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スバル・レヴォーグの開発ストーリー 「持てるすべてを出し切った」マイナーチェンジの狙い

  • 2019/07/24
  • MotorFan編集部
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デビューから3年、レヴォーグが初のビッグマイナーチェンジを迎えた。分かりやすい目玉は車線検知機能と前走車追尾機能を備え、安全支援が進化した「アイサイト・ツーリングアシスト」だろう。

しかし実は、目に見えにくい部分で大幅な改良が加えられている。どのような安全デバイスも、土台となるクルマの基本性能が高くてこそ。次代のスバル車を牽引するという視点に立って、開発が進められた。

REPORT●佐野弘宗(SANO Hiromune)
PHOTO●神村 聖(KAMIMURA Satoshi)

※本稿は2017年8月発売の「ニューモデル速報 Vol.555 新型レヴォーグのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

ビッグマイナーチェンジでレヴォーグはD型へと進化

スバル・レヴォーグは2013年秋の東京モーターショーでプロトタイプが公開され、翌2014年4月に正式発表、同年6月に発売となった。つまり、今回の“大幅改良”は発売から丸3年のタイミングとなる。

われわれがスバルの今後の商品計画を知る由はないが、この初代レヴォーグにとっては今回が一般的に「ビッグマイナーチェンジ」と呼ばれるべき出来事であり、初代レヴォーグのモデルライフの折り返し地点にして、最大の改良ということだ。

レヴォーグに限らず、スバルは毎年のように年次改良を加えるのが伝統でもある。

スバル車の型式名には、新車発売時点では「A」からスタートするアルファベットが含まれており、年次改良ごとにB、C……とひとつずつ進んでいくのが、スバリストには常識(?)のお約束である。

事実、初代レヴォーグも例外ではなく、今回の大幅改良以前にすでに二度の年次改良を受けている。

最初の年次改良はデビューから1年弱が経過した2015年4月で、この時に登場したのが「Bタイプ」となる。

前後左右の新しい検知機能などをセットにした「アドバンスドセイフティパッケージ」がメーカーオプションとして設定されたことが最大のトピックだったが、それ以外にも「GT」グレードに新ダンパーの採用、後席を中心とした静粛対策の強化、1.6ℓエンジンの燃費向上対策など、メカニズムにも手が入っていた。

二度目の年次改良(=Cタイプへの移行)は、そのちょうど1年後となる翌2016年4月。

表向きは「STIスポーツ」や「1.6GTアイサイトSスタイル」といった魅力的な新グレードが話題だったが、後席衝突安全性のさらなる向上のほか、リヤドアのウェザーストリップ二重化、リヤクオーターガラスの板厚アップ(!)など、Bタイプにさらなる静粛性を与える改良の手が加わった。

スバリストの間では「Dタイプ」と分類される今回の新しいレヴォーグの開発を指揮したのは、熊谷泰典プロジェクトゼネラルマネージャー(PGM)だ。熊谷PGMはレヴォーグの開発スタートから現在まで、一貫してPGMとしてレヴォーグのプロジェクトを率いている。

熊谷 泰典(くまがい・やすのり)

商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー

1983年入社。レオーネ最終モデル、アルシオーネ、SVX、初代〜四代目レガシィなどの車体/外装の設計を担当する。その後外装設計課長として小型車系の車体/外装の開発設計のとりまとめ。2005年、商品企画本部にて五代目レガシィの商品企画/開発を担当し、2009年には同車のプロジェクトゼネラルマネージ ャー(PGM)に就任。2012年からはレヴォーグPGMとして、商品企画と開発の取りまとめを行なった。

安全装備を支えるために車両の基本性能を向上

今回の大幅改良で世間一般に最も注目されるのは、やはり、スバル自慢のアイサイトの最新版となる「アイサイト・ツーリングアシスト」だろう。

従来のアイサイトver.3に、進化した車線検知機能と前走車追尾操舵機能も追加することで、もともとハイレベルだった操舵支援が機能範囲を飛躍的に拡大するとともに、 そのレベルも同時に大幅強化。「自動運転」にさらに一歩近づいた……ともいえる。

