゴとエブリイがリードしているのも事実(N―VANの後席は唯一、高めにセットされ、椅子感覚で座れるものの、膝前の空間はないに等しい……)。
最後に軽バンでも今や必須装備となった先進安全支援機能について評価すれば、N―BOX同様にACC(前車追従型クルーズコントロール)を含む10項目を全グレードに標準装備するN―VANが優位。また、ホビーユーザーにも向くスタイリッシュな+STYLEグレードの用意、仕事や趣味にぴったりのアクセサリーの豊富さもN―VANの大きな強み、選びやすさと言えるだろう。まさにホンダらしいアイデア満載の、軽バンの進化形、新基準である。
DAIHATSU HIJET CARGO

デビューは2004 年と古参だが、17年11月のマイナーチェンジでフロントマスクを一新し精悍なイメージを演出。同時に予防安全装備スマートアシストⅢも搭載するなど商品力を大きく高めた。トヨタ、スバルにOEM供給を行ない、エブリイと並んで軽商用車の中心を占めてきたモデルだ。
DAIHATSU HIJET CARGO DELUXE“ SAⅢ(”2WD)
直列3気筒DOHC/658㏄
最高出力:53㎰/7200rpm
最大トルク:6.1㎏m/4000rpm
JC08モード燃費:17.8㎞/ℓ
車両本体価格:115万5600円
センターレイアウトを活かして超低床という独自の魅力もアピール
ボンネットの中にエンジンがないキャブオーバー車の荷室長は、やはりFFレイアウトのN-VANを上回る。後席格納時の荷室長は、N-VANの1580㎜に対しハイゼットカーゴは1950㎜(エブリイは1955㎜)だ。だがN-VANは写真のように助手席をフラットに収納すれば長尺物に対応できるほか、圧倒的に低い開口高というメリットもある。
もうひとつのFF軽商用車 ダイハツ・ハイゼットキャディー


タントよりも高い全高のウェイクがベースの商用車で2016年3月発売開始。FFレイアウトのトールサイズ軽バンとしてはN-VANよりデビューが早かったが、後席は設定されず乗車定員は2名、最大積載量もN-VANの350㎏(FF 車2名乗車時)に対し150㎏となる。価格は135 万円〜184万1000円。
モーターファン別冊ニューモデル速報 Vol.575 ホンダN-VANのすべて
詰める遊べる大開口空間
左側センターピラーレス&助手席ダイブダウン。実用性マックスの新提案「軽バン」
ドライビングインプレッション
ライバル車比較試乗
開発ストーリー
メカニズム詳密解説
デザインインタビュー
使い勝手徹底チェック
バイヤーズガイド
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