【試乗記:スズキ・スペーシア】もっと楽しく便利に、そして安全に進化した
- 2019/07/03
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岡本 幸一郎
内装の質感と使いやすさは先代から格段にレベルアップ
インテリアを目にしてまず感じるのは、これがスペーシア!? と思わずにいられないほど、これまでとは段違いに質感が高い。ここでもスーツケースをモチーフにした遊び心を感じさせるデザイン処理が随所にみられることに加えて、使いやすさにも本気でこだわったことが見て取れる。収納のリッドやドリンクホルダーなども、見た目の遊び心だけでなく操作感もしっかりとしていて、つくり込みの良さを感じさせる。
さらに、スズキ初となるパワースライドドア予約ロック機構の採用も、なにかと重宝するシーンは少なくないはずだ。
車内は前後シートとも従来型に対してヒップポイントが高められていて、フロントよりもリヤが少し高めに設定されている。これにより前後とも見晴らしの良い開放的な居住空間が実現している。
リヤシートのスライド量は従来型でも十分だったがさらに伸びた。前後どちら側からでもスライド操作ができるのも便利だ。またワンタッチでダブルフォールディングできる使い勝手の良さも上々で、段差を抑えた低くフラットなラゲッジフロアをつくりだすこともできる。
とにかく室内空間は文句なく広い。従来型では競合車に対していささか及んでいない印象が少なからずあったところ、新型は事情が一変した。なにせ室内高においては、軽ハイトワゴンでトップとなる1410㎜を実現したのだから。その恩恵は乗降時はもとより、シートに収まったときや、荷室をフラットにして大きな荷物を積みたいときなど、多くのシーンで実感できるはずだ。
室内高の拡大は、従来は載せられる自転車が限られたところ、27インチをラクに積載できるようにしようという目的もあってのことで、荷室のフロアもかなり低くされているだけでなく、自転車をラクに積み込めるようにするためステップに切り欠きが入れられているのも新型のユニークな点のひとつ。また、天井にはスズキ初となるサーキュレーターが設定されたのだが、自転車を積むときに邪魔にならないよう、その存在を感じさせないほど非常に小さなサイズであることにも驚かされた。
一方、自車周辺の状況を確認できるアイテムも大幅に充実したのもありがたい。軽自動車初となる360度3Dビュー機能は、たとえ車体が小さくても、自車周辺の状況をより確実に見ることができる点で、非常に助かる。さらにはドアミラーやリヤウインドウに、より直感的に状況を確認できるミラーが配されたのもうれしい点だ。
さらには、フロントガラスに直接カラー表示するヘッドアップディスプレイを設定したのも軽自動車初の快挙。実際に試したところ、表示内容もわかりやすく、運転時に周囲の状況を目視している状態からこちらに視点を移してもすぐに焦点が合う印象で、非常に見やすいことも評価したい。同じく軽自動車初となる後退時ブレーキサポートを採用するなど、先進安全運転支援技術の充実ぶりもかなりのものだ。
新型スペーシアの特徴のひとつが、内外装に取り入れられたスーツケースのデザインモチーフ。ダッシュボードはまさにスーツケースの上にメーターやモニターが載ったようなデザインで、ケースのセンターフレームを思わせる金属調加飾も上質だ。
新しい基本骨格がもたらす安定感に優れた走り
基本骨格は、軽自動車ではアルトより導入した「ハーテクト」となる。アルトはもとより、このところ新しく登場したスズキ車には、モデルチェンジの前後で大幅な軽量化を実現していて驚かされることが多いが、スペーシアは室内空間の拡大等により10㎏だけ増加している。とはいえ、本来であれば大幅の重量増となるところ、一連の先発モデルと同じ要素を用いて、わずか10㎏にとどまったと思うべき。ちなみに850㎏〜という車両重量は、スーパーハイトワゴンでは最軽量となる。
また、ハーテクトにより2WD車のリヤサスペンション形式がトーションビームアクスルになったのも重要な変更点のひとつとして挙げられる。むろん従来のITLとトーションビームではそれぞれ一長一短あるわけだが、軽量化やスペースセーブの面で大きな優位性があるのがトーションビームの良いところだ。
また、新型では諸々の事情により重心高も若干上がっている。すると普通はロールが大きくなりがちなところだが、2WD車は全車に前後スタビライザーを付けたほか、できるだけフラットな走りを実現すべく足まわりをチューニングしたとの言葉どおり、ハイトワゴンとしてはロールは小さめに抑えられている。ワゴンRクラスと同等とは言わないまでも、そこそこ近い感覚で乗れる。
ただし、現状でも大きな不満はないものの、乗り心地はやや硬め。フロントはまずまずだが、リヤは少し気になる。このサイズの車体を小さなタイヤで支えているのだから、それなりに足まわりを固める必要はあるだろうし、トーションビーム採用の影響もあるだろう。ゆくゆくは改善されていくことと思うが、数少ないこのクルマの現状の気になる点として挙げておきたい。
なお、14インチタイヤ装着車と15インチタイヤ装着車ではサスペンションセッティングや新車のタイヤ銘柄が異なるが、15インチのほうが全体的にマッチングがよく、コーナリング時のロールが小さく、フラット感があり、巡行時のスタビリティも高いように感じられた。
このように大きく進化をとげた新型スペーシア。いかに力の入ったモデルチェンジであるかは、多くの「軽初」や「スズキ初」となるアイテムが与えられていることにも象徴される。競合車に対しても引け目を感じるところはなく、多くの部分で優位に立ったのは間違いない。まさしくガチンコとなる四つ巴の闘いも、ますます面白いことになりそうだ。
モーターファン別冊・ニューモデル速報 Vol.564 新型スペーシアのすべて
軽自動車初採用の安全装備と遊び心あふれる内外装デザイン
ワクワクをカタチに
ドライビングインプレッション
ライバル車比較試乗
開発ストーリー
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デザインインタビュー
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