思い返せば、これまでの最新版だったアイサイトver.3も、最初に搭載したのはレヴォーグだ。

「アイサイトを含めた先進装備を積極的に入れることで、スバルラインナップを引っ張っていくのがレヴォーグの商品企画としての大きなポイントで、われわれ自身が常に“展開可能な最新技術は全部入れよう”という気持ちでいます。

その理由のひとつは、レヴォーグが基本的に国内専用モデルで、ホームグラウンドである日本でのフィードバックを得ながら、速いピッチでつくり込めるメリットがあるからです。

国内のお客さまの厳しい目で“大丈夫”という太鼓判を頂ければ、自信をもってグローバルに展開できます(熊谷PGM)」

熊谷PGMも言うように、レヴォーグは当初、日本専用モデルとしてデビューした。

北米を中心としたグローバル市場でレガシィが大型化せざるを得なくなったため、かつての「日本ベストのスポーツワゴン」というレガシィ・ツーリングワゴンの実質後継機種の役割を担うべく、レヴォーグは開発されたわけだ。

ただ、今のレヴォーグはいくつかの海外市場に輸出されている。

熊谷PGMの右腕役をつとめる商品企画の篠塚順三によれば「現在は欧州、アジア、オーストラリアへもレヴォーグを出していますが、これらの海外分をすべて合わせても、台数的には国内向けの4分の1程度」という。

つまり、現在でもレヴォーグは全数の4分の3が日本で販売されており、「日本市場のための日本ベスト」という思想は不変ということだ。

アイサイト・ツーリングアシストについての詳細は別頁にゆずるが、新しいレヴォーグの本当のキモは、ある意味で別のところにある。

「今回のレヴォーグは、テレビCMを筆頭に一般のお客さまにはアイサイト・ツーリングアシストを前面に押し出したアピールをしています。

ただ、その先進機能を生かすも殺すも、やはりクルマの基本性能です。クルマ自体の直進性や操縦安定性が悪いと、いかに電子制御しようとしても、ふらついたり、ハンチング(=細かく震えて乱れる)したりします。

今回、操縦性や乗り心地などクルマとしてのベースを引き上げたからこそ、新しいアイサイトも生きるんです(熊谷PGM)」

従来のアイサイトver.3に対して後退時自動ブレーキ(RAB)を加えた上、「ツーリングアシスト」として車線中央維持、先行車追従操舵の作動範囲を拡大。ドライバーの認識範囲を広げ、安全運転を支援するアイサイトセイフティプラスもメーカーオプションで装着できる。先進の安全技術が満載だ。

8割を占める1.6ℓは快適性の向上に注力した

大注目のアイサイト・ツーリングアシストをあえて横に置くと、「Dタイプ」となった今回の大幅改良は、乗り心地と静粛性の向上、内外装の質感と実用性のアップ……への、もはや執念ともいうべき徹底的かつ抜本的な手直しが印象的である。

たとえば、サスペンションはバネやショック減衰力のリチューンは当然のこと、サスストローク延長、アームブッシュの一部をゴムブッシュ化するなど、その内容は基本設計の部分にまで及んでいる。もう少し詳しくいうと、乗り心地への手当ては、とくに1.6ℓ車に手厚い。

「最初にレヴォーグを発売した時は、われわれはこのクルマを“リアルスポーツツアラー”と呼びました。スポーツ性を第一と考えて、あえてターボエンジン専用車として、本格的にスポーツ走行できるワゴンを目指したんです。

乗り心地が硬めであることも分かっていましたが、そういうクルマ……と割り切った部分もありました(熊谷PGM)」

実験を担当した香川穣も当時を振り返って「熊谷PGMから言われたのは“スポーツカーのような走りを表現したい”でした」と語る。

「ただ、実際に発売してみると、アイサイト効果もありまして、これまでならNAエンジンを選んでいただいていたようなお客さまや“安全だから奥さまに乗せたい”といったお客さまが予想以上に多かったんです。

