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牧野茂雄の【深層レポート】in-depth reporting 新能源車=NEV規制を読み解け。「テスラ100社」を夢見る中国、その勝算と現状(1)

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北京汽車はサーブ・オートモビルから「9-3」の知的財産権を購入した。このモデルはサーブがGM傘下にあった時代に、同じGMグループのオペルが設計したプラットフォームをベースとしていた。北京汽車は「9-3」をBEVとして再生しようとした。

 2018年に中国政府が施行した新能源車(ニュー・エナジー・ビークル=略してNEV)を大量普及させるための規制は、まずまずの出足だった。昨年のNEV販売台数は、中国汽車工業協会のまとめで125.6万台、前年比62%増。内訳はBEV(バッテリー充電式電気自動車)が78.8万台、前年比68%増、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車=外部からの充電が可能なエンジン/電動の混合動力車)は26.5万台、同140%増。中国は世界でもっとも「新エネルギー車」が売れた国になった。ただし、自動車市場全体は世界トップの2808万台であり、NEV比率は約4.5%にとどまる。ことし以降は、中国政府が自動車メーカーごとに一定比率のNEV生産・販売の目標を与え、その目標に届かないと自動車メーカーは罰金を支払わなければならないという本規制が適用される。そして、規制2年目であることしのNEV出来高は、来年以降の政策運営に大きな影響を与える。はたしてNEV規制は成功するか。中国政府は、いずれ国内自動車市場は年間3500万台に届くと見ている。そのうち2割がBEVになれば年産700万台。そして中国メーカーと外資が中国からBEVを海外に出荷する。テスラ・モーターズ100社以上に匹敵する一大NEV生産基地・中国。彼らはこれを夢見ている。

 中国のNEV規制を語るとき忘れてはならないのは、かつてイスラエルに存在したプロジェクト・ベタープレイス(以下=PBP)だ。同社は2007年10月に米・カリフォルニア州で発足した大規模なBEVインフラ化計画への参画をねらった米国企業だったが、創設者のシャイ・アガシCEO(最高経営責任者)はイスラエル国籍であり、自動車産業のない自国にもBEVを普及させることを考えていた(設立翌年に社名からプロジェクトが消えてベタープレイスとなったが、本稿ではBP=ブリティッシュ・ペトローレアムとの混同を避けるためオリジナル名を使用する)。しかし、この会社は志半ばで挫折した。

 PBPはリチウムイオン電池(以下=LiB)を脱着式パックにして車両の床下に配置し、この電池パックをまるごと交換する「ドロップイン方式」を考案、電池パック交換ステーションを数多く建設すれば、充電待ちや電池切れのないBEV運用が可能になると考えた。高価なLiBだが、利用者は「使ったぶん」の料金を支払うというビジネスモデルだった。イスラエル政府がこれに賛同し、国家を挙げた事業となり、続いてノルウェーと米・ハワイ州もPBP案に乗った。

 のちにPBPはルノー・日産のCEOだったカルロス・ゴーン氏の目にとまり、日産はPBPへの関与を深める。日産は経済産業省やタクシー業界にはたらきかけ、東京でドロップイン方式のBEVタクシー「デュアリス」を90 日間限定の実証実験という形で走らせた。BEV「リーフ」が発売される前年、2010年4月のことだった。(次ページへ続く)

プロジェクト・ベタープレイスのBEV仕様デュアリスと交換式リチウムイオン電池(PHOTO:瀬谷正弘)

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