世界初のデジタルアウターミラーは今後のハードウェアの進化に期待 〈新型レクサスES 500km試乗〉今後のレクサスのベンチマークとなる“べき”安楽・安心の乗り味。そして伝統工芸を思わせるデザインは宿場町がよく似合う
- 2019/07/12
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遠藤正賢
かつて「トヨタ・ウィンダム」の名で一世を風靡したFFミッドサイズ高級セダン、レクサスES。2018年10月に発売され12年ぶりに国内復活、レクサスブランドとしては初めて日本での販売を開始した、その新型七代目の最上級グレード「ES300h“バージョンL”」に乗り、都内から海野宿(うんのじゅく/長野県東御市)までの往復約500kmをドライブした。
なおテスト車両は、世界初採用となったデジタルアウターミラー(21万6000円)のほか、デジタルインナーミラー(10万8000円)や“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(23万8680円)など59万8320円分のメーカーオプションを含む、総計757万8320円の仕様となっていた。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、トヨタ自動車
レクサスESは1989年デビューの初代がトヨタ・カムリの上級モデル「プロミネント」の北米レクサス版として誕生しており、この立ち位置は日本でトヨタ・ウィンダムとして販売された二~四代目を含め、歴代ESに受け継がれている。
従って新型七代目レクサスESも、2017年7月に日本での販売が開始された現行10代目をベースとしており、「GA-K」と呼ぶ新世代ミッドサイズFF車用プラットフォームのみならず、パワートレインを含めて共通点は非常に多い。ともに日本仕様では唯一の設定となる、新世代のA25A-FXS型2.5L直4「D-4S」(直噴+ポート噴射)エンジンに、駆動用バッテリーをリチウムイオン式とするなど大幅に改良が施されたハイブリッドシステム「THS2」と組み合わせたそれは、スペックも全く同じだ。
一方でエクステリアのデザインは、エンジン排気量もボディサイズも一回り以上大きく駆動方式も異なるレクサスの旗艦モデル・LSと瓜ふたつ。前後オーバーハングの違いが明確に見て取れるサイドビューを直接比較しなければ、どちらがESあるいはLSなのか、即答するのは極めて難しい。
インテリアも、デザインそのものはLSとよく似ているのだが、1.5倍以上の価格差があるLSのように贅を尽くし匠の技と先進技術をふんだんに盛り込んだものとはなっておらず、レクサス車としてはややシンプルな造形。それ自体は悪くないが、運転席側のインパネ下部にはハードパッドが用いられるなど、特に樹脂部品の質感には明確な差が感じられた。
だが、こうしたおおらかさは、運転席に腰を掛けた瞬間、ポジティブなものに一転する。背もたれは座高90cmの筆者でも肩より上に余るほどタップリしたサイズで、座面も調整機構で伸ばせば適切な長さに合わせられる。また、クッションは適度にソフトなうえ、“バージョンL”のセミアニリン本革表皮も柔らかく肌に吸い付くような感触だったため、フィット感は抜群。高速コーナー主体でアップダウンが激しく道も荒れている上信越道を走っても、ホールド性に不足を覚えることは皆無だった。
なお、“バージョンL”にのみメーカーオプション設定されている「デジタルアウターミラー」だが、人によっては慣れるのに相当時間がかかるだろう、というのが率直な印象。筆者の場合、実際のサイズはともあれ従来の光学ミラーと大差ないほど存在感のあるカメラユニットに最初は目が行きがちで、室内のインパネ上部両端にあるモニターを見ることができず、乗り始めの30分ほど、特に高速道路で車線変更する際に激しく戸惑ったことは、正直に告白しておきたい。
だが、慣れてしまえば、視野角が左右・上下方向とも最大で約2倍に拡大するうえ、順光時や後続車のライトが眩しい時は暗く、雨天時や夜間に照明の少ない道を走った時には明るくモニターに表示してくれるため、光学ミラーとは比較にならないほど視認性が向上する。
ただし、全く照明がない道ではモニターが完全に真っ暗になること、後方にパルス点灯式LEDの信号機あるいはヘッドライトを点灯する車両があるとその明滅がモニター上で顕在化して目障りになること、この2点においてははまだ光学ミラーが勝っているのも事実。とはいえ後者については、モニターの解像度・リフレッシュレートともデジタルアウターミラーより明確に高い「デジタルインナーミラー」では少なからず緩和されていたので、今後のハードウェアの進化に期待したい。
なお、17スピーカーで構成される「“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム」だが、車内の音響特性を極めて緻密に計算したうえで各スピーカーの配置を決めているのだろう、少しでも前後左右バランスを変更すると途端に痩せた音質になる傾向にある。試乗直後は運転席に前後左右バランスを合わせる設定になっており、「これが本当にマークレビンソンか?」と首を傾げるほどだったが、車両中央にセットし直すとフラットかつ音解像度の高い響きが得られるようになった。
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