現在はレヴォーグの販売全体の8割を1.6ℓが占めています。比率そのものは、われわれも“最終的にはこれくらいだろう”と想定していた範囲内ではありますが、予想以上に早い段階から1.6ℓの比率が高くなったことは事実です。

こうした現実を考えると、とくに1.6ℓはスポーツ性ばかりに目を向けずに、もう少し快適側に振ってあげたほうが実際のお客さまの期待に沿うのではないかと考えました。1.6ℓの車高を少し上げてストロークを大きく取ったのはそうした理由です。

対して、2.0ℓは乗り心地などをもちろん引き上げつつも、これまでのスポーツ性は犠牲にしていません(熊谷PGM)」

ふと気付いてみると、レヴォーグのキャッチフレーズはいつしか「GTツアラー」に変わっていた(笑)。

これについては「決して初心が変わったわけではなく……と熊谷PGMが説明しかけると、香川も「2.0ℓは300psの400Nm(40.8kgm)ですから」と微笑んだ。

あらためて思い返すと、Cセグメントでこの動力性能である。生半可なクルマづくりでは御せない凄まじさだ。

香川 穣(かがわ・みのる)

車両研究実験総括部 主査

1990年入社。三鷹の材研2課にてパワーユニット向けの金属・非金属材料の研究開発に携わる。神奈川スバルにてセールス&サービスを経験したのち、パワーユニット研究実験2部に配属、パワーユニットの機能・信頼性、材料全般の研究開発を行なう。2005年から車両研究実験総括部にて、軽自動車などのパワーユニット性能の開発とりまとめののち、2007年からはエクシーガ、レヴォーグ、WRXなどの車両全体性能の開発を統括した。

篠塚 順三(しのづか・じゅんぞう)

商品企画本部 担当

1985年入社。試作部試作一課にて、レオーネ最終モデルなど様々な車種の試作車製作実務や手配業務を担当。1997年からは商品企画本部にて、初代フォレスターやレガシィ三代目最終モデル〜五代目、BAJA、トライベッカなどの商品企画・開発に携わる。2014年より現職として、レヴォーグの開発全般実務進捗と併せて、今回のビッグマイナーチェンジに向け商品力の向上に注力した。

速度域の高い欧州の要望に応え大幅に向上した静粛性

新しいレヴォーグに実際に乗ると、乗り心地以上に印象的なのは、実は静粛性である。静粛性については年次改良でもずっと手が入ってきたが、今回もさらに大規模に改良されている重要ポイントである。

具体的には、今回はドアとリヤゲートのガラスの板厚をあげているが、Cタイプですでにリヤクオーターガラスが厚くなっている。

「ですので、発売時と同じガラスなのはフロントだけですね。ここは最初から遮音ガラスで……」と篠塚も苦笑いする。

「ガラスの板厚を途中で上げるというのは本来はやるべきではありません(笑)。ガラスが重くなると、窓の昇降機構やドアやゲートの開閉感にも影響しますから、じつは簡単ではないんです。

ただ、今回はそれくらいやらないと、目指す静粛性は達成できないと決断しました。

ガラスの板厚アップは、2回目の年次改良時の実験部からの提案がきっかけになっていますが、先ほど申し上げたように、ガラスの板厚を上げると関連する変更部品と確認事項が膨大なんです。

ですので、その時はそうした確認事項が必要ないリヤクオーターガラスだけを厚くして“残りはDで”と彼らにも納得してもらいました(熊谷PGM)」

それにしても、レヴォーグは当初から特別にうるさいクルマではなかった気がするのだが……。

「とくに欧州に出して速度域が上がったことで、市場から“うるさい”という声があったことは事実です。

日本では欧州ほどの指摘はありませんでしたが、こうした声から痛感したのは、レヴォーグに対するお客様の期待が、われわれの想定以上に高いレベルにあることでした。

欧州車と真正面から比較していただくのはわれわれも望んだところではありますが、そのためにはもっと上にいかないとダメだと……(熊谷PGM)」

「静粛性だけでなく、パワステも切りはじめをより滑らかに、そして手を緩めた時にスッと戻るフィーリングにこだわりました。乗り心地や静粛性も含めたすべての相乗効果で、動的質感が上がった……と感じていただきたいですね。

