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連載コラム「酷道を奔り、険道を往く」Vol.11 ひしゃげたガードレールが怖い! もうすぐ走れなくなるかも知れない冠山峠へ『林道冠山線&国道417号線(酷道険道:岐阜県/福井県)』VWポロ

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美濃国から越前国へ───峠を越えれば世界が変わる

 林道区間に入ってから10kmほど走ると、岐阜県と福井県の県境となる冠山峠に到着する。林道冠山線に入ってから、ここまで撮影をはさみながら1時間半ほどかかっているが、普通に走っていれば20分もあれば着くだろう。

 峠が都府県境と重なっている場合に面白いのは、その峠を越えた途端に風景や路面の状況ががらっと変わることが多いことだ。

 冠山峠にもそれは当てはまり、まず景色が一転する。林道が深い谷に沿っているのは変わらないが、その谷越しに見える山が岐阜県側よりも近い。雄大さよりも険しさが際立ってくる。

 そして峠の北側に入ったことで陽の光も差さなくなり、視界全体が薄暗くなる。道路の所轄も変わったためか、福井県側にはガードレールが散見できるようになる。

 都道府県の違いなんて、市町村の違いの延長線上のようなものだと軽く考えがちだ。しかし実際のところ、都府県境は峠であったり、大きな河川であったり、海であったりと、地形とは切り離せない昔ながらのものであることが多い。

 美濃国から越前国へ。そう表現した方が、冠山峠を越えた実感が伝わりやすいのかもしれない。

 さて福井県側に入ると、前述のようにガードレールが多くなる。場所によっては、ガード石とでも言うのか、ヨーロッパなどに多く見られる石造りのブロックも設置されている。

 ガードレールがあると安心感が増す反面、どうしても大自然の風情が失われてしまうものだが、ここに限ってはそうも言い切れない。

 写真を見ていただくのが手っ取り早いだろう。

 福井県に入ってからしばらくすると、突然ボコボコに凹んだガードレールが立て続けに現れる。さらには、凹んでいるというよりも谷側に向けて完全に倒れているものまで出てくる。いったい、ここで何があったのか?

 初めのうちは最悪の事態を想像した。つまりは、ここから何台もの車両が奈落の底へと吸い込まれてしまった、と。

 だが、クルマが落ちたにしては、なんだか凹み方に違和感がある。そしてすぐに気がついた。おそらくこれは巨大な落石によるものなのだろう。確かに、ここまで路上にはいくつもの石が転がっていた。

 そう考えると、ある意味でクルマが激突するよりも恐ろしい気がしてきた。頑丈なガードレールをここまで押しつぶすだけの巨大な岩石が上から落ちてきたのかと思うと……そしてその可能性は今この瞬間にもあるということを考えると背筋が寒くなる。

 以前、直径1.5mほどの岩石が落ちてくる現場に居合わせたことがあったが、そのときは「ドドーン、ドドーン」という音がだんだんと大きくなってきて、明らかに何かが遠くから近づいてきたのがわかった。だから落石への対処としては、もちろん山肌を見上げるのも意味があるだろうけれど、オーディオなどの音を最小限にして耳を澄ますのも効果的かも知れない。

 というわけで、風情が失われるどころか、こうしたガードレールの存在によってむしろ物々しさが倍増し、酷道険道らしさも最高潮に達する。福井県がこのガードレールを改修しないのは、これを見ればほとんどのドライバーが気を引き締め、安全運転を心掛けるからかもしれない。

 一方、この林道冠山線にはほとんどカーブミラーがない。すれ違いもままならないような狭隘な酷道険道でカーブミラーがないとどうなるか? カーブひとつひとつが見通しの悪い交差点と同じになるから、毎回のように一時停止するほどまで速度を落とさねばならない。

 その代わり、林道冠山線は待避所がとても多い。道そのものはタイトだけれど、「対向車が来たらどうしよう」という不安が抑えられる。関東の林道や酷道険道はカーブミラーが充実しているけれど、待避所がなくて延々とバックしなければならないケースも少なくないのだ。

 カーブミラー、ガードレール、待避所……これらのありがたみを痛感できるのも酷道険道ドライブの醍醐味であり、それぞれをどう設置するのか、所轄の都道府県によって考え方に違いが見られるのも面白い。

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