こうした動的質感は、これまでもそれなりに評価いただいたのですが、新しいSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を使ったインプレッサが好評をいただいていますので、レヴォーグもその分の進化をさせよう……と考えました。

プラットフォームは変えられなくても、SGPの思想を入れてインプレッサに負けないように。大変でしたが」と香川も笑う。

「レヴォーグはもともと旧インプレッサのシャシーに補強や技術的な進化を入れたクルマでしたが、そのレヴォーグの方向性を、より合理的に実現したのがSGPです。SGPもレヴォーグも目指しているところは同じなんです(熊谷PGM)」

質感と安全性向上のためにリヤシートを全面新設計

「欧州に負けない質感と品質」という意味では、従来の2分割(6対4)から3分割(4対2対4)に刷新されたリヤシートの可倒機構も注目すべきである。

「おかげさまで、欧州車に乗っておられるお客さまが、ショールームにレヴォーグを見に来られるようになりました。

アウディ、BMW、メルセデスなどでは3分割可倒が当たり前で、販売現場で“あれ、これは違うの?”と言われてしまうケースが少なからず起こるようになりました。

われわれもそれは当初から認識していましたが、スバルでは前例がないですし、ここは衝突安全性のための強度や乗り心地などの振動も考えなければなりません(篠塚)」

こうして完成したレヴォーグの新しい3分割可倒シートで感心するのは、右側と中央のシートバック間にダンパーを内蔵して、中央を倒した状態で右側を倒す時のみ、ジワッとゆっくり倒れる……という凝りに凝ったメカニズムである。

「中央シートバックは右側とキャッチャー/ストライカーで嵌合しています。それ自体は他社も同様ですが、実際につくってみると、お子さんなどが稀に指を挟んでしまう可能性があることが分かりました。

シート可倒機構というのは通常はできるだけ速く倒したいものなので、こういう前例はありませんでした(篠塚)」

「実際に試作してみて“これ危ないんじゃない?”と私も直感的に思いましたし、実験からも同様の声がありました。他社さんは“そういうもの”として割り切っているようですが、スバルとしては許せません。

こういう場合はあえてフリクションをもたせる方法もありますが、長く使ってフリクションが落ちた場合まで考えて、最終的にダンパーを内蔵しました。

コスト的にはキツかったですが、一度しっかりとしたものをつくっておけば、ほかのラインナップにも展開できますから……(熊谷PGM)」

「このシートバックは強度や振動を解決するのも簡単ではなく、試作もやっと出来上がったのですが、最後にそうしたところまで突き詰めました。最終的にできあがるまで2年以上掛かりましたね(香川)」

たかがシートバック、されどシートバック……。新しいレヴォーグはアイサイト・ツーリングアシストや走りの進化も特筆すべきだが、それよりむしろこのリヤシートのエピソードにこそ、今回のレヴォーグの「ここまでやるか!?」が象徴されているようにも思える。

インタビューの最後に熊谷PGMがポツリとこぼした「ひとまず現時点ではネタは出し切った気持ちですよ」という言葉にウソはないだろう。

新型レヴォーグの開発に携わった主要メンバーの皆さん。

ニューモデル速報 Vol.555 新型レヴォーグのすべて

1.6L/2.0L直噴ターボとリニアトロニック、4WDを組み合わせたパワートレーン、そしてWRXと兄弟関係にある、鍛えられた基本骨格とサスペンションを備えるレヴォーグ。17年7月に実施されたマイナーチェンジで、全車が標準装備するアイサイトは新たにツーリングアシストが加わり、足まわりやパワーステアリング制御、エンジン特性を最適化するだけでなく、遮音性の向上も実現。エクステリア/インテリアのブラッシュアップも実施するなど、そのきめ細やかな進化の全貌を解説した1冊です